【今回の記事】

【記事の概要】
   女子800メートルリレーで日本新記録が出た。1番手の五十嵐から池江、青木智、高野の全員が1分57秒台と安定したタイムをマークし、高速水着時代の2009年につくられた記録を2秒近く更新。結果は5位だったが、メンバーは大喜びだった。
    自由形は17歳の池江ら頼もしい若手が増え、底上げができつつある。青木智は「2年前からリレーのメンバーだったのに、なかなか記録が更新できなかった。ようやく出せてうれしい」と、言葉に実感を込めた。
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【感想】
   世界水泳女子800メートルリレー。日本は5位で残念ながら表彰台に上ることができませんでした。しかしリレーのメンバーは、この結果に大喜びだったそうです。大会に出る以上は誰もが表彰台に上ることを目標に競技しているはずですが、なぜでしょうか?
   それは、他の国のことはさておいて、自分たち日本チームの中の自己ベストの記録(日本新記録)が出たからです。このように、相手と比べることなく、あくまで自分(達)の記録(結果や出来栄え)だけに注目してその伸びを評価する考え方を「個人内評価」と言います。

   私は以前以下のような記事を投稿しています。
この中で私は次のように述べています。
よく保護者の方から『子供のほめ方がわからない』というお話を聞くことがあります。言葉を変えて言えば『子供の良いところが見つからない』ということなのかもしれません。(中略)この悩みを解決するのが『個人内評価』です。その中でも特に有効な評価方法が『縦断的評価』です。これは“その個人の以前の状態と比べてどうなったか”を見るものです。他人と比べる必要はなく、あくまで、以前の個人と比べるので、どんな子どもでもほめるネタを見つけることができます。例えば、『漢字テストの点数が前は30点だったのに、今回は50点になったね!』『前は野菜を全然食べなかったけど、少しだけ食べれるようになったね!』などというほめ方ができます。
   ちなみに、「隣の〇〇ちゃんはもっといい点数を取ってるわよ!」という評価を「相対(他者と比べる)評価」、「90点は取らなきゃとてもじゃないけど褒めれない!」という評価を「絶対(基準に照らし合わせる)評価」といい、学校では取り入れられている評価ですが、「子供を褒める」という場合にはどちらもなじまない考え方です。

   話は世界水泳に戻りますが、もしかしたら日本チームは第一目標として日本記録の更新を掲げていたかもしれません。大会となると、誰でも自分と相手とを比べてしまい、相手が強そうに見える事が往々にしてあります。そうすると緊張感がわき無駄な力が入って納得のいくパフォーマンスができないことが多いものです。しかし、初めから自分の最高の記録、自己ベストを目指して競技に参加する方が自分らしいパフォーマンスを発揮できるように思います。
   ですから私は、テレビで様々な大会を見るときに、いつも競技者がどんな気持ちで本番に向かうかインタビューされたときの回答に注目しています。その中でフィギアスケートのあの羽生結弦選手は「自分らしい演技をしたい」「自分にできる精一杯の演技をしたい」というコメントをすることが多いと感じています。しかも、少なくとも羽生選手は、いつも自分の直前の演技者の滑りを見ていません。スケートリンクに背を向けてヘッドフォンで音楽を聴いて集中を高めているのです。これこそが「他人と比べるのではない。自分との戦いなのだ!」と認識している証拠ではないでしょうか?

   補足になりますが先ほど「縦断的評価」と言う評価方法を紹介しましたが、「断的評価」があれば当然「断的評価」という評価方法もあります。これも個人内評価の1つです。これは一言で言えば、1人の個人の中にある様々な個性の中で特に優れているものを評価しようとする考え方です。
   私は以前特別支援学級の担任を持っていましたが、ある年、どうしても自分に自信が持てなくていつもモジモジしている5年生の男の子(知的障害児)がいました。私はその子と出会ってからというもの、友達に「だいじょうぶ?」と時々声をかける事があったその男の子に対して、いつも「〇〇君の良いところは、友達に優しいところだね」と褒めるようにしました。するとその子の生活態度は一変しました。友達のことを気にかける頻度が急激に増え、立ち振る舞いもどこか落ち着きが出てきたのです。そしてある時その子は誇らしげにこう言っていました。「僕の良いところは優しいところなんだ」と!