【今回の記事】

【記事の概要】
①お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志が、3日放送のフジテレビ「ワイドナショー」に出演。ジャズトランペット奏者の日野皓正が中学生によるジャズコンサートで教え子へ「往復ビンタ」した問題についてコメントした。
   騒動について聞かれた松本は「割とシンプルで、この中学生の彼が叩かれたことを『クソッ』と思ったとしたら指導として間違えてたんじゃないですか。でも本当に反省したのであれば指導として正しかったんじゃないかと思う。結局、中学生の本当の心の中が答えだと思う」とコメント。ただ、「我々の世代は凄い体罰を受けたけど、今の時代はあり得ないと言うけど、なぜあり得ないのか、明確な理由を誰も言ってくれない。なぜ今ダメで、昔は良かったのか。明確な理由が分からない」と首をひねった。「別に体罰を受けて育った僕らが変な大人になっているわけじゃない。何なら普通の若者よりも常識があったりする。体罰を受けて育った僕らは失敗作みたいに言われているようで、どうも納得いかない」と体罰を巡る昨今の風潮に不満を吐露した。
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ジャズトランペット奏者の日野皓正(74)が、ジャズコンサート中にドラムを演奏していた男子中学生の髪をつかんで往復ビンタをした問題で、2日放送されたテレビ朝日系「サタデーステーション」(土曜・後8時54分)で当事者の中学生と、その父親がインタービューに答え“ビンタ騒動”には誤解があると訴えかけた。
 中学生の父親は「多くの人がこの件に関して、誤解をしていると思うので…それを一番明らかにできるのは、当事者である息子とその父親」と話し、「すべての映像を見てもらったうえで直接説明します」とした上でインタービューに答えた。
 中学生は昨年のコンサートから参加していたそうで「去年も(バンドに)入るなり、日野さんに怒られているみたいで、(今回も)またやらかしたなと思って、(動画を)見たら、やっぱり悪いじゃんと思って」と父親は話した

【感想】
   子供は「体罰がなぜいけないか?」という事までは理解していません。子供が「悪いことをしたんだから体罰は仕方がない」と学ぶかどうか、その他、子供が学ぶ文化や価値観はその多くは大人の教えが大きく影響しています
   さて、この父親は、「多くの人がこの件に関して、誤解をしている」「動画を見たら、やっぱり悪いじゃん」と説明しています。これらの発言から、この父親が「お前が悪いからビンタを受けるのは当然だ」と考えている事が分かります。別の報道によれば、少年は「自分が悪かった」と反省しているとのことですが、それはお前が悪いからビンタを受けるのは当然だ」と考えている父親から教わった彼の価値観なのです。

   仮に、“愛の鞭”なら体罰は許されるということになった時に、“愛の鞭”と虐待とが混在せずにきちんと使い分けができるのでしょうか?単なる“親の怒り”という“感情”で体罰を使うという状況は生まれないのでしょうか?昨今の虐待に関するニュースを見る限り、親も人間ですからそういう事態は多分に起きると考えざるを得ません。
   そういう環境で子供が育つとどうなるかについて、精神科医の岡田氏は自身の著書でおよそ次のように指摘しています。(「愛着の話No.24〜子供の愛着パターンのタイプとその原因②〜」より)
「『混乱型(子供の愛着パターンの1つ)』は、『回避型』と『抵抗・両価型』が入り混じった、一貫性のない無秩序な行動パターンを示すのが特徴である。全く無反応かと思うと、激しく泣いたり怒りを表したりする。また、肩を丸めるなど親からの攻撃を恐れているような反応を見せたり、逆に親を突然叩いたりすることもある。混乱型』は虐待を受けている子供や精神状態がひどく不安定な親の子供に見られやすい。『安全基地』が逆に危険な場所となることで、混乱を招いていると考えられる。親の(虐待という)行動が予測不可能であることが子供の行動を無秩序なものにしているのである。『混乱型』の子供では、その後『境界線パーソナリティー障害(神経症と統合失調症という2つの心の病気の境目にある症状。人格障害。)』になるリスクが高いとされる。
   更に岡田氏は、その子供が大人になった時にどんな「愛着スタイル(人格)」を持つ人間になるかについても指摘しています。ここでは長くなるので具体的な紹介はしませんが、「愛着の話No.30〜大人の愛着スタイル④恐れ・回避型愛着スタイル〜」をご参照ください。

   記事①で紹介されている松本氏は、「別に体罰を受けて育った僕らが変な大人になっているわけじゃない」と述べていますが、その発言は、先述の岡田氏のような精神科医が持っている科学的なデータを基にしたものではなく、彼の主観によるものだと思います。
   医学を始めとした科学は日々進歩を遂げています。医学がそれほど進歩していなかった昔では指摘されなかったことが、医学の進歩した現代では悪影響があると判明している事は数多くあるでしょう。その現代において、現在のわが国の愛着研究の第一人者である精神科医の岡田氏がそのように述べているのです。
   そんな現代だからこそ、岡田氏の「親の養育の仕方が愛着にどんな影響を及ぼすか」という指摘を世の中の人達に理解してもらう必要があるのだと思います。もちろん、乳幼児期の養育が子供の一生に影響を与えることも含めて。