【今回の記事】

【記事の概要】
   先ずは、上記記事中のCM動画をご覧下さい。
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   その概要は以下の通りです。
   2人で夜の星観察に出かけた父親とその息子。
父「あ、流れ星!」
子「え、どこ?」(その時、持っていた望遠鏡を車のドアにぶつけて傷付けてしまう)
子「ごめんなさい…」
父「だいじょうぶ。気にするな。」


【感想】
親の一貫した対応が必要
   このCMでの父親は、車のドアを傷付けた息子に「だいじょうぶ。気にするな。」と言葉をかけて許しています。「失敗は成功のもと」とも言いますから、「失敗にクヨクヨして欲しくない」という父親の気持ちの表れだと思います。しかし、このままでは、「不注意ならぶつけても構わない?」という誤解を子どもに与えてしまう可能性もあります。みなさんなら、どんな言葉をかけられますか。

   私なら、こうでしょうか。
次は、気をつけようね。

   普段の生活の中では、このような子どものちょっとした失敗は日常茶飯事だと思います。こんな時、どういう言葉をかけるかを親御さんが決めていると便利です。逆に、日によって親の対応が厳しかったり優しかったりする等、まちまちだと、子どもは親の顔色を伺う不安型の「愛着」タイプに陥ることもあります。自分が失敗した時の親の対応が一貫していることで、子どもは親に安心感を抱き、親と「愛着(愛の絆)(⇦子どもの一生に悪影響を及ぼすもの)」を結ぶことができるのです。

   ただし、この言葉がけは、普段から「子どもは失敗するもの」という前提で指導していることが前提です(詳しくは拙記事「東京都の家庭における体罰・暴言を禁止する条例 〜言葉では子どもが言うことを聞かない?〜」を参照ください)。それがあるからこそ、さきの言葉がけが活きてくるのです。なお、この場面のような“ちょっとした失敗”に対しての叱り方は、上記記事での「《注意B》(日常的な注意)」に当たります。
   なお、上記記事では、抽象的な話にしかならず、いつか具体的な場面を題材にしたいと思っていました。

具体的な対応の流れ
   では、上記の「《注意B》(日常的な注意)」に沿って、具体的な対応の流れを見ていきましょう。
   まず、「《注意B》(日常的な注意)」の一般的な流れを確認しておきます。
①一度目の注意は…
   言葉は…しようね「お箸はきちんと持って食べようね」「宿題は前の日にしようね」等)、 言い方は「優しく教える(諭す)で。
(「させようオーラ」を出さないため
②一度目で直らなかった時は…
   真剣な表情に変えて『もう一度言うよ。お箸の持ち方を直そうね。』等と緊張感を持って伝える 
③二度目の注意でも直らなかった時は…
   敢えて“怖い顔”をして「何回言われたら直すの?!」と言葉厳しく叱る

   次に、今回の事例に沿って考えてみます。
①一度目の注意は…
   優しく教える諭す)言い方で、「次は、気をつけようね。」
②また車にぶつけてしまった時は…
   真剣な表情に変えて『もう一度言うよ。車にぶつけないように気をつけようね』等と緊張感を持って伝える。
③更に車にぶつけてしまった時は…
   敢えて“怖い顔”をして「何回言われたら直すの?!」と言葉厳しく叱る

   親がいつもこの流れで対応すると、ほとんど「③」の状況には至りません。別に体罰を加えているわけでもないのですが、子どもにとって安心感の拠り所である親(特に子どもを受容する「母性」働きを持つ母親)から厳しく叱られることは耐えられないことなのです。ただし、親の対応に一貫性がないと、子どもはどう対応すればいいかが分からなくなるため、行動が不安定になり、「③」の状況に至ることも出てきます。

   一方で、親の願いが詰まった特別な場面での叱り方は、「《注意A》(特別な“親の願い”がこもった注意)」です。「親の願いが詰まった特別な場面」というのは、「人に迷惑をかけた時」や「嘘をついた時」等、“親として、このことだけはきちんと育ってほしい”という願いがこもる内容の場合です。詳細は上記記事「東京都の家庭における体罰・暴言を禁止する条例 〜言葉では子どもが言うことを聞かない?〜」をご参照ください。

「ごめんなさい」を評価
   また、このCMの子どもは、望遠鏡を車のドアにぶつけた“瞬間”、「ごめんなさい…」と謝っています。このように、誰かに迷惑をかけた時に、“反射的”にこんな言葉が出てくるソーシャルスキルを持っている子どもは素晴らしいと思います。ぜひ「素直に謝ることができたね」等と褒めてあげてください。
   それまで、「ごめんなさい」の指導をしていなくても、子どもは思わず自分から謝る時が必ずあります。その時を見逃さずに褒めると、子どもはきっと、次の同じような場面で「ごめんなさい」を言うでしょう。