“かかあ天下”に関わる ある学習効果

   テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」のある日の放送。鑑定チームが全国各地に鑑定しに出向く、おなじみの「出張鑑定IN◯◯」のコーナー。



                                (イメージです)


   ある男性がステージ上に登場し、「絶対にせもの」と断言しているという男性の奥さんが客席に。

   ステージ上の司会者が客席の奥さんに対して問いかけます。

「奥さん、もしも本物だったら何に使いますか?」(司会者)

「家族旅行です」(奥さん)

「旦那さんの意見は?」(司会者)

「もちろん、聞きません」(奥さん)

(旦那さん苦笑い)


   おそらく普段からこの夫婦関係なのかも知れません。旦那さんが奥さんに頭が上がらない、俗に言う「かかあ天下」と言えるでしょうか?(この番組を見ていると、結構いらっしゃるようですね😅)


   このような家庭では、例えば旦那さんに対して「お金の使い道は私が考えるからあなたは黙ってて!」と言うような奥さんの否定的な言動が、いつの間にか子どもに移ってしまう(特に女の子が「お父さんは黙ってて!」等と言う)ことが時々起こるようです。

   そのようなケースでは、ある学習効果が働いていると考えらます。それは観察学習(モデリング)」というものです。

「観察学習」とは…

①. 誰かが何かの行為をする

②. その結果“プラスの結果”が起きる

③. ①と②の事実を第三者が観察する

④. その第三者が①の行為を身につける


   先のケースであれば、次のような働きが生じていると思われます。

①. 夫婦間で意見が対立した時に奥さんが旦那さんを無視して我を通す

②. その結果、意見の対立が解消されるという“プラスの結果”が起きる

③. ①と②のような事実を子どもが繰り返し目にする

④. その子どもが①のような「父親の意見を無視する」行為を身につける


子供らしからぬ言動は何処から?

   先日、ネットで以下のようなある母親からの相談を目にしました。

「(クラスの友達同士で何かの練習をした後に)『今日練習を一生懸命やっていなかった人がいます』と娘が言って、みんなの意見が一致した子を縄跳びで鉄棒に縛り付ける。本人が反省を言って、娘がみんなに『許してもいいと思う人』と聞いて、全員が許したらほどいてあげる。これっていじめ?」という。(これはいじめじゃないの?正義感が強すぎる我が子が友達にいきすぎた行為をしてしまったとき、ママはどう対処すればいい?」より)

   問題は、この娘さんの行為の是非よりも、「娘さんがその行為をどこで覚えたか?」です。娘さんの中で自然発生的に生まれた行為であることはあり得ず、どこかの場面で観察学習によって身につけたと考えるのが普通です。家族か、テレビか、SNSか…?何れにしても、親御さんにしてみれば、娘さんのこの言動は看過できるものではないので、早急にその学習元を明らかにして、それを是正する必要があると思います。


テレビ番組でも起こる観察学習

   このようなことは、当然テレビ番組の視聴の際にも生じます。イジリが横行するバラエティー番組では、

①芸人やタレントが相手をイジる

②その行為によって“笑い”や“楽しい”という“プラスの結果”が起きる

③視聴者が①、②の行為を繰り返し見る

視聴者が①のような言動を身につける


   ところがテレビ放送の内容については、現在は、多くの番組が“イジリによる笑い”で視聴率を稼ぐという傾向にあるようで、誤学習をさせないために、子どもが視聴する出演者の“行為”を修正することはとても難しいのが現状です(本来「イジる」とは「弱い者をもてあそぶ。困らせる」という意味であり、お笑い番組でもなければ、「イジる」以外の楽しませ方は無いものかと思うのですが…)。

   そこで、行われるのが、親による“子どもの視聴番組の選択”です。少し古いデータになりますが、2012年に行われた調査で「子どもに見せたくない番組」として9年連続ワースト首位になった「ロンハー」には「内容がばかばかしい」(76.6%)、「いじめや偏見を助長する場面が多い」(46.0%)、「言葉が乱暴である」(41.6%)という項目にチェックする保護者が多く見られました。これらの中の、特に「いじめや偏見を助長する場面が多い」「言葉が乱暴である」には、実は子どもが同様のいじめ行為や乱暴な言葉遣いを学んでしまう観察学習を避けたいという保護者の願いが表れているのです。


望ましい観察学習

   これまで観察学習の負の面ばかりあげてきましたが、もちろんそれだけではありません。

   子どもが目にするのが正しい“行為”なら、正しい観察学習がなされます。「子どもは親の背中を見て育つ」と言われるように、親の正しい行為を子どもに見せることがそれに当たります。


   あるNHKの番組で、台風で被災してランドセルを流された小学1年生に新品のランドセルが寄付されたというニュースが紹介されていました。

   子供達は受け取った後のインタビューで「本当にありがたいです」と答えていました。小学1年生らしからぬ「ありがたい」という丁寧な言葉は、親か誰かが使っていたのを学習したのでしょう。これこそが正しい観察学習の事例です😊。


   私事で恐縮ですが、他界した私の父は、テレビでの時代劇の視聴を盛んに私に勧めていました。「水戸黄門」に代表されるような、最後には必ず正義が悪を倒す“勧善懲悪”のストーリーは、正に正しい観察学習でした。


   子供の健全な成長のために、出来るだけ、子どもの誤った観察学習を防ぎ、正しい観察学習を増やすようにしたいものです。