【今回の記事】

【記事の概要】
■子どもに罵声「私は『このハゲーー!! 』の豊田議員と同じ?」
   男性秘書への暴言暴行で、自民党を離党した豊田真由子衆院議員。「ハゲーーー」「違うだろーーーー!」。ドカドカッ(蹴る音)『週刊新潮』(6月29日号)が記事とともに公開した音声を聞いて、罵声の風圧(?)の強さに驚いた人は多いだろう。特に男性は、「あれはひどい」「怖すぎる」とおびえているかもしれない。
 私は男性とは違う意味でおびえた。自分だって子どもに怒っている時……もっと正直にいえば、キレてしまっている時、程度の差はあるにしろ(と願いたい)、似たようなものかもしれない、と。
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 バイオリニストの高嶋ちさ子さんは、母親から「次はあなたよ」と指摘されたと自身のブログに書いている。ふだんから「キレキャラ」で鳴らしている高嶋さんだから、「巻き込み事故」としながらも、「人のふり見て、我がふり直そう」と自戒した。高嶋さんだけでなく、子どもを怒りすぎてしまったと悔いたことのある母親なら、豊田議員の言動はさすがに行き過ぎと思ったとしても、わが身を振り返って、一抹の気まずさ、申し訳なさを感じた人もいるのではないだろうか。
(精神科医の片田珠美氏は次のように言う。)
「たとえば、母親が子どもに必要以上にキレてしまうのは、(子供が)自分の思い通りにならないことに対するいら立ちです。子どもを思い通りにしたいと考える深層心理には強すぎる母子一体感があります
 母子一体感とは、文字通り子どもと自分が一心同体のように感じる心理だ。子どもがまだ小さく、親の世話を必要としている時期に、母子がこのような心理状態になるのは、ある意味、自然なことである。しかし、その度が過ぎると、子どもにも意思があるということを忘れてしまう
「特に、高学歴でバリバリのキャリアウーマンのようなお母さんは、子どもができない理由がわかりません。子どもの失敗が自分の経歴に傷をつけるように感じ、怒ってしまう。逆に劣等感があって、子どもで挽回したいと思っている親は、子どもへの要求が過度になりがちです。もし、心当たりがあったら、怒りの原因は強すぎる母子一体感にある可能性が高い。まずは、『子どもは自分とは別人格』と認めることが第一歩。こう思えるようになるだけで、かなり冷静になれるはずです」

【感想】
   記事中の「子どもを思い通りにしたいと考える要因となっている強すぎる母子一体感」とは、2、3歳頃に達成されるはずの母子分離」がなされず「母子融合」の状態のまま現在に至っているケースだと考えられます。本来「父性」の持ち主である父親が母子を分離する手助けをする役割を担っているのですが、現実には父親が子育てに関わっていない家庭が多いように思います。その意味で、強すぎる母子一体感」つまり、「子供は自分の一部」という感覚を抱いている母親は多くいらっしゃると思われます。

   さて、記事中の片田氏によると、「母親が子どもに必要以上にキレてしまうのは、(子供が自分の思い通りにならないことに対するいら立ち」「子どもを思い通りにしたいと考える深層心理」とされています。つまり、母親がキレるのは子供がうまく出来ないからということになります。
   では、子供がうまく出来ないことが多いのは何故でしょうか?私の経験上、子供がうまく出来ない事の要因は、主に以下のことが考えられます。
やり方が具体的に分からないから
課題がその子にとって難しすぎるから
親の“ピリピリオーラ”のために緊張しているから

   以下にそれぞれ詳しく見ていきましょう。
やり方が具体的に分からないから
   例えば片付けがうまくできない子供に「もっとちゃんと片付けなさい!」と言っても、子供はやり方が分かりません。大人は度々「ちゃんと」という言葉を使います。大人は頭の中で「要らないものは捨てる」「同じ仲間のものは一緒にする」などという事を無意識のうちに分かっています。そういう事をイメージして「ちゃんと」という言葉を発します。しかし、子供には「ちゃんと」という言葉の具体的な内容は当然伝わりません。そこで、片田氏が言う通り「子供は自分とは別の人格や考え方を持っている」と子供の存在を尊重して、子供のために、「“ちゃんと”で子供は分かるかしら?」「“どうする”ことが“ちゃんとする”なの?」と考えて、子供にとって分かりやすい表現を考える必要があるのです。

課題がその子にとって難しすぎるから
   例えば先の“片付け”を例にとると、まだ片付けが上手にできない子供に対して、「要らないものは捨てる」更に「同じ仲間のものは一緒にする」という2つのことを一度に要求してもそれは難度が高すぎます。そのように課題が子供にとって難しすぎる時はステップをいくつかに区切って1つずつ取り組ませる必要があります。そこでまず「要らないものは捨てる」という課題だけに取り組ませます。「お母さん見てるから要らないと思うものをゴミ箱に捨ててごらん」と言って取り組ませます。これでも動けないときは、更にステップを刻みます。クシャクシャになった学校からのお便りを取り、「これは要る?要らない?」と聞いて答えさせ要らないものであればゴミ箱に捨てさせます。更に短くなった鉛筆を取り同じように聞きます。その後に「こんな風に一つ一つやってごらん」と言うと取り組むことができるようになります。その時大切なことは横で見ているお母さんが子供が一つ仕分けができるたびに「できたね」等と褒めてあげることです。それができたらしめたものです。「じゃあ次は同じ仲間だと思うものを一緒にしてみよう」と促すと、褒められていい気持ちになっている子供は必ず誘いにのってきます。

親のピリピリオーラのために緊張しているから
   さて②での「お母さん見てるから要らないと思うものをゴミ箱に捨ててごらん」という時に、
「お母さん見てるから要らないと思うものをゴミ箱に捨ててごらん😊」と笑顔で“見守っている”場合
「お母さん見てるから要らないと思うものをゴミ箱に捨ててごらん😡」と眉間にしわを寄せて“見張っている”場合とでは、子供の気持ちは大分違ってくるでしょう。
  “見守っている”場合は子供はお母さんの優しさに安心感を覚え伸び伸びと課題に取り組みますが、“見張っている”場合は「うまくできないと怒られそう」という意識が働き緊張感ガチガチになって出来るものも出来なくなってしまうかもしれません。お母さんの言動は大切です。
   因みに、子供に安心感を与えるために開発された支援法が「セロトニン5」です。更に、子供が親に語りかけてくる場合には、「5」に「子供の話に共感し(頷き)ながら聞く」を加えた「セロトニン6」が有効です。

   子供にキレてしまうかどうか、つまり子供がうまく出来るかどうかは“親の働きかけ方”で変わってくるのです。