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【今回の記事】

【記事の概要】
   26歳のときにアスペルガー症候群とADHDの診断を受けた青年。
   就職活動での面接の際に、自分の特性を面接官に分かりやすく説明するナビゲーションブック」(以下の図)を作成しました。

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   表最左列には、「自分が抱える困難さ」について記載されていて、以降の列には、それぞれの困難さについて更に「障害特性の詳細」「自分で工夫している事」「配慮していただきたいこと」が記載されてあります。

   障害者雇用枠での面接では、仕事に対する熱意や志望動機以上に、障害のことや、それに対して必要な配慮について質問されました。そういったときにナビゲーションブックが役立ちます。2部、印刷して持参しておいたナビゲーションブックを、面接官と一緒に見ながら、事細かに説明しました。
   彼はある時、ナビゲーションブックを見た感想を、面接まで進んだ企業の採用担当者に聞きました。すると面接官からは、「障害者雇用によく使われる履歴書には3行程度障害について記載する欄があるが、3行程度の説明では、障害の多様さを理解するのは難しい。しかし、こういったナビゲーションブック等で障害に関して、詳しく説明して頂けるのはとても助かる。また人事としても、障害に関してどこまで聞いて良いのか非常に気を遣う。求職者の方からオープンにして頂けると採用担当者からしてもやりやすい」と言われました。また別の面接官は「伝言ゲームだと、聞いた内容があやふやになりやすいが、こうした資料があれば、次の面接官への引き継ぎがしやすい」とも言われました。
   総じて、障害を隠すよりも、かえって包み隠さず話した方が好印象と受け止められるケースが多かったとのことだったそうです。

【感想】
   この「ナビゲーションブック」によって、彼は面接官から好印象を抱かれました。“彼”を“子供”に例えるなら、“面接官”は“担任の先生”といえます。
   しかし、昨年3月福井県池田町の中学校で当時2年の発達障害を持つ男子生徒が担任と副担任による過度の叱責を苦に飛び降り自殺した事件が起きましたが、その際に設置された第三者委員会の委員長を務めたある福井大学大学院の松木教授が発言したように、障害特性に配慮した指導が十分行われていないのは全国的に見られる傾向です。それならば、家庭の方からこれと似たものを作り担任の先生に説明をしながら提出してはどうでしょうか。面接官が好印象を受けたように、「これなら、うまく指導できそうだ。」という見通しを担任の先生に与えることができると言う事は、何よりも担任の先生にとっての安心感につながり、ひいてはその安心感が担任の先生の穏やかな表情に表れ、結果的に子供自身にも安心感がもたらされることになると思います。

   作成にあたっては、先ずは①どんな事が苦手なのかについて親が子供と話し合うこと、その後、②発達障害の診断を受けた病院の先生から、その苦手さについてアドバイスをもらうことが有効だと思います。お医者様から頂いたアドバイスを元に作成したとなれば、学校の先生にも、発達障害についてまだよく知らない家族の中の大人にも信頼してもらえると思います。

   私は在職中、実際に自分の障害についての“説明書”を自作した、通常学級に在籍する自閉症スペクトラム障害(ASD)の小学校3年生の男の子に会ったことがあります。その子は、小学校3年生ながら、自分の障害について真正面から向き合い、どんな特性があるのか、自分は何ができないのか、という事について私に詳しく説明してくれました。
   発達障害の子供は、通常であれば、「なぜ自分がこんなことができないのか?」ということに悩み大きなストレスを抱えます。しかしその男の子のように、自分が生まれつき出来ない事について理解していると、自分を客観的に見つめることができ、必要以上に自分を責めることがなくなります
   その子は、通常学級に適応できなかった時期もありましたが、その後は、学級に復帰して生活できるようになりました。当時その説明書が果たした役割は大きかったと思っています。

   今回の記事で紹介されたのは正式に発達障害と診断された男性の例でしたが、少なくとも自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性は誰でも大なり小なり持っているものなので、どの子供の場合でも、
過度に緊張する
・新しい環境や人に対して抵抗感を抱きやすい
・性格が人一倍純粋で傷つきやすい
・どうしても食べれない物がある
等の色々な苦手さ(詳細は上記サイトASDの各障害特性を参照)を持っているはずです。我が子が、どんな苦手さを持っているかを把握しておく事は、子供にとって“優しい生活環境”を築くうえで大切なことだと思います。