【今回の記事】

ついに登園拒否からの脱却! 母が息子に伝えた大切な言葉とは?【ゆるっとはなまる育児 第18話】


【記事の概要】

   大泣きする息子さんを毎朝お母さんが担いで幼稚園のバスの送迎場所へと運ぶ日々…。


ところが、あることをキッカケに、泣かずに幼稚園に行けるようになったのです。そのキッカケとは…?
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■息子の気持ちの本質に行き着いた母 
   ある夜、まる(息子さん)が眠ってから、どうしたものかと考え始めた私(母親)でした。 ノートにまるの言葉や自分の気持ちを書いて整理する中で、ふと気付いたことが… 。

「まるは“寂しい”と思っているんだよな…」
ということには気付いたけど、 まるの口からはっきりとその言葉が出てきたことはなくて、私の方も何となく、あえてそれをまるに 意識させない方が良いと思っていたのかもしれません。 言葉にして「寂しいよね」と受け止めた事はなかったのです。

   これまでまるを送り出すために私がしてきたことが、 寂しい気持ちの本質から目をそらすためのごまかしだったように感じられて目が覚めた気分でした。 もちろん、楽しい事やちょっとしたご褒美作戦で、朝の寂しさが紛れて泣かずに幼稚園へ行けるようになる子だっていると思うし、その方法が間違いだとは全く思わないのです。 ただ、この時のまるにとってはそうじゃなかったんですね。 きっと一番大切なことって… 

■息子の気持ちをしっかり受け止めよう 
   次の日の朝… やっぱり、「行きたくない」と布団に潜り込むまるに… 。


すると…
   この日まるは暴れたり大泣きすることなく、着替えをして家から出ることが出来ました。 バスに乗ってお別れの瞬間も、 何と泣かずに…! この時は何だか私の方が泣きそうになってしまいました。 
   この日を境にまるは朝泣かずに幼稚園バスに乗って登園できるようになったのでした。


【感想】
   以下は、精神科医の岡田氏のある著書からの引用です。母親という心の「安全基地」が存在する意味について書かれています。
「愛着の絆が形成されると、子どもは母親というることに安心感を持だけでなく、母親がそばにいなくても次第に安心していられるようになる。安定した愛着が生まれることは、その子の安全が確保され、安心感が守られるということでもある。ボウルビイの愛着理論を発展させたアメリカの発達心理学者メアリー・エインスワースは愛着のこうした働きを『安全基地』(safe base)という言葉で表現した。子どもは、愛着という『安全基地』がちゃんと確保されている時、安心して外界を冒険しようという意欲を持つことができる。逆に、母親との愛着が不安定で安全基地として十分機能していないとき、子どもは安心して探索行動を行うことができない。その結果、知的興味や対人関係においても、無関心になったり、消極的になったりしやすい。(岡田2011)」

   このお母さんは、まる君が立ち直る直前に、「幼稚園に1人で行くの寂しいよね」と まる君の気持ちを受け止めたり、まる君に対して優しい口調で語りかけたり、まる君を抱きしめたりしています。これらの行為は、「子どもの話をうなずきながら聞く(共感する)」「子どもに穏やかな口調で話しかける「子どもとスキンシップを図る」等の愛着7」による行為と同じ意味を持ちます。「愛着7」とは、子どもとの間に愛着を形成し、子どもに「安全基地」を提供するための行為に他なりません。
   つまり先の引用の中の「子どもは、愛着という『安全基地』がちゃんと確保されている時、安心して外界を冒険しようという意欲を持つことができる」という記述は、次のように今回の事例に当てはめることができると考えます。
まる君には愛着という『安全基地』がちゃんと確保されていなかったために、『幼稚園での生活』という『外界』を冒険しようという意欲を持つことができなかった

   まる君に不足していたのは、「離れていてもお母さんと絆で繋がっている」という“安心感”だったようです。子どもが自立する上で愛着がどれだけ大切か、よく分かりますね。

  なお、世の中には、このお母さんと同様の悩みをお持ちの保護者の方が数多くいらっしゃると思います。大泣きして登校を拒む我が子を力ずくで行かせようとする前に、「愛着7」のような具体的な愛情行為によって子どもとの間に愛着を形成し「安全基地」という安心感の元を提供することで、子どもが学校に行けない要因を取り除いてあげることが大切なのだと思います。

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   今回のお母さんは、ご自身の接し方を振り返っている中で、偶然お子さんの気持ちに共感する態度の必要性に気付くことができ、お子さんの方からもスキンシップを訴えてきてくれました。
   しかし、このようなケースはむしろ希なのではないでしょうか。そのため、やはり愛着の意味とその形成の仕方を皆さんにお知らせすることは、とても大切なことなのだろうと思います。

   今月末には、地元の大学で未来の“保健の先生”への講義を、来月には日本家庭教育学会での発表を、それぞれ控えています。できるだけ多くの皆さんの目で見て頂いて、愛着形成についての考え方を共有できればと思っています。