【今回の記事】

【記事の概要】
(ある方の体験記です)未就学児のころの息子は真面目な子で、親の私は「小学校に上がっても大丈夫だろう」と思っていました。ところが小学校に入学した途端、息子は私の目を疑うほど豹変。授業中のおふざけや、担任の先生への失礼な態度、周りの子へのちょっかいも多く、掃除も途中で勝手に帰ってしまったりと問題行動ばかりを取るように…。学校からの電話、連絡帳でのやり取りも頻繁でした。下の娘がまだ1歳で手のかかる時期だったこともあって私自身余裕がなく、息子に対しては「もう小学生なのだから」と思ってしまうことが多かったのです。一体何が原因で何をどうすればよいのか、頭を悩ませる日々が続きました。
   そんなある日のこと、学校から電話が…。先生のお話によると、同じ“登校班”の2年生の子に入学当初から時々叩かれたり蹴られたりしていたようで、泣きながら学校に行くときもあったそうです。見かねた上級生が先生に話してくれたとのことでした。私たちの住んでいる地域はご近所同士の親交が深く、安心しきっていたので盲点でした。
   本人はさほど気にしていない様子でしたが、また同じ事を繰り返されるかもしれないと思い、翌朝、直接相手の子と話をしました





   相手の子もとても反省していたようで、その後トラブルが起きることはなく、その子の親御さんからも何も言われることはありませんでした。同時に息子の問題行動もなくなりました。意外な所に荒れていた原因があったわけですが、親の私が、なかなか息子の苦しみをわかってあげられなかったことは、今でも後悔しています。
   しかし普段あまり物を言えない性格ながら、行動に出ることができて本当によかったと思っています。親が「あなたをちゃんと守っているよ」という姿を見せたからこそ、息子のあの笑顔が見れたのですから。

【感想】
   集団登校をしている学校は多いと思います。毎日のことだけに、一度トラブルが起きると、子どもにとってはストレスの元になりがちです。

   さて、我が子であれば、問題があれば気兼ねすることなく注意できるのですが、別の家のお子さんだと、「その子の親御さんから何か言われるのではないか?」と心配になるものです。しかし、この事例の場合「親御さんからも何も言われることはありませんでした」とのことです。なぜ何も言われなかったのでしょうか?
   結論から言うと、注意を受けた相手の子供が、自分の親に言わなかったからです。通常、子どもは、自分に非があると思っていると親には言いません。自分が 親から怒られることが分かっているからです。
   しかし中には、自分に非があっても、親に伝える子どもがいます。それは、その子の親が我が子ファースト」の人間である場合です。「いつものように、親が自分の味方になってくれるだろう」という思いがあると、子供は親に叱られたことを話します。しかし、それも、子供の中に“注意されて面白くない気持ち”が残っている場合です。
   つまり、今回の事例の場合は、そのような“不満”が相手の子どもに残らなかったと思われます。なぜ、その子どもに不満が残らなかったのでしょうか?このことが今回の記事の中で最も重要なポイントです。

   なぜ、その相手の子どもに不満が残らなかったのか?それは、注意したお母さんの伝え方が適切だったからです。
   以前投稿した記事で、人間がトラブルに巻き込まれた時にとる行動パターンには3つあるとお話ししました。その時は、子どもを題材にした事例でしたが、これは大人の場合でも当てはまります。
A 嫌なことがあったら相手に対して怒る
B 嫌なことがあっても我慢する
C 怒らないで自分の気持ちを相手に言葉で伝える

   もしも、このお母さんが近所の人間関係を気にして注意を我慢する、つまり「B」の行動とったら、我が子の問題行動はそのままになっていたでしょう。では、感情的になって相手の子どもに叱責していた、つまり「A」の行動をとっていたら、叱責を受けた相手の子どもに不満が残り、それこそ、自分の親に話していたと思います。
   つまり、この事例のお母さんは「C」の、「怒らないで自分の気持ちを相手の子どもに言葉で伝える」と言う行動をとっていたのです。そのため、相手の子どもに伝わったのは「恐怖」ではなく「正しい社会規範」となったのです。

   もしも付け加えるならば、数日後に、「あの後は、約束通り直せたんだね。約束を守ることは大切だね。」と、非を直した行動を認めると、その子の更なる成長に繋がると思います。