第4章「今からでも間に合う『育て直し』

愛着不全は一歳半を過ぎてからでも改善できる
「愛着(愛の絆)」の大きな特徴は、それが先天性のものではなく、環境によってつくられる後天性ものであり、いったん「愛着」が確立した後でさえも変化し続けるということです。精神科医の岡田氏は「『愛着』の形成は、出産後から一歳半までの間が1番スムーズに行われる」と指摘していますが、今現在、不安定な「愛着」パターンを示している場合でも、これから子どもへの関わり方を変えていけば、「愛着」は安定していき、別人のように生き生きとしてくることも多いのです。遺伝的要因や気質的障害そのものを取り除くことはできなくても、「愛着」を安定したものに変えることは親の努力次第で十分可能なのです。

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このように、乳幼児期の愛着形成がうまくなされなかった子どもを「愛着」の安定した子どもに導き直すことを「育て直し」と言うそうです。私の経験上では、むしろ普段から親や教師の手をやかせている子どもの方が、普段周囲から認められる経験が少ないせいか、「愛着7」で接すると、その言動が別人のように変わることが多かったです。
   また、愛着不全の治療では、「目の前にいる大人が自分を理解し守ってくれる存在である」ということを認識させ、不安恐怖を取り除いてあげることが何よりも大切です。繰り返しになりますが、そのためには、大人が何気なく使っている「早く○○しなさい!」「なにやってるの。ちゃんとやりなさい!」等の語調の強い命令的言い方が、親への信頼感を打ち砕き、安心感を損なうことになるということを親自身が認識する必要があります。
   そうした親の「癖」は、親自身が子どもの頃に自分の親から同様の言い方をされていたという体験に根差していることが多いのですが、不幸の連鎖を断ち切るためにも、まず親がその「癖」を自覚して止めることが必要です。この「言葉遣い」を改め、「愛着7」で接すれば、問題を抱えた子どもの症状は必ず改善していきます。