【今回の記事】

【記事の概要】

やること、やったの?」「どんどんやらなきゃダメでしょ」「やることやってから遊びなさい!今日もまたこのような言葉があちこちの家庭で発せられています。本当に、子どもたちに「やるべきこと」をやらせるにはどうしたらいいのでしょうか?口で叱っているだけでは効果がありません。そこで、今回は「やることカード」を紹介します。

①千葉県のSさんは、息子のK君が幼稚園から帰宅したらすぐに4つのことをさせたいと考えていました。1.うがい、2.手洗い、3.幼稚園帽子をフックに掛ける、4.おはしセットを流しに持っていく、の4つです。でも、いくら言ってもやってくれません。それで、ガミガミ叱っていたのですが、あるとき私が書いたもの(上記記事サイト参照)を読んで、カード式という方法をやってみることにしました。まず、息子が4つの行動を実行している姿を写真に撮って、それをはがき大にプリントアウトしました。そして、その4枚の写真をやるべき順番にA3の大きさのホワイトボードに貼って玄関に置きましたそして、「帰ってきたらこの4枚の『やることカード(写真)』を見て、この順番でやってねやったら裏返して貼ってね」と言いました。裏返すとSさん自作の「にっこり花丸ピース」というキャラクターの絵が見られます。写真のおかげでやる事が明確になりましたし、やる順番もはっきりしました。しかも、やっているのは自分ですから、「やれないはずはない」という気にもなります。たったこれだけの工夫で、ガミガミ叱らなくてもやれるようになりました。なお、キャラクターの絵ははがきより少し小さい付箋紙に描いて、写真の裏に貼ってあります。毎日同じ絵では子どもが飽きてしまいますので、違う絵がベストですが、毎日、4枚とも描きかえるのは面倒です。なので、4枚のうち1枚ずつ描きかえるそうですが、1分もかからないそうです。

   あと2つ、実践例を紹介します。

②Mさんの家ではA3のホワイトボードを3つ用意して、帰宅後の3つの時間帯の行動をそれぞれ「見える化」しています。の「やることカード」は「洗顔・手洗い」「うがいしてから水を飲む」「食べたら歯みがき」「うんち」「着がえ」「忘れ物チェック」の6枚です。写真ではなく、マグネットシートに文字で書いてあります。そして、ホワイトボードの真ん中にビニールテープを縦に1本貼ってあります。ホワイトボードの左側に6枚のやることカードを貼り、やったら右側に移します。やってないのは左側に残りますので、次にやるべきこと一目瞭然です。次の日は、やることカードを右側から左側に移します。また、帰宅後の「やることカード」は「プリントを出す」「宿題の準備」「宿題」「明日の仕度」「フルートの練習」「○○○○(通信教材)」の5枚。の「やることカード」は「片づけ」「予定帳を見せる」「本読みカードをランドセルに入れる」「明日の服を用意」「目覚まし時計をオンにする」の5枚です。

③次は東京都のWさんです。Wさんには小学2年生のY太郎君という男の子がいます。Wさんのやり方はとてもシンプルです。

1.90cm×60cmのホワイトボードを縦に置き、真ん中にビニールテープを貼り、左と右に分ける                                                     2.「やることカード」は横書きで、帰宅後から寝るまでにやるべきことを書く                  3.「やることカード」をホワイトボードの左側に上からやる順番に貼る                           4.やったらカードを右に移す                       5.次の日は右から左に移す

   Wさんは、小学校に入学したころからガミガミ叱ることが増えました。でも、このカードでそれが減ったそうです。

【感想】
   この方法も、前回お話しした自閉症スペクトラム障害の“視覚優位(目で見て理解する事が得意)”に対応したユニバーサルデザインの考え方に基づく支援方法です。「あと何をやればいいのか?」が見た目で分かり、子供が自ら行動を起こすようになる実に効果的なサポート方法です。

   実践する場合には、無理は禁物で、できるだけ持続可能な方法が好ましいです。その意味で①の方法は、裏の絵を時々書き換えなければいけないので少し手間がかかります。
   それに対して②と③は「やることカード」を反対側に移すだけなので、①よりも簡単に実践できると思います。しかも、やった事からカードが移動するので、終わった事とまだの事の違いが、カードの位置ではっきり分かりますし、まだのカードがどんどん減っていく事で子供の意欲化が図られます。
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   しかし②は、やる場面が3つもあるので、初めて取り組む場合には、③のように、1番頑張ってほしい場面に限定して取り組むのが好ましいと思います。その場面ができるようになったら、次の場面へと取り組ませるようにするといいと思います。

   この方法も子供の頑張りが親にも視覚的に分かるものです。ぜひ褒めて、子供の自己肯定感と親子の愛着愛の絆)を育んで欲しいものです。極端な言い方をすれば、子供を笑顔で褒めて親子の「愛着」を確かなものにする為に、今回の「やることカード」のような成功体験を生む環境の工夫があると言っても過言では無いほど、成人後も子供の人格が不安定になる現在の「脱愛着化」社会では、子供を褒める愛情行為は重要なものなのです。
   なお、褒める時は、やることが全て終わった時だけでなく、たとえ一つの事だけでもやり終わったものを見つけた時にも、「また一つ終わったね!」と、できる範囲でその度に褒めてあげると、子供の意欲が増します。