【今回の記事】


【記事の概要】
(ある母親からの教育相談)
小5の女の子がいる母親です。中学受験を考えているため、塾に通っています。うちの子は、勉強が好きなほうではないですが、比較的努力家でコツコツと勉強するほうです。しかし、コツコツと勉強して頑張っているにもかかわらず、なかなか結果に表れません。結果に表れるどころか、下がっているようにさえ思います。どのように子どもに対応したらよろしいでしょうか。よろしくお願いします。」(仮名:藤森さん)

{52FB0207-A45F-446A-9ECD-F8C96244C800}

(相談に対する回答)
なぜコツコツ努力をしても報われないのか
   藤森さんがご心配になっているとおり、実は、コツコツ努力をしても成果が出ないことがあるのです。筆者はこれを「努力逆転の法則」と呼んでいます。つまり、努力すればするほど、成果・成功から遠ざかっていくという恐ろしい法則なのです。今回はこのメカニズムについてお話ししましょう。
その前にまず一般的に考えられる「コツコツ努力をしても報われない」理由を3つ掲げましょう。
1)努力する部分を間違えている
   たとえば、勉強でいえば、テストによく出る問題(Aランク)とたまに出る問題(Bランク)、あまり出ない問題(Cランク)と大きく3種類に分けたとして、テストにあまり出ない問題(Cランク)を勉強しても点数にはつながりませんよね。一度、頻出順に整理して、勉強の強弱部分を明確にするといいでしょう。
2)実は大して勉強していない
   親から見て机に座って勉強していると感じていても、実際は、60分のうち半分ぐらいの時間は「ぼーっ」としていたり携帯をいじっていたりすることがあります。このような場合は、集中できる時間を計測して、その時間内で仕上げるように勉強内容を組み立てていくといいでしょう。15分しか集中できないのであれば、タイマーをかけて15分で休憩を5分入れるというようにします。30分は集中できるのなら、30分でタイマーをセットします。このように終わりの時間を明確にすることで、子どもは「その時間内はやろう」という気持ちになります。
3)勉強方法を間違えている
   勉強方法を間違えていると、いくら努力しても成果につながりませんね。当たり前のことです。勉強方法については、一度先生に確認してみる必要があるでしょう。

   以上、典型的な3つの理由についてお話ししました。もし、この3つのいずれかに該当する可能性があれば、その該当部分をチェックするといいでしょう。
   しかし、これら3つ全てがクリアされているのに伸びないということがあるのです。今回は特に、この点について以下にお話ししましょう。このことについては一般に知られていません。

「頑張る」には2つの種類がある
①苦しみを伴った「頑張る」
   通常イメージされる「頑張る」とは、「苦しみを伴った『頑張る』」です。一般的に、「頑張る=つらいこと」ととらえることが多いのではないでしょうか。「受験勉強を頑張る」といった場合、おそらく「つらい孤独な戦いを忍耐で頑張る」という様子をイメージすることでしょう。もちろん、この方法でも、ある程度は成績は上昇します。しかし“ある程度”です。しかも、このタイプの頑張る道のりは、厳しくつらいものであり、できれば避けたい道を我慢して通っているため、ちょっと油断すると直ぐに下がっていきます
楽しみを伴った「頑張る」
   では、「苦しみを伴った『頑張る』」ではないのならば、どうすればいいのかということになりますね。それが、もう1つの種類の「楽しみを伴った『頑張る」なのです。換言すれば、「楽しんでいる心理状態にある『頑張る』」ということなのです。
例)小6の女の子の例
   私がかつて指導していた小6の女子のお話をしましょう。彼女は、全教科抜群にできるのですが、特に国語がよくでき、難問でも解いてしまうのです。私は、その子に「どうやって国語の文章を読んでいるの?」と聞くと、「この文章に出てくる○○ちゃんは、私の友達の△△ちゃんに似ていて、でも××の部分はちょっと違うんだよね。△△ちゃんはこんなふうには考えないからね」と答えるのです。さて、これが何を意味するかおわかりでしょうか。この子は問題を解くために文章を読んでいるのではなく、自分の知っている現象と文章を重ね合わせて、内容面に入り込んでいるのです。だから問題が解けるのです。つまり、その子は「楽しんでいる」のです。
例)歴史ができる高校生の例
   ある高校3年生がいました。彼は、高3から世界史を勉強し、たった1年でマスターして早稲田大学法学部に合格しました。彼に、なぜ世界史がそんな1年でできるようになったのか聞いたのです。すると彼は「世界史に出てくる人物を自分の知っている友人達に置き換えている」というのです。「先生も出てきますよ」と言われたものです。家族や知人、友人を総動員していると言っていました。単なるカタカタで表記され会ったこともない世界史上の人物を身近な人に置き換えることでリアル感を持って“楽しんだ”ようなのです。
どうすれば楽しめるのかを考える
   この2つの例はほんの一例です。まだまだたくさんあります。できる子だから楽しめるのではなく、楽しめる子だから結果としてできるようになっていったのです。
   藤森さんにアドバイスしたいことは、一見つまらなさそうにみえる勉強を、いかにして楽しめるようにするかということが重要だということです。ただ頑張ればいいというものではありません。どうすれば楽しめるのかを考えて実行しましょう。この考え方が、将来にわたって、お子さんにとっての最大の財産にもなることでしょう。

【感想】
   今回の記事の筆者の主張の目玉は、「努力すればするほど、成果・成功から遠ざかっていく」という努力逆転の法則」だと思います。その背景には「苦しみを伴った“頑張り”」の限界性があり、逆に楽しみを伴った“頑張り”」が必要という指摘です。
   記事では 「自分の知っている現象と文章を重ね合わせて、内容面に入り込む」とか、「世界史に出てくる人物を自分の知っている友人達に置き換える」という、いわば「感情移入法」とでも言うべき方法が紹介されています。
   これに関して言えば、子供たちの苦手な算数の文章問題について、問題中の登場人物の名前を自分の身の回りの人の名前に置き換えると正解率が上がるという研究報告は私も知っています。例えば、アメ玉を分けるような場面のわり算の問題であれば、過去にアメ玉のようなお菓子を分け合った友達の名前にすると、その時に自分が経験した記憶が同じ数ずつ分けるという文章問題の場面理解を促進させるのです。
   そういう意味では、「世界史上の人物を身近な人に置き換えることでリアル感を持って“楽しんだ”」と言う高校3年生の事例も同じ意味を含んでいると言えます。歴史は、ある意味で歴史上の人物達の人間関係ドラマですから、仲が悪い関係、主従関係、争う関係等、歴史上の色々な人間関係と似たような関係にある家族や知人を当てはめるという方法は効果的だと思います。
   しかし、この2人の学習法は、上手く当てはまる場面状況では有効でも、当てはめ難い状況では難しいと思われます。残念ながら、私達が真似しようにも簡単に真似できる方法ではないような気がします。

   一方、記事中では、“一般的に考えられる「コツコツ努力をしても報われない」3つの理由”が紹介されています。
   この3つの理由のうち、最も多くの子供に当てはまるのが、2つ目の「実は大して勉強していない」ではないかと思います。毎日机に向かってある一定時間程度は勉強しているのに成績が上がらない、そういう子供は多いのではないかと思います。
   そういう子供にとって有効な学習方法が、記事中で紹介されている、言わば「時間限定法」とも言うべき方法です。「15分しか集中できないのであれば、タイマーをかけて15分で休憩を5分入れる」とか「30分は集中できるのなら、30分でタイマーをセットする」等のように終わりの時間を明確にする、言わば「どの位やれば休憩できるか」という“見通し”を明確にするという事が子供の集中力を高めるうえで重要だと思うのです。学校の授業でさえ、「◯時間目は    時   分まで」という見通しの上で勉強させているのですから。
そもそも、きちんと休憩時間を設定すること自体行われていない場合が多いのではないでしょうか?休憩が無いとどうしても惰性で勉強してしまう事になりがちです。

   また、この「時間限定法」は、家庭での学習習慣が身についていないと言う子供にも効果があると思われます。例えば、学校から「1日2時間は勉強しましょう」等と学習時間の目標が設定される場合があるかと思います。しかし、例えばこの「2時間」という目標時間を聞いただけで意欲を失ってしまう子供がいるのです。そういう子供にこそ、(担任の先生からの了解を得た上で)親の方から「初めは15分でいいよ」と目標時間を短く限定する事で、「その位ならできそうだ」という意欲が湧いてくるはずです。そして目標時間を達成できたら褒める。次の日は5分延ばして、できたら褒める。この「時間限定法」&「スモールステップ式」&「達成できたら褒める」で進めていけば、無理なく学習習慣が身に付くと思います。

   この冬休みが、学習方法を改善するいい機会となるといいですね!