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【記事の概要】
「ゲーム依存症」、あるいは「ゲーム障害」とは、日常生活が破綻するほど、持続的、反復的にゲームにのめり込んでしまうことを指す。今年618日、WHO(世界保健機構)は、この「ゲーム依存症」を精神疾患として正式に認定した。
 今世紀に入ってから人間の生活を劇的に便利にしたスマホ。その中に潜んでいた悪魔に一人息子を虜にされてしまったライターが、あまりにこの疾患にたいして無防備な日本社会に警鐘を鳴らすため、現在進行形で続く「ゲーム依存症」との戦いをレポートする。


「ゲーム中は絶対に邪魔しないように。よろしく」
 大学合格を機にスマホを与えた途端、ゲームにはまりこんでしまった息子。合格祝い、小遣いの全てをゲームの課金につぎ込み、まるで人が変わったように高圧的に金をせびるようになる。そして、ついに親に向かって暴力をふるった…。
 ゴールデンウィークにゲームに使うお金ほしさから私に手をあげた「事件」の翌日は、息子は一見すると何事もなかったかのように普通に振る舞っていた。しかし、ゴールデンウィーク以降に学校に関係する問題がついに起き始める。
 まず、遅刻が始まった。大学だから遅刻しても学校から連絡は来ないし、そもそも出席を取らない授業だってあるだろう。だから、遅刻がどれぐらい大きな問題なのかよくわからなかった。とはいえ、例の事件のこともあったし、朝から晩までずっとゲームをするうえに遅刻も加わっては危機感が募る一方だった。

 息子が遅刻するようになったのは、明らかにゲームをやって夜更かしが続いたせいだった。ゴールデンウィーク中に夜更かしになり、4月に新学期が始まったときとは違って、今度は生活のリズムがなかなか元に戻らなかった。

 その頃、夜更かしと関連して、驚いたことがまたひとつあった。ある週末のことだ。
「今日の夜は友だちと待ち合わせしてるから、晩ご飯は早めに食べたい」
 息子は出不精なほうで、大学に入ってからわざわざ外出して友だちと遊ぶことはほとんどなかった。珍しいこともあるものだと思った。
「友だちと待ち合わせって、どこで何するの?」
「どこへも行かないよ」
「えっ?でも友だちと集まるんでしょう?」
「みんなで同じ時間にゲームをするだけだよ。家でできるから」
 ゲームのことをよく知らなかった私は、離れた場所にいる仲間と遊べるゲームがあることを遅ればせながら初めて知った。息子の話によれば、これはマルチプレイというスタイルで、スマホゲーム以前のオンラインゲームの時代からあり、チーム同士で対戦したりRPGを一緒に攻略したりするのだという。
 早めの夕食を食べ終え、珍しくお風呂もさっさと済ませた息子はきつい口調でこう言った。
ゲーム中は絶対に邪魔しないように。よろしく
   部屋のドアをバタンと閉めてから、その晩は、深夜12時を回ってもゲームをやっていた。スマホで友だちとしゃべりながらゲームをしていたようだ。1時を過ぎてもまだ話し声がしていたので、さすがに静かにするように言おうと部屋を覗くと、険しい表情でにらみつけられ、しっしっという手ぶりで追い払われた。
 オンライン上の友だちには会ったこともなければ、本名をはじめ実生活でどんなことをしている人達のかもよく知らないという。仲間には社会人もけっこういるらしく、深夜に及びがちなのはそのせいもあった。

「ガチャ」にはギャンブルと同等の刺激がある
 それにしても、お金にしろ時間にしろ、なぜこれほどまでに人はスマホゲームにハマってしまうのだろうか。ゲームが好きな人には当たり前のこともあるだろう。けれど、今回はスマホゲームにハマりやすい理由について少し書いてみたい。
 1つめは、当たり前だが、スマホでできる点だ。これはとても大きい。何度も書いているように、スマホはいつでもどこでも、電車でもトイレの中でもできる。息子も朝起きてから夜寝るまでずっとスマホを手から離さない。加えて、無料で始められることも大きい。家庭用ゲーム機など、いちいち買わなければならない商品と比べればハードルは格段に下がる。つまり、スマホさえあれば、手軽にできるスマホゲームへの入り口はとても広くて敷居も低い。“スマホ”で“無料”というこの2つの要素は極めて強力だ。
 2つめは、終わりがないこと。たとえば、家庭用ゲーム機のゲームソフトではクリアという概念があったのに対して、スマホゲームには明確な切れ目がない。おまけに、登場するキャラクターやストーリーなどが次々とアップデートされ、楽しみがより長く続くように変わってゆく。ゲーム好きならこんなにうれしいことはないだろうけれど、終わりがないうえに、飽きさせない工夫が次々とこらされるのだから止めづらくなるのは当然だ。
 3つめに、依存症になる傾向がある人にとって大きな要素として、(ネットの世界で人とつながれることが挙げられるだろう。意外に思うかもしれないが、ネット依存症の患者の根底には、現実の世界で「人に依存できない(人と繋がれない)」心理があると言われている。学校でも会社でも、日々過ごす中で人間関係を築くのが苦手だったり、うまくいかなかったり、あるいは依存症の患者にありがちなケースとして、家族からも孤立するなかで、ゲームをする時なら人と繋がれる孤独を感じなくて済む。しかも、うまくいかなければ人間関係をリセットしてまた新たに始めればいいだから、人付き合いが苦手な人にとってはなおさら安心に違いない。マルチプレイが好きな息子の場合にも、これはよく当てはまると感じている。逆に言えば、社会的な能力が高い人は依存症になりにくいと言われている。
 そして、4つめ、決定打は「ガチャだ。スマホゲームのほとんどは無料で始められる。ただし、無料でできるのはあるレベルまでで、それ以上ゲームを続けたり、あるいは何かしら強いキャラクターやレアな武器などを手に入れたりするためには課金が必要なものが多い。なかでも、特別なアイテムを有料で提供するときに、ガチャガチャやガシャポンのように「当たりはずれ」がある仕組みがある。これが「ガチャ」だ。要はギャンブルである。ゲーム依存症治療の第一人者である久里浜医療センターの樋口進氏は「『ガチャ』には関しては、明らかにギャンブルと同等の刺激があります」と断言する。
 依存性の高さからしたら、「ガチャ」は本当に怖い。息子も最近はスマホゲームをやるのは「ガチャ」を引くためだと言ってはばからない。例のゴールデンウィーク中の「事件」も「ガチャ」に関することだった。

中高生の1216%がネット依存の疑い
 厚生労働省の研究班が831日に公開した資料によると、インターネット依存(ゲーム依存以外も含む)が疑われる中高生が全国で推計93万人、全体の1216%にのぼると発表された。2012年度の調査から倍近く、約40万人も増えたという。恐るべき数字である。その理由として、スマートフォンの普及が指摘されている。今回のデータに小学生は含まれていないが、いったい小学生ではどんなことになっているのだろうか。

【感想】
   今回の投稿の目的は、以下の3点と考えています。
  1. ①スマホ依存症に陥った子どもの詳細な実態を知っていただき、この依存症の恐ろしさをみなさんに分かっていただくこと
  2. ②この事例の子どもがなぜスマホ依存症に陥ってしまったのかを考えること
  3. ③この子どもと同じような依存症にならないようにするためにどんなことに気をつければいいかを考えること

       以下にそれぞれについての私なりに考えた事をお話しします。
 
  1. ①スマホ依存症に陥った子どもの詳細な実態を知っていただき、この依存症の恐ろしさをみなさんに分かっていただくこと
       本記事から分かるスマホ依存症の症状を整理したいと思います。
    「合格祝い、小遣いの全てをゲーム課金につぎ込み、自分の金がなくなると、まるで人が変わったように親に高圧的に金をせびるようになる。そして、ついに親に向かって暴力をふるう」
    「朝から晩までずっとゲームをする」
    夜更かしをするため、当然朝に起きることができなくなり、
    「学校に遅刻する」
    大学では遅れていっても目立ちませんが、高校までは遅れて教室に入るのは勇気がいるため、ほとんどの場合学校を休みがちになります。
    「ゴールデンウィーク中に夜更かしになり、4月に新学期が始まったときとは違って、今度は生活のリズムがなかなか元に戻らなかった」
「オンライン上の友だちには会ったこともなければ、本名をはじめ実生活でどんなことをしているのかもよく知らないという。仲間には社会人もけっこういるらしく、深夜に及びがちなのはそのせいもあった」
素性が全く分からない色々な人間を相手にするため、生活リズムが崩壊します。
   しかし、一番恐ろしいのは、親子の立場が逆転し、子供が親に対して高圧的になったり暴力を振るったりして家族が崩壊してしまうことだと思います。
 
  1. ②この事例の子どもがなぜスマホ依存症に陥ってしまったのかを考えること
    「大学合格を機にスマホを与えた途端、ゲームにはまりこんでしまった息子」
    少なくともこの記述からは、スマホを与える際に「スマホルール」を決めたわけではないと考えられます。
    また、スマホゲームには次のようなハマりやすい要素がいくつもあったことも原因として考えられます。
・スマホさえあれば無料で始められること
・終わりがないこと
・現実では人付き合いは苦手だが、ゲームでは人とつながれること
・「ガチャ」というギャンブル性があること(ギャンブル依存症の併発です。ゴールデンウィーク中の「事件」も「ガチャ」に関することがきっかけだった)
   なお、この「ガチャ」にハマるカラクリについて、解説している動画があったのでご参照ください。
 
  1. ③この子どもと同じような依存症にならないようにするためにどんなことに気をつければいいかを考えること
ネット依存症の患者の根底には、現実の世界で『人に依存できない(人と繋がることができない)』心理がある
「学校でも会社でも、日々過ごす中で人間関係を築くのが苦手だったり、うまくいかなかったり、場合によっては家族からも孤立したりする。しかし、ゲームをする時なら人と繋がることができ、孤独を感じなくて済む。しかも、うまくいかなければ人間関係をリセットしてまた新たに始めればいい。だから、人付き合いが苦手な人にとってはなおさら安心である。」
このことについては、「愛着」研究の第一人者の岡田氏も次のような旨を指摘しています。
本来困った時に頼りになるはずの『安全基地』を持たない人は、その代わりに、手近に得られるものに“依存”してしまいやすい傾向がある
この中の「『安全基地』を持たない人」と言うのは、「『愛着』形成ができていない人」と同じ意味です。
   つまり、現実の世界で人と繋がる力が不足していると、上手くいかなければ人間関係をすぐにリセットできるスマホゲームに依存するようになると言うことです。そうならないためには、現実の世界での人との繋がりを持つこと、人間関係能力を身につけること。それは即ち、現実世界人との愛着愛の絆)」を形成し、それによって“人間関係能力(「愛着」が育む最も大きな力)”を身につけることに他ならないのです。
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   しかし、現在既に依存症に陥っている子どもについては、親が業を煮やして急にスマホを取り上げたりゲームを完全禁止にしたりすることだけは厳禁です。問題を更に深刻化させてしまいます。具体的な方法については、以下の記事をご参照ください。