【今回の記事】

【記事の概要】
   ストレスが心身に及ぼす影響の大きさは、近年広く知れ渡るようになった。それだけに、体調が悪かったり、精神面が不調だったりすると、「何かがストレスになっているのでは」と原因をストレスに求める人は多いのではないか。
   人は様々なことにストレスを感じるが、本書によるとそれらはおおよそ2つに大別される。「頑張るストレス」と「我慢するストレス」だ。
「頑張るストレス」は、仕事でノルマに追われていたり、納期のスケジュールに追われている状況で感じるストレスで、「体」へのストレス反応が大きくなるという。アドレナリンが過剰分泌され、血圧の上昇などが起きる。
   これに対して「我慢するストレス」は、満員電車に長時間乗ったり、嫌な上司と毎日顔を合わせるといった、不快な状況を耐え忍ぶ状態を継続しなければならない状況で感じるストレスのこと。「心」へのストレス反応が大きくなることが知られている。
   この「我慢するストレス」が今、研究者の間で注目を集めているこの種のストレスが主因となって、脳障害につながるある反応を体内で引き起こすことがわかってきたのだ。
慢性的なストレスで起きる脳の破壊
   ストレスホルモンとして知られる「コルチゾール」という物質は、副腎から分泌され、血流にのって体内を循環しながら、エネルギー源の補充などの重要な役割を果たす。役割を終えると脳に辿り着き、そこで脳に吸収されていく。これが正常なストレス反応の流れだという。
   ところが、「我慢するストレス」状態が長時間続くと、このコルチゾールが常に分泌されつづけてしまう。こうなると、脳にコルチゾールが溢れてしまうのだ。
   常に届けられるコルチゾールによってどうなるか。特別な金網に閉じ込めるなどして、「我慢するストレス」に相当する慢性的ストレスを与え続けたネズミとそうでないネズミを比較すると、脳の海馬の部分に顕著な違いが見られた。ストレスを与えられたネズミの海馬は、神経細胞の突起が明らかに減少していたのだ。これは脳にあふれたコルチゾールのはたらきと考えられるようだ。
   これはネズミだけの話かというと、そうでもない。あるうつ病患者の脳とそうでない人の脳を比較すると、うつ病患者の脳の海馬部分に萎縮が見られた。脳画像を見ると、その萎縮によって脳の中に隙間ができていたという。いうまでもなく、海馬とは学習記憶をつかさどる重要な部位だ。ストレスは時に私たちの心に圧迫感を与えるが、私たちの肉体までもむしばんでしまう可能性があるのだ。

【感想】
「嫌な上司に接し続けていると脳の海馬が萎縮してしまう」という驚きの報告。しかし、それは人生経験が短い子供ならば尚更のことでしょう。
   子供が嫌な他者に対して我慢する環境は、大きく分けて3つ考えられます。
友達関係での我慢
担任に対する我慢
家族に対する我慢

友達関係での我慢
   特に、いつも他人の顔色を伺い、相手の気分を害さないように怯えている不安型」の子供は、友達関係の面で我慢を強いられることが多いと思われます。
   このタイプの子供は、母親が自分の思い通りにならないと子供を叱責したり突き放したりするという、母親の価値観を押し付ける場合に見られます。そのため、子供は母親の気分を害しないように、いつも母親の顔色を伺いながら生活するようになります。その結果、自分の言動に自信が持てず、友人に対しても、更に成人後、会社の同僚に対しても、その顔色を伺いながら、自分の気持ちを我慢して他人に合わせる生活を送るようになるのです。
   そのようなタイプにならないためには、普段から子供の意思や行動を尊重して見守り、干渉し過ぎないようにすることが大切になります。いわゆる「自立4支援任せて、見守り、諭して、褒める)」によるサポートを親が心掛けていることによって、子供は自分の言動に自信を持てるようになり、他人の目を気にすることも少なくなるでしょう。

担任に対する我慢
   子供達の中には“感覚過敏”の特性を強く持っている子供が少なくなくいます。しかし、通常学級の中に発達障害と診断の下った子供がいることは知っていても、見た目は普通の子供ながら感覚過敏の傾向が強い子供がいることに気付いている教師は残念ながらそう多くありません。また、その担任から教室で厳しい叱責を受けても、子供の立場では、先生に対して意見を言うことは絶対に出来ません。“感覚過敏”の特性を強く持つ子供にとっては、この上ない我慢を強いられることになり、その状態が長く続くと、いずれ登校を渋るようになるでしょう。
   この問題を解決するためには、子供に代わって親が学校側に働きかけなければなりません。しかし、以前もお話ししたように、親が直接担任に相談した場合、不適切な指導をする担任ほど、問題をオープンにせず、もみ消してしまうケースがあります。それを避ける為には、教頭や副校長に相談することが望ましいです。相談を受けた教頭は校長に報告を上げますから、管理職の目が抑止力となり、担任の過度に厳しい指導は改善の方向に向かうことが考えられます。

家族に対する我慢
   家族は毎日顔を合わせるため、誰かに不満を感じていると、ある意味、そのストレスは友達や担任の比ではないかもしれません。更に不満を隠さず相手に伝えるため、トラブルは度々起こります。昨今では、家族内の殺傷事件が度々報道されるまでになってしまいました。
   そんな家庭内にあっては、「安全基地」としての母親の存在が特に重要になります。具体的には、特に子供が悩みを打ち明けやすい母親であることが求められると思います。この事に関わって、以下のような記事を投稿していました
この中では、次のようなことをお話ししています。
母親の“微笑み”による柔らかな“見守り視線”に出会うと、親との心の繋がり、つまり「愛着愛の絆)」を感じます。その「愛の絆」で繋がっている時は、親子の間には存在しません。「愛着愛の絆)」で繋がっているのですから、親を自分に近い存在だと感じ、話しかけやすい環境になるのです。」
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このような話しかけやすい母親の存在は、家庭内での我慢だけでなく、家庭外での友達担任の先生についての問題に気付いてやるうえでも必要なものです。子供が話してくれなければ、子供が自力で問題の解決に当たらなければならなくなりますが、当然子供の力では解決は難しく、子供の我慢とストレスは増大し、場合によっては脳に対して悪影響を及ぼす場合もあるのです。

   愛着研究の第一人者である岡田氏が「愛着は「知能」の発達にも影響する」と指摘している意味が分かる今回の記事でした。