(前回の続きです)
   さて、津久井やまゆり園殺傷事件を起こした植松容疑者は殺害を思い立ったきっかけとして、ニュースで報じられた大統領就任前のトランプ氏の演説や、過激派組織「イスラム国」(IS)の活動を挙げたそうです。「世界には不幸な人たちがたくさんいる」としたトランプ氏の言葉に、「真実を話していると強く思いました」と手紙での取材に答えていたそうです。
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   実は、トランプ大統領やISの影響を強く受けた植松容疑者のように「有名な悪人や犯罪者にあこがれる」というのは、愛着障害の症状の一つなのですが、これは単なる偶然でしょうか?

   私は以前次のような記事を投稿しています。
その中で私は次のように述べています。
「植松容疑者は精神鑑定の結果、自分を特別な存在と思い込む『自己愛性パーソナリティー障害などと診断されていたのです。この『自己愛性パーソナリティー障害』は、オーストリアの精神科医コフートによれば、『幼い未熟な自己愛を満たす『共感』を得られなかったために、自己愛の成熟が阻まれたことに原因がある』とされています。「共感」とは、(例えば)自分のしたことを見てほしくて、誇らしげに振り返る子どもに、『すごい!』と称賛を送ったり、子どもの夢物語を聞いて受け止めたりするようなことだそうです。」
   正に愛着形成のための愛情行為である「愛着7」の中の「小さなことから褒める」「子供の話をうなずきながら聴く(共感する」が欠落していた事が分かります。

   さらにNHKの報道によれば、精神鑑定の結果、この事件は彼の中にあった強い劣等感が引き金になり、注目を浴びるために起こした事件であると結論づけられたそうです。この「強い劣等感」は不安定な愛着スタイル、特に「不安型」愛着スタイルの現れです。
   幼少の頃から、出来た時には褒められても出来なかった時に必要以上に厳しく叱られる経験を繰り返していると、いつも親の顔色ばかり伺ってビクビクし、大人になっても他人の評価を絶えず気にしながら生活する自己肯定感低い人間になってしまう事が多いのです。また、「不安型」の人は、不満苦痛といったネガティブなことを、つい口にしてしまう傾向がみられます。その背後には、相手が自分のことをおろそかにしているという被害妄想的な面があります。正に「自己愛性パーソナリティー障害」と診断された愛着不全状態を物語っています。

   しかし、精神科医の岡田氏によれば、一般に愛着障害はその出現率は約3割にも及ぶとされており、今やどの家庭でも起こり得る問題と指摘されています。岡田氏は愛着障害を「愛着スペクトラム障害」とも呼び、症状の軽いものから重いものまで連続(スペクトラム性)しているとしています。つまり、程度の差を誤ると我が子が「自己愛性パーソナリティ障害」のような重篤な愛着障害に陥ることも十分考えられるのです。
   ちなみに、先の「有名な悪人や犯罪者にあこがれる」と同様に、「小動物の殺傷行為」も愛着障害の症状です。1997年に起こった神戸連続児童殺傷事件を起こした少年も、乳幼児期の親による養育の不足親の厳しすぎる躾のために親への愛着崩壊し、ナメクジやカエルを解剖する遊びから始まり、その対象が次第に鳩や猫となり、とうとう「○○君なら僕より小さいので殺せる」との判断から自分より年下の小学生を殺害するに至ったのです。つまり、ニュースで度々報道されている小動物の殺傷事例は、凶悪犯罪の予備軍とも考えられるのです。

   改めて、「愛着7」のような愛着形成のための愛情行為の大切さを痛感せざるを得ません。