「生理的欲求」が充分に満足されると、次に「安全の欲求」を満たしたいと考えます。
   これは、安全な環境の中で暮らしたいと願う欲求です。子供の立場からすると、「予測可能な生活をしたい」という欲求と捉えることもできます。つまり子供は、一貫性公正を好み、ある程度決まったルール見通しの中で安心して生活をしたいと考えているのです。特に人一倍感じやすい“感覚過敏”の特性を持つ自閉症スペクトラム障害(ASD)の傾向が強い子供は、この欲求が強いです。しかし、これらの予想の範囲を超えた想定外のことが起きると、不安を感じ、安定感を失ってしまうのです。
   特に気分次第で暴力を振るわれる虐待を受けた子供はこの欲求が満たされません。学校という環境でいえば、教師からの予想だにしない厳しい叱責を受けたり、友達からいじめに遭ったりする子どももこの欲求が満たされていないでしょう。それらの出来事は、いずれも子どもにとって突発的であったり、予想を超えた苦痛であったりするのです。
   これらの事例のように、「安全」と言うと、“暴力という物理的な力を受けない環境”と捉えられがちかもしれません。しかし、親がある日「子供のゲームのやる時間が長すぎる」と感じた時に、事前の約束もなく、いきなりゲームを没収するというような状況も、子供にとっては公正見通しが崩され、“精神的安全」が脅かされることになるのです。

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   この「安全の欲求」を満たすうえで最も大切なことは、事前の約束”によって“見通し”を持たせ“安心”を保証することなのです。