【今回の記事】

【記事の概要】
   赤ちゃんが生まれた瞬間から、愛おしさ心配の気持ちがセットでついてまわる育児。「心配で」と言いながら、ついつい手を出し続けてしまい気が付くと「あれ? もしかして過保護だったかな?」なんて思うことありませんか?
   今回「過保護なママ」に寄せられたママたちの声を見て、驚くのか、ホッとするのか、ドキドキするのか…、あなたはどれですか?

まわりもビックリ⁉ な過保護ママたち
・『年中くらいの子を毎日車から降ろすとき抱っこして園の中の教室まで抱っこ』
・『スポ少の練習であせもが出たらかわいそうという理由で付きっきりで子どもの汗をふいてる人がいた』
・『小学校6年生になっても、焼き魚を食べるとき全部ほぐして骨が混ざっていないかチェックしてから渡してたお母さんがいた』
・『子どもがスマホを忘れたとき、子どもに代わってメールやLINEに返信するっていう親が本当にいた。電話にも出てたらしい』
・『旦那の従兄の奥さん。危ないからって理由で常に抱っこ。家の中でも抱っこ移動。だから2歳になっても自分から歩こうとしない。2歳でハイハイ。周りに言われて渋々歩く練習始めたけどヘルメット装着、膝にはサポーター。ちょっと泣いただけで怖かったね~止めようね~って抱っこ』
・『子どもの友達のお母さんがすごい過保護。まず、危ないから木登りやジャングルジムはNG。足が遅くて可哀想だから鬼ごっこなどの走る遊びはNG。子ども同士のイザコザで自分の子が手を出しても、「でも相手の子は●●って言ったりうちの子より多く叩いたからうちの子は悪くない」って言い張ったり、子どもが連絡帳を書き忘れると深夜朝方の時間でもクラスメイトのお母さんに電話したり。現在小5でこれだから見事に孤立してる
心配? 愛情? それとも過保護になるの?
   その中で気になった「これも過保護?」の声。留守番、送迎、自転車など「危ない」と感じるラインは、それぞれのようですよ。
・『小5と小4なのに怖くて1時間以上の留守番させられない。なのでパートは旦那がいる間の夜勤専門にしてる。これが過保護なのか違うのか分からないけど(笑)』
・『子どもの帰りが10分でも遅いと、心配で近くまで帰って来てるか見に行ってしまう』
・『7歳(小2)の男の子だけど、坂が多い区で、車の交通量も多くて、人も多いから一人で自転車には絶対乗らせない。よく男の子でスピード出してる子を見かける。まだまだ怖い』
・『送り迎えに関しては過保護はないと思うな。私は中学生の子どもの塾は必ず迎えに行きます(自転車3分)。何かあってからでは遅いから』
大人になっても“過保護”はつづくよどこまでも……
   そう、”過保護”で育ててしまって一番怖いのが大人になったとき。こうならないためにも……の良い(?)見本がここにありました!
・『友達の家に泊まりに行ったときの朝ごはんで、パンに何にも塗ってなかったときに「ママ、パンにジャムが塗ってないんだけど!」って友達がキレてた。お母さんも「ごめんねー」って言ってジャム塗ってあげてた。ジャムくらい自分で塗れよって思った。ちなみに25才のときの話
・『実母の息子(私の実兄37歳独身アルバイト店員)への過保護ぶりが気持ち悪い。ご飯、お弁当、洗濯、部屋の掃除、ぜーんぶやってあげる。私が子どもを連れて帰省すると、“孫らぶ”の母を見てやきもち妬きまくる実兄もこれまた気持ち悪い』
・『旦那箸が出てないとか、コロッケ冷たいと言い、急いで義母が箸出したり、レンジで温めたりする。ぞわっとする』
・『バイトの求人で「交通費支給」とあって「タクシー代じゃないのか!」って怒鳴り込んだ友人の親。携帯代や年金など親が払ってる。ちなみに友人は独身無職40歳ね……』

【感想】
   時代は変わり、今では様々な「過保護」があるようですね。
   そもそも、「過保護」は、母親の持つ「母性」が誤った方向に働いた故に起きる事態だと思います。「母性」の最大の役目は「子供の受容」ですが、本来ならば、2、3歳の頃に「母子分離」という課題を達成しなければなりません。生物学的には、その時に、「父性」を持った父親という別人格の人間が協力して「母子分離」を果たすべきなのですが、父親が仕事第一で家庭のことに無関心だったり、離婚していたりする場合には、子供が母親から離れられない母子融合」に陥る場合があり、それが過保護の一つのきっかけになるのです(詳しくは、「愛着の話 No.8 〜二、三歳で高まる母子分離不安〜」参照)。

  ”過保護”で育ててしまった場合に怖いのが、次の二つです。
現在の学級での状況
大人になった時の状況

「①現在の学級での状況」についてですが、記事中に「現在小5でこれだから見事に(学級の中で)孤立してる」とあるように、友達から相手をされなくなったり、いじめにあったりする危険があります。家では、全てを自分の代わりにやってくれる母親がいるから不自由なく過ごせますが、その母親がいない学校では、いつも母親にやってもらっていて自分で意思決定する習慣が身に付いていない為に、全ての行動が友達より遅れます周りの子供たちはその様子を見て「とろい奴」と捉えます。そして、相手にしなくなったり、いじめに走ったりするのです。
「②大人になった時の状況」についてですが、社会人としての自立ができず職につけない、更に、“セルフネグレクト(自己放任)”に陥り生活そのものが崩壊してしまう恐れさえあります。

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   さて、「母親は子供にとっての『安全基地』」とはうまく表現したもので、「基地」という“建造物”であるが故に、基本的に自分からは動かないものなのです。「安全基地」が子供にとって安心感の元になるのは、「『もし何か困った事があったら、すぐにお母さんという「安全基地」に(自分が)戻ればいい』ということを子どもが分かっている」からであり、あくまで、何か困った時に「安全基地に戻ろう」と子供自らが判断して戻る場所なのです。それに反して、子供が困った時に自動的に「安全基地」が移動して子供を保護していると、子供は自分から「SOS」を出す力さえ身に付ける事が出来なくなり、誰かが助けてくれるまで待っていることしか出来なくなってしまうのです(「「過保護」は大学まで押し寄せていた 〜自分の不安を母親に解決してもらう大学生〜」参照)。
   ただし、ある場合のみ、安全基地が瞬時に移動して子供を保護する場合があります。それは、“子供の命”に関わる時です。子供の命に危険が迫っている時に、「過保護かそうでないか?」等と言っている暇などありません。力ずくでも、子供をその状況から救い出さなければなりません。そして、その後に、子供の状況判断の未熟さを指導すればいいのです。
   また、子供が出来ないない場面を見つけた時に、これ以上待っていると他者に迷惑がかかるというような場面も、親の方から援助すべきだと思います。他者に迷惑をかけてまで自分の子供の養育を優先する行為は「自己愛(自分第一主義)的行為です
   つまり、過保護かそうでないかの基準は、
・「子どもの命を守る行為かどうか
・「他人への迷惑を考えている行為かどうか
と言えると思います。その意味で、上記記事中の「◯心配?愛情?それとも過保護になるの?」で紹介されている行為は過保護とは言えないのではないでしょうか?なお、「小5と小4の子供に1時間以上の留守番をさせられない」という事例は、1時間までの“留守番経験”はさせているということですし、“小学生”という未成熟な発達段階を考えれば何が起きても不思議は無いですから、致し方ないところではないでしょうか。

   つまり、我が子が命を失わず、かつ自立した人間に成長するためには、「自立3支援」の考え方に従い、子供に任せて、親はその様子を見守り、子供が失敗した時には、そのことを代わりにやってあげるのではなく、失敗しない“やり方”を優しく教えてあげることが大切だと思います(「「魚を与えるのではなく、魚の釣り(方)を教えよ!」 〜過保護からの脱却、自立への一歩〜」参照)。

   繰り返しになりますが、母親という「安全“基地”」は、基本的に自分からは動かず、子供の様子を見守っているものなのです。