【以下本記事目次】
1. 親子間の「愛着(愛の絆)」が不安定になりやすい反抗期
2. 「自我の芽生え」第一反抗期
3. 「自我の発達」第二反抗期
4. 「中間反抗期」
5. 反抗期があまり見られない子ども

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1. 親子間の「愛着(愛の絆)」が不安定になりやすい反抗期
  
いわゆる「反抗期」と呼ばれる時期は主に二度あります。第一反抗期は2~4歳頃に現れ、第二反抗期は中学から高校の頃に現れます。この時期は、子どもが親に反発しがちで、それに対して親も感情的になって応じてしまうことが多いようです。
 しかしその事によって、それまで子どもが親に対して抱いていた「安全基地」としての意識が逆に「危険基地」に変わってしまい、親子間の「愛着(愛の絆)」が不安定になってしまう場合もあるので、この時期の子どもへの接し方には配慮が必要です。



   なお、上記の反抗期の何れについても、初期対応を誤ると、子どもの気持ちが過敏に反抗して親から離れてしまい、正常に戻すのが難しくなります。ですから、子どもが反抗期に入る前に、親御さんがその時の対処の仕方を知っておくことが大切になります。

 2. 「自我の芽生え」第一反抗期
 まず、第一反抗期について。
 子どもは、生後1歳半頃までは自分の姿や特徴を理解していません。しかし、一歳半頃になると、初めて「自分は他人とは違う」と言う認識を持ち始めます。いわゆる“独立デビュー”であり、「“自我”の芽生え」でもあります。子どもは、初めての経験に戸惑うだけでなく、たとえ親が相手であっても
「自分の好みはこの人とは違う」
と意識はするものの、まだはっきりと自分の好みを主張できないために、自分の意思をうまく伝えられないことに対して強いフラストレーションを感じ、反射的に「イヤイヤ」をしてしまいます。(別名「イヤイヤ期」)。
 
 そんな我が子が求めようとしているものについて、親が、
「○○が欲しいのね」
「……をしたいのね」
等と、子どもの好みを言葉で表してあげると、子どもは自分の気持ちを受け止めてもらえたと思い安心するとともに、上手く言い表せない自分の好みが言葉としてはっきりするため、抱えていたフラストレーションが軽くなり、言動が落ち着きます。
 また、子どもが「○○がほしい」「……をしたい」等と自分の好みを主張できるようになれば、
「○○が欲しいのね」「……をしたいのね」と子どもが発した言葉を繰り返す
だけで、子どもはやはり自分を受け止めてもらったと思い落ち着きます。その後で、「でも、今は……しなくちゃならないんだ」と事情を伝えると、親の言うことを聞くようになることが多いです。場合によっては、
「でも、今は……しなくちゃならないんだ。困ったなぁ、どうしたらいい?お母さんを助けて!」
子どもに解決方法の決定権を与え親を助けるシチュエーションを設定すると、“独立デビュー”に湧く子どもの意欲は倍増するでしょう。
 子どもに決定権を与える、という点では、
「クマのシャツときりんのシャツ、どっちを着る?」
「ご飯と着替え、どっちからする?」
というように、対象や順番を子どもに決めさせる工夫も、子どもの「イヤイヤ」を解決することが多いです。
 そして、その後、子どもががんばってできた時は
「よくできたわね」
と子どもの喜びに共感してあげましょう。子どもは、自分のことのように一緒に喜んでくれる親に対して、“反発”どころか“親しみ”を覚え、親の言葉に対して素直に行動することが増えるに違いありません。
 
 しかし、場合によっては、子どもの情緒がなかなか安定しないときがあるかもしれません。そんな時は、子どもの目線で抱きしめて、深呼吸させて興奮を静めてから、静かな口調で
「人や物に当たらないようにしようね」
「怪我をしそうなことは無理にやらないようにしようね」
等とやさしく諭すように教えましょう(指示や命令の際は、子どもの不必要な反発心をあおらないようにするために、「……しなさい」ではなく「……しようね」等の言い方が適)。

3. 「自我の発達」第二反抗期
   第二反抗期は、十三歳前後から始まります。第一反抗期が「自我の芽生え」と表現されるのに対して、第二反抗期は「自我の発達」と呼ばれます。つまりこの時期は、子どもから大人への変化の時期にあたり、
「もう自分は子どもではない」
「自分なりの考えがあるのだ」
という気持ちが生まれます。
 これも「第一反抗期」と同様、発達上の正常な現象ですから、頭ごなしに否定したり叱ったりするのは避けましょう。逆に、子どもが大人としての主張ができるようになった証と捉え、子どもの考えを尊重して、
「あなたももう自分なりの考え方ができるようになったのね。お母さんにあなたの考えを聞かせてちょうだい。」
等と受け止めるのが良いと思います。
   
一方で、特に過干渉な親御さんに対しては反発しやすいと思われます。第二反抗期に入ったと思ったら、それまでの“親主導”の方針から、別項でお知らせしている「見守り4支援」のような子どもの自立を尊重する支援にギアチェンジすることが大切です(この“ギアチェンジ”についての考え方は第一反抗期でも同様)。

 ただ現実に、反抗する子どもの言動がとても乱暴で親の手に負えなくなる場合もあるようです。そんな時は、決してひるむことなく、ただし努めて落ち着いた話し方で、
「言いたいことがあるときは、大きな声を出したり物に当たったりしないで言葉で伝えようね
等と正しい対処法を教えましょう。そして子どもの話に真剣に耳を傾けましょう。家の中に正義が無くなると子どもの天下になり、遅かれ早かれ「学校に行きたくねえ!」というわがままに走り出します。これが長い“引きこもり”のきっかけになることもあります。

4. 「中間反抗期」
 大妻女子大学名誉教授であり医学博士でもある平井信義氏は、小学校23年生の頃に強くなる「口答え」について、「中間反抗期」という言葉を使って、その重要性を指摘しています。この「口答え」とは、お母さんが子どもに注意を与えたり、子どもの失敗を非難したりした時に、
お母さんだってやってるくせに!
と言って、向き直ってくる状態です。
  
では、どうしてこの時期の子どもが「口答え」をするようになるのでしょうか。その理由について平井氏は、「自発性が順調に発達している子どもには、親たちを批判する能力が育ってくるため」と指摘しています。つまり単なる「口答え」ではなく「批判する能力の向上」だということです。
 また、この時期は先生や友達などの影響を強く受けやすい年齢です。特に友達の影響は大きく、「親よりも友達の意見が正しい」と主張することもあります。
  
それまでは、親の言うことを絶対視する気持ちが強かったのですが、「親の言うことにも矛盾があったり身勝手なことがあったりする」ということに気づき始めるのです。そんな時は、親であっても、
ほんとにそうね。反省しなくちゃね。
等と素直に自分の非を認めましょう。

5. 反抗期があまり見られない子ども
   
その一方で、親御さんがおおらかな心の持ち主で、しつけを急いだり強要したりしない場合、子どもが余り反抗しないケースがあります。このような親は、命令調な物言いをすることが少ないですし、子どもに反抗されてもその気持ちを受け止めることが多いです。同時に子どもを叱ることも少なくなります。そうなると、子どもは反抗する必要がなくなり、“我”を通す場面も少なくなります。子どもに対する親の言動次第で、子どもの反抗の強さも変わってくるのですね。