【今回の記事】

【記事の概要】
   お菓子売り場で「欲しい!」と床に転がって泣きわめくお友達の家の玄関で「帰りたくない!」と大暴れ。お友達が遊ぶオモチャを奪ったので「返しなさい」と声をかけたらキレてママを叩く……。「こんなわがまま許せない! もっとしっかり“しつけ”ないと!」ママも肩をいからせ「やめなさい!」と叱りつけようものなら、子どもの感情もますます大爆発!……では、どうしたらママの想いが子どもに届くのでしょう?この記事では、18年間様々な立場から教育に携わる筆者が、米国でベストセラーとなった小児精神科医ダン・シーゲル氏の『しつけ』についての著書をもとに、より効果的な“しつけ”についてお伝えしたいと思います!

「しつけ」とは「教え・学ぶ」こと
   英語では「しつけ」を「ディッシプリン(discipline)」といいます。この「ディッシプリン」とは、元々ラテン語の「ディッシプリーナ(disciplina)」を語源とし、「教え・学ぶ」という意味があるそうです。していいこと・よくないことをまだよく分かっていない子どもに、より人生経験のある大人が“教え”、子どもは“学ぶ”という意味があるのですね。
感情が高まっている時に「教え・学ぶ」ことは難しい?
   それでも、小児精神科医ダン・シーゲル氏によると、「もし、子どもも大人も感情が高まり興奮状態にあるとするなら、人間の脳の性質から、教え・学ぶことは難しいといいます。なぜなら興奮状態にある脳とは、思考や想像や記憶などのより(高度で複雑な機能を司る「大脳皮質」よりも、情動や衝動や反射などのより原始的な機能を司る「大脳辺縁系」の方が活性化された状態にあるためというのです。こうして“考え、想像し、記憶する”といったことがうまく機能しないところへ、してよいこと・よくないことをママがいくら叫んでも、子どもの頭にも心にも届かず、長い目で見ても身につくことはないというわけです。ですから、「しつけないと!」と思ったらまず確認したいのは、ママも子どもも、落ち着いて教え学ぶ状態にあるか?ということ。親子気持ちが落ち着いたら初めて、「しつけ=教え・学ぶ」を効果的に実行することができます
ママと「コネクトする」ことが大事!具体的な方法4つ
   子どもの感情落ち着けるために最も有効な方法がママと“コネクトするつながることといいます。その具体的な方法をみてみましょう。(公共の場で長い間大声で泣きわめなくなど、周りに迷惑をかけるような場合は、まずは、できるだけ落ち着いて接することのできる場に移動します。)
(1)温もりのあるコミュニケーションを心がける
   目の高さをその子と同じかより低くします。目を見てうなずき抱っこして背中をなぜたりトントンしたりとスキンシップをとります。
(2)気持ちを受け止める
   好ましくない行動を受け入れる必要はありません。それでも「あのオモチャで遊びたかったのね」と、その子の気持ちを認め受け止めてあげましょう。
(3)話すのを止め、聴く
   子どもの感情が爆発している時には、説明したり、説教しても全く効果はありません。その子が発する言葉に耳を傾けてみます
(4)「聴いているよ」と示す
あのお菓子、お友達の家で食べて美味しかったからもう一度食べたかったのね」など、子どもが「聞いてもらえた」と感じるよう、(子どもの発言を)繰り返してあげましょう。こうしたことを繰り返すうちに、子どもの気持ちは、落ち着いていきます。

【感想】
   スーパー等で、親子でほとんど口喧嘩になっている場面、目にする事ありますよね。親は必死に子供を説得しよう(しつけしよう)とします。しかし、そこに落とし穴があるようです。

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   それはどんな落とし穴でしょうか?その疑問を解くカギは、
もし、子どもも大人も感情が高まり興奮状態にあるとするなら、人間の脳の性質から、教え・学ぶことは難しい
という小児精神科医ダン・シーゲル氏の指摘です。「子どもと大人どちらかでも感情が高まり興奮状態にあるとするなら、子供をしつけよう(説得しよう)としても脳が興奮状態にある時は“正しく教え”“正しく学ぶ”事は難しい。」と言うこの指摘。という事は、まずは興奮状態の気持ちを落ち着けなければならないことになります。つまり、「『しつけより優先すべき』たった1つのコト」とは母子間で心でコネクト(つながる)し、“正しく教え”“正しく学ぶ”事ができるまでに気持ち落ち着けさせることだったのです。
   ということは、子どもの反発心を誘発する、親による否定的命令的な言い方は必然的にタブーであり、子どもの心を荒立てないような“穏やかで冷静な言い方”が必要だという事が分かります。
   因みに、次の二つは子どもに与える印象はだいぶ異なります。
A「今日は何も買わないって約束したでしょう?!そんなお菓子は買いません!
B「今日は何も買わない約束だったから、そのお菓子はまた今度にしようね。

「A」のような命令的な言い方をされたら、かえって子どもの気持ちを荒立ててしまいます何も買わないって約束をしていた事を思い出したとしても、なぜか無性に反発したくなります
「B」の穏やかな言い方だと、「そうだった、今日は何も買わない約束してたんだ。」と思い出して納得できそうです。
   また「A」と「B」とでは、親の表情も違います。「A」は険しく怒ったような表情になっていますが、「B」だと逆に微笑みさえ浮かんでいそうです。

   また記事では、子供が興奮している場合の母親とコネクトする方法も4つ紹介されています。その中で私が最も大切だと思うのは「子供の気持ちを受け止める」事です。例えば、「ポテチ買う〜!」と駄々をこねている子供に対して、
A「いくら言ってもダメなものはダメ!
と突っぱねるか、
B「あなたはポテトチップスが大好きだものね。」
とポテチが大好きな子どもの気持ちを理解して受け止めるか、ではその後の子供の反応が違って来ます。子どもの気持ちを理解して“①受け止め”てあげると、その後の「でもね。今日は何も買わない約束だったから、そのお菓子はまた今度にしようね。」という“教え”が子供の心に響きやすいのです。この事については、中京大学名誉教授で定年退官された鯨岡峻先生が、この「受け止め」を「受容」、「教え」を「教育」と表現して、「『①受容②教育』という順番が大切である」と、同様の旨を述べています。なお、子どもは自分の心を受け止めてもらった後に、「僕の気持ちをわかっているなら、どうして買ってくれないの?」とは思いません。自分の気持ちを分かってもらえるだけで十分なのです。
   因みに母親とコネクトするための4つの方法のうち、「(3)耳を傾ける」と「(4)よく聞くも、子供の気持ちを理解する為に子供の話に“耳を傾け”“よく聞く”という事なので、目的は「(2)気持ちを受け止める」と同じですが、この2つは、子供の泣いている“理由”がわからない時に、「何が嫌なの?」と聴く際のサポート方法です。何れにしても、子供の“言葉”や“気持ち”を引き出して、子供の思いに「共感」する事が大切なのですね。