【今回の記事】
【記事の概要】
   自分たちが育児をしていた時代の常識や方法にとらわれた祖父母世代と、現代のパパやママとの知識のギャップ、通称「育児ギャップ」がさまざまなところで指摘されるようになっています。
   たとえば、ネット上では先日、祖父母世代がやりがちなこととして、
・オムツ替えで赤ちゃんの足を必要以上に引っ張ったり持ち上げたりする
・生後間もない頃から果汁や離乳食を与える
・泣き止ませるために過度に揺らす
などが問題となっており、親世代からは「イライラする」「何十年前の話だよ!」と反発する声も上がりました。こうした育児ギャップには、どのように向き合うべきなのでしょうか。
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書籍「マンガで『あるある!』パパ・ママ⇔じいじ・ばあばの子育てギャップこれで解決」(扶桑社)の監修を手がけ、小児科診療のほか育児支援活動も積極的に行う、細部小児科クリニックの細部千晴院長に聞きました。

Q.現代の親世代と祖父母世代を比較して、特に大きく異なる育児の常識はどのようなものでしょうか。
細部さん「昔は良かれと思ってやっていたことが、実は間違っていたということがあります。たとえば、昔は真っ黒に日焼けした子どもが健康とされていましたが、現在は『紫外線の浴びすぎは良くない』とされ、その反動から、ビタミンDの不足による『くる病』も増えているほどです。食物アレルギーも昔は『口の周囲のブツブツはアレルギーだから、与えてはいけない』『アレルゲンとなる食品を使わない除去食を作る』という時代がありましたが、現在は『食べて治す食物アレルギー』の言葉通り、皮膚の状態が良好な赤ちゃんには早めを食べさせる時代になっています。だ液のついた箸で食べ物を与えたり、かみ砕いたものを与えたりしていた昔の育児については『虫歯菌であるミュータンス菌を移してしまうのでやめた方がよい』と、一般に知られるようになりました」
Q.一方で、昔の方が適切だった育児方法もありますか。
細部さん「現代は早寝・早起きの習慣がかなりゆがめられています。この点においては、子どもを早い時間に寝かせていた昔の育児を見習うべきです。旅行など特別な日を除き、夜10時などの遅い時間に幼児をファミリーレストランやコンビニに連れて行くことは絶対NGです」
Q.その他、世代に関係なくあまり知られていない育児の常識があれば教えてください。
細部さん「まだ首が座っていない2~3カ月の赤ちゃんの頭を支えずに『縦抱き』しているご年配の方を見かけますが、首を支える抱っこの方法は知られていないようです。また、0歳児を縦横に素早く動かす動きは『揺さぶられっ子症候群』を招く危険があるため『高い高い』をする時はゆっくりと降ろしてください。さらに、車の移動の際にも注意が必要です。チャイルドシートに入れていても、1時間以上ドライブすると、『揺さぶられっ子症候群』になる危険性があります」
Q.祖父母世代が現代では推奨されない育児方法をしていた場合、どのように対応するのがよいでしょうか。
細部さん「基本的には、現代のやり方を尊重してもらいましょう。口出しされたら『今はこんな風にするみたいですよ』などと現代の育児スタイルを上手にアドバイスしてあげてください。ご主人を交えてルールを作っておいたり、『かかりつけ医・看護師・保健師がこう言っていたよ』と伝えたりする方法も良いでしょう」
Q.世代間で協力して育児を行う場合、心がけるべきことがあれば教えてください。
細部さん「育て講座では『若い親の育児方針に従うこと』『自分たちの時代の子育て習慣を押し付けない』といったことを『祖父母の心得』としてご紹介しています。一方で、祖父母に子どもを預ける場合、中には頼られることを負担に思う方や、孫に十分関われない方がいることを、現代のママやパパには知っておいてほしいです」

【感想】
「基本的には、現代のやり方を尊重してもらいましょう」という細部先生のご指摘。やはり、時代と共に医学は進歩を遂げていますから、新しい方法が望ましいのでしょう。

   さて、記事中で紹介されている「縦抱き」については、別サイト「首すわり前の縦抱きは赤ちゃんに影響ある?メリットとデメリットは」によれば、首をしっかり支えていれば短時間であれば問題ないそうです。このサイトでは、「縦抱き」のメリット・デメリットや育児についての関連記事も紹介されていますのでご参照ください。また、次のような体験談も紹介されています。
何をしても泣き止まなくて困っている時は『縦抱っこ』をお勧めします。(中略)何をしても泣き止まなくて、夜が来るのがとにかく嫌で嫌で…。昼間に少し散歩をしてみたり、寝る時は音楽をかけてみたり、様々試しましたがどれも効果はありませんでした。でもある日、ふと縦に抱っこした途端に泣き止んだのです。おもしろいくらいにピタッとおさまったので『今までの努力はなんだったの!?』と拍子抜けしたという経験があります。」
もちろん個人差はあると思いますが、これは、「“母子が密着する(スキンシップ)”と言う方法が、『愛着(愛の絆)』の形成上最も効果的である」ということが背景にあるのだと思います。きっと、お母さんの“温もり”を感じて安心するのでしょう。
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   さて、懸案のおばあちゃんやおじいちゃんへの伝え方ですが、記事中にある通り、「(かかりつけ医・看護師・保健師等の)先生がこう言っていたよ」と伝える方法が良いと思います。特に祖父母世代にとっては、“お医者様”は絶対の存在のようですから。昔は“(学校の)先生様”も絶対の存在だったのですが、今ではすっかり信用を無くしてしまったようです。トホホ…。

   また、情報収集のためにネットを利用するのは良いと思いますが、ネットで紹介されている情報は真偽が定かではないものもあるため、何か気がかりな点があれば、実際にかかりつけのお医者さんに聞いて確かめることをお勧めします。

   ただ、おばあちゃんやおじいちゃんには、「子育て経験は自分たちの方がある」と言う自負やプライドがあるはずです。ですから、「今の時代はこうするの!」「お医者さんも言ってるんだから!」という強い言い方は避け、「ご心配ありがとうございます。」と祖父母世代に対する敬意を持って接すると良いと思います。かわいい孫を健やかに育てたいという願いは、お母さんと一緒ですからね。

【補足情報】
   さいたま市では、「母子手帳」ならぬ「祖父母手帳」というものを作成し、様々な育児の方法が、祖父母世代と今とでどのように変わったかを下記の中で紹介しています。ご参照ください(文字が小さいので、指で拡大してご覧ください)。さいたま市が公に発信しているこの資料も、祖父母世代にとっては、信頼性高いものになるのではないでしょうか?