【今回の記事】

【記事の概要】
「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)2017年10月28日放送「子どもの脳が変形する!?危険な子育て」より

マルトリートメント」という言葉を知っているだろうか。「マル(mal)」=「悪い」、「トリートメント(treatment)」=「扱い」を組み合わせたもので、子どもへの心ない言葉や暴力育児放棄などの「不適切な養育」を指す。
   最新の研究で、マルトリートメントによるストレスが子どもの脳を変形させ、成長してから悪影響を及ぼす可能性があるとわかってきた。「我が家は虐待は無縁」と思っていても、何気ない一言や行動で子どもの脳が傷付いているかもしれない。福井大学の友田明美教授が詳しく解説した。
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   知らず知らずのうちにやってしまいがちなマルトリートメントの第5位が「過干渉」だ。自己管理できる子どもに行き過ぎた管理をしていると、子どもは「(親から)信用されていない」と感じ、危険や恐怖心を感じる脳の「扁桃体」が変形いつもビクビクした大人になってしまう。(子供に対する)心配事があっても、ぐっとこらえ、口を出すのが本当に子どものためになっているのか一旦考えよう。
   第4位は「長時間スマートフォンを触らせる」。今や3歳児の47.5%9歳児の89.9%スマホなどでインターネットを使っているという調査結果もあるが、長時間スマホを使っていると、親とのコミュニケーション極端に減る。右脳と左脳をつなぎ、感情をコントロールする「脳梁(のうりょう)」という部分が縮小し、集団行動ができなくなってしまうどうしても手が離せない時にスマホを渡すのは便利だが、1日1時間など、時間を決めて使わせるとよい。
   第3位は「(親が)風呂上がりに裸でウロウロする」。子どもが本気で嫌がっている場合は、立派な「性的マルトリートメント」だ。「視覚野」が変形し、記憶力認識能力が低下する。子どもの気持ちを聞き、嫌がっているなら必ず脱衣所で着替えるように。
   第2位は「兄弟友達と比較する」。他の人と比べながら叱ると、子どものプライドを傷付け喜びや快楽を感じる「線条体」が働かなくなり将来アルコール依存薬物中毒におちいる危険性が高まる子どもは一人ひとり違うもの。誰かと比較せず、本人ときちんと向き合うべし。
   第1位は「感情に任せた暴言」。体への暴力より、言葉の暴力の方が脳へのダメージ大きい。暴言を受けると「聴覚野」が肥大し、耳が健康でも音が聞こえなくなる心因性難聴」を患うケースも。叱らなければいけない時は、「60秒以内」を心がけて。長時間の説教は感情的になる場合がほとんどで、ただの暴言にしかならない。叱るポイントを絞って。

   夫婦喧嘩にも要注意だ。激しい喧嘩を頻繁に見ると、その景色を見たくないと、視覚野の一部「舌状回(ぜつじょうかい)」が縮小し、語い理解力が低下する。なるべく夫婦喧嘩は子どもに見られないよう、メールなどを介するとよい。

   成長過程にある子どもの脳はとても柔らかく回復力を持っているので、一度変形してしまっても軌道修正できる。手伝いをしてもらってほめる時は、「助かったよ」と声をかけると、「自分が役に立っている」と感じ、いい意味で脳に響く
   普段の会話では、子どもの言葉を優しく繰り返すとよい。例えば「きれいなお花を描いたよ」と言われたら、「本当だね、きれいなお花を描いたんだね」と返す。子どもの言葉をしっかり繰り返すと、子供は「親が自分の話を理解している」と感じ、積極的に会話するようになる脳の最高司令部「前頭前野」が正常化するという研究結果もある。

【感想】
   残念ながら私はこの番組を見る事が出来ませんでしたが、実に興味深く、しかも子供の脳の発達に悪影響を及ぼすという深刻な問題です。
   上記に挙げられた各注意事項とそれぞれの影響の内容について整理してみましょう。

第1位「感情に任せた暴言
              ⇨音が聞こえなくなる「心因性難聴」
第2位「兄弟友達と比較する
              ⇨将来アルコール依存や薬物中毒の危険
第3位「(親が風呂上がりに裸でウロウロ
               ⇨記憶力、認識能力が低下
第4位「長時間スマートフォンを触らせる
               ⇨親とのコミュニケーションが極減
               ⇨集団行動ができなくなる
第5位「過干渉
               ⇨いつもビクビクした大人になる
番外編「(子供の前での夫婦喧嘩
               ⇨語い(使える言葉)や理解力が低下

   確かに、体罰等の暴力行為はありません。しかし、「え?そんな事で脳が悪影響を受けるの?」と感じる項目があったのではないでしょうか?
   私が特に関心があったのは、スマホによる弊害です。子供が長時間スマホを使っていると、「親とのコミュニケーションが極端に減る」「集団行動ができなくなってしまう」との事です。確かに長時間スマホを使っていれば、物理的に親とのコミュニケーションが減る事は分かります。しかし、「集団行動ができなくなってしまう」のは何故でしょう?これにはおそらく「愛着(愛の絆)」が関係していると思われます。特に母親とのコミュニケーションが減ると、「愛着7」のような「愛着」を形成する為の愛情行為も減ります。母子の「愛着」が形成されないと、子供は心の「安全基地」を失うので、初めて事柄に対して働きかける“探索行動”を安心してできなくなります。すると、成長してから人間関係を避けるタイプの人間になると精神科医の岡田氏は指摘しています。そういう意味での「集団行動ができない」という事ではないかと思われます。

   さて、親による何気ない言動が、どんな悪影響を及ぼすかは分かりました。問題は「ではどうすればいいか?」という事です。
   最も簡単なのは、「(親が)風呂上がりに裸でウロウロ」でしょう。脳への悪影響がある事さえ分かれば意識次第で今日からでも止めることができます。
   また、「兄弟・友達と比較する」と「(子供の前での)夫婦喧嘩」も同様でしょうか?ついやってしまいそうですが、やはり意識次第で直せます。特に、「夫婦喧嘩は子どもに見られないようにメールなどを使う」というのは「目からウロコ」的な発想です。感情で言い合うよりも、文字に直す過程で気持ちも落ち着いてくるかも知れません。
   難しいのは、「感情に任せた暴言」と「過干渉」です。親御さんとて人間です。時には怒りや干渉の感情が湧いてくるものです。これを直すには余程の意識と覚悟が必要になるでしょう。しかし、先日紹介した「自立4支援(子供に任せて見守り諭して褒める)」が意識できていれば十分改善可能です。「感情に任せた暴言」は「諭す言い方」によって、また「過干渉」は「子供に任せて見守る」によって対応できます。この「自立4支援」は、“子供の自立”に繋がるばかりでなく、愛着不全をも防ぐ”ので、子供は一生に渡って安定した生活を送ることができるようになる“一石二鳥”とも言えるサポート法です。更に、今回の“脳に与える影響”も含めれば、“一石三鳥”位の効果が見込まれるものなので、親御さんが“覚悟”を決めて取り組む価値が十分にあるものです。

   これまでは、「こんなに厳しく叱っているのに何故行動が直らないのだろう?」と不思議に感じていた事も、様々な研究の進歩によって少しずつ明らかになっていくようです。