【今回の記事】

【記事の概要】
家に帰れない!親も泣きたい、子どものこだわり
   スーパーでひっくり返って「買って!」「買わない!」の親子バトルの無限ループ。せっかく着せた服を「絶対イヤ!」と脱ぎ捨てて、パンツ一丁で大暴れ。
   実は、子どもの「こだわり」って、ほめたり叱ったり、言って聞かせたりするだけでは、解決できない場合もありますし、そもそも、大人が全てを正す必要のないこともあります。
   子どもの「こだわり」の具体的な対応と活かし方を、『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』著者で、かつては公園から家に帰れず途方に暮れていた、楽々かあさんこと大場美鈴が、ズバリ「図解」でお伝えします。
◯ちょっと待って。それって本当に子どもの「ワガママ」!?
   確かに、大人が子どもにキチンと、社会的なルールやマナー、ガマンを教えてゆくことは大事です。
   でも、こだわりというのは「こうしたい!」という、子ども自身の強い意志の表れでもあります。その全てを「正しいこと」を盾に大人がへし折ってしまったら、より一層不満不安を強めたり、「自分には自分の人生を動かす力がないんだ」なんて無力感を感じてしまうかもしれません。それに、子どもの本能的な感覚からくる強いこだわりは、「叱る」「言って聞かせる」などの理屈通用しないこともあるんです。それよりも、子どもの全てのこだわりを「ワガママ」と一括りにせずに、許容できないこと妥協できること成長に活かせること見極めて、それぞれに合った対応をすれば良いのです。そのためには、まずは、それが「子どものこだわり」なのか、「大人のこだわり」なのかを、区別する必要があります。
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◯図解!「こだわりマトリクス」で、分析すると…
   では、ズバリ「こだわり」を、マトリクス図で図解して分析してみましょう。名付けて「こだわりマトリクス」!
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   縦軸は、それが「子ども」のこだわりなのか、「大人・環境側」のこだわりなのかの見極めです。横軸は、それが、人の迷惑になっているか、それとも、個人の好みや感性の違いの範囲なのかどうかです。図の外側にいくほど感覚的な強いこだわり、中央に近づくほど理性で解決できる余地があるもの、とお考え下さい。その「こだわり」が、客観的に見て、この図のどこに当てはまりそうか、頭の片隅でイメージできると、子どものこだわりが発動したときも、少しだけ冷静に対応できると思いますよ(まあ、親も人間なので無理なときもありますケドね)。

1→【キチンと対応したほうがいい「こだわり」】(図のピンク色の部分
   人に大きな迷惑がかかってしまう「こだわり」で、子どもの間違った思い込みや、未学習、周りの状況判断の苦手さ、などによるもの。または、その子や周りの人の日常生活に支障が出てしまうほどの強い不安・不満感などです。

2と3→【大人・環境側の「こだわり」】(図のオレンジ色と緑色の部分
   必ずしも子どもばかりが原因とはいえない「こだわり」。大人の側にも「絶対こうしなければならない」「これが正しいこと・常識」という強いこだわりがあり、それに対して自分(親)の思いどおりにならない、子どもの強い意志とぶつかり合ってしまうのです。この部分が特に、大人には「ワガママ」なように感じられ、この横軸の境界線で、親子バトルが起こりがちなのではないかと思います。また、大人が気になることも、「人の大きな迷惑になっていること」から「よく考えてみれば、誰にも迷惑はかかっていないこと」まで段階があります。

4→【活かす・伸ばす・好きにさせてもいい「こだわり」】(図の水色の部分)
   人の迷惑にもならず、自分も気にならない子どものこだわりは、好きにさせて良いものであり、逆に、そのエネルギーを有効活用することで、できることを増やし、その子の世界を広げることもできます。

【感想】
   私たち大人は子どもには“未熟なこだわり”があると認識できても、得てして大人にも、こだわり、つまり“偏った思い込み”があることには気づきにくいものです。そのために、時として子供と大人との気持ちの間にギャップが生じ、両者の間に衝突(ケンカ)が起きることがあるのです。
   今回の記事は、親子間に起きた衝突(ケンカ)が、子供の未熟なこだわりによるものなのか、実は親の偏った思い込みによるものなのかについて、冷静に判断する為のツールになり得るのではないかと思います。

   さて、上記のマトリクスをよりわかりやすくするために、若干補足をさせていただきたいと思います。簡単に言うと、
マトリクスの「1」の部分は、
子供の行動が周囲に迷惑をかけており、その行動が子供の強いこだわりによる場合
マトリックスの「2」の部分は、
子供の行動が周囲に迷惑をかけているが、親のこだわりや思い込み強すぎる場合
マトリックスの「3」の部分は、
子供の行動は周囲に迷惑はかかっていないが、親のこだわりや思い込みが強すぎる場合
マトリックスの「4」の部分は、
子供の行動は周囲に迷惑をかけてはおらず、その行動が子供の強いこだわりによる場合

   では、親子間のギャップを埋めるためには、それぞれどのように対応すれば良いのでしょうか?
マトリクスの「1」の場合
   子供の行動のどんなところがいけないのかを穏やかに諭して教えることが大切だと思います。「子供がこんな事でこだわるのが悪い」とばかりに、威圧的に抑え込もうとすると、子供の感情は恐怖によって余計に高まり、親子間の衝突はさらに激化します。
マトリクスの「2」の場合
   大人の偏った思い込みの強い主張により、子供の反発心が必要以上に高ぶっていることが考えられるので、許容範囲内で子供の気持ちを受け入れたり、選択肢を与えて選ばせる等の工夫があると良いと思います。例えば、何も事前の約束をせずスーパーに入ったときに、子供が「あれが欲しい!」「これが欲しい!」と駄々をこねた時に、「急にわがまま言っても絶対買わないよ!(大人のこだわり)」と突っぱねるのは、幼い子供にとってはあまりにもハードルが高すぎ(大人のこだわりが強すぎ)ます。この場合は事前約束をしなかった自分自身にも非があった事を認めて、「◯円以内ならいいよ」と許容範囲内で妥協したり「じゃあ、その2つのうちのどちらか1つだけ」と子供と交渉したりする等の対応が必要になります。
   ただし事前に約束をしていながら、店内でわがままを言った場合はマトリックスの「1」の範疇に入り、「約束した事は守らなければいけない」ということを冷静に教えてあげる必要があります。
   因みに、記事にあるような発達障害の症状が現れ、結果的に周囲に迷惑をかけてしまった場合は、この範疇に入ると思います。この場合の子供のこだわりは、この記事で言う単なる“ワガママ”ではないのですが、大人にはややもすると「きちんとできるはずだ」という思い込みが起こり注意してしまいがちです。しかしそのような場合は、発達障害の特性を理解して、「特性上どうしてもできない事は仕方がないのだ」と、いい意味での妥協をして対応する姿勢が必要だと思います。

マトリクスの「3」の場合
   実は周囲に迷惑をかけてはいないのに、大人の思い込みのために、大人の目には子供の行動が問題行動に見えています。大人が冷静になって、子供の行動が周囲に迷惑をかけているかかけていないかを見極めることが大切です。
マトリクスの「4」の場合
   周囲に迷惑かけていませんが、大人には子供の行動があまりにもこだわりが強すぎて異常に見えているかも知れません。しかしそれはあくまで子供の強い興味・関心によるものなので、逆にそれを長所として捉え認めてあげることが大切だと思います。もしかしたら将来の“博士”候補かもしれません。ほとんどの子供の場合、ここで子供本来の可能性を潰されているのではないかと思います。

   つまり、親子間の衝突を解消するために考えるべき観点は次の2つです。
①子供の行動が、周囲に迷惑をかけているのか?かけていないのか?(マトリクスの横軸)
②大人である自分の考えが、妥当であるか?厳格過ぎてはいないか?(同縦軸)

この2つの観点について落ち着いて考えることで、子供の行動がマトリクスのどの部分に当てはまるかが決まり、それと同時に、その行動に対して大人がどんな対応とればいいかも決まるのです。