.終わりに
   この世に存在する動植物は一つの例外もなく、オスとメスとが互いに力を合わせて子供を生み育て、長年にわたって子孫を残してきた。つまり、両性がそれぞれの役割を果たし、互いに足りない面を補い合いながら子育てをするように創られている。それは、もちろん私達人間も例外ではない。
   しかし現代の家庭では、社会の急激な変化の影響を受け、父親と母親のどちらか一方の立場の方が強かったり、父親が子育てに関わらなかったり、更に、一人親家庭が急増したりする等、本来の両性の姿とは異なる歪んだ働き方で子育てをしてしまっている実態が見受けられる。子供にとっては母親と父親の存在が家庭における成長要因の殆どと言える環境下で、昨今、人格の不安定な人間による様々な社会問題が急増しているのは、そのような不均等で歪んだ両性の働きによって育てられた人間が増えているためではないだろうか。
   即ち、今後は、母親と父親がそれぞれ本来の役割を果たし合いながら子育てに当たること、更に、一人親家庭においても不足している性の働きを意図的に確保することが望まれる。しかし、社会全体の中でそれらを確実に実行するためには、「安心7支援」や「見守り4支援」のような具体的・限定的な支援方法が必要であると考える。
   先の岡田氏は、人々が備える愛着は、時代の流れとともに家庭でのテレビの普及やモバイル機器の個人所有化が進み、人と人との繋がりが弱くなることによって、一層不安定になっていく、いわゆる“世代間の愛着の負の連鎖”を指摘している(岡田2012)。そのように、今後更に愛着の脆弱化が進むことが予想される今、子供が生まれた瞬間から、その子が将来どんな人格を備えた人間に成長するかを決定づける場となる家庭、その中での教育の在り方を考える本学会の存在意義は今後一層重要になると考える。

【主な引用・参考文献】
・岡田尊司(2011)「愛着障害~子供時代を引きずる人々」光文社新書
・岡田尊司(2012)「愛着障害 子供を愛せない大人たち」角川選書
・岡田尊司(2012)「発達障害と呼ばないで」幻冬舎新書
・岡田尊司(2015)「父という病」ポプラ新書
・岡田尊司(2016)「夫婦という病」河出書房新社
・繁田進(1987)「愛着の発達~母と子の心の結びつき~」大日本図書
・滝充(1996)「『いじめ』を育てる学級特性~学校がつくる子供のストレス~」明治図書
・ヘネシー澄子(2004)「子を愛せない母 母を拒否する子」学研
・平山諭(2011)「満足脳にしてあげればだれもが育つ」ほおずき書籍
・菅原裕子(2007)「子供の心のコーチング」PHP文庫
・石川尚子(2017)「オランダ流コーチングがブレない『自分軸』を作る」七つ森書館


パワーポイントスライド

「発表後のお願い」

   今回提案したものは、現場である程度試しているとはいえ、まだまだ仮説の段階です。そこで、その効果を確かめるために、現在、正式な検証の機会を探しています。

 昨年、県内の各市町村長宛に、「各家庭への情報提供のために自治体のHPを利用できないか?」「各家庭での実践データを用いた検証の機会を戴けないか?」等を打診しましたが、素性の知れない個人としての要請に過ぎなかったこともあってか、了承はもらえませんでした。できれば、何れかの組織にお力添えをいただき、正式に検証計画を立てて仮説検証を行い、アプローチの方法や内容を改善できれば幸いと考えています。