次に「親の油断から生まれる無関心」についてです。
 例えば、親がパチンコなどの遊技場へ行くために、子どもを一人家に残しておくといったネグレクト(育児放棄)は言うまでもありませんが、一般的な家庭でも、親が何かしながら養育に当たるという場面が考えられます。今は、スマフォでのメールやラインやゲーム、テレビ等、親にとっても刺激的な情報があふれています。例えば、せっかく授乳していても、子どもと目を合わせずに、片手でスマフォを操作したりテレビを見たりしていては愛着が形成されにくくなります。愛着を形成するためには「視線」「微笑み」「優しい語りかけ」等いくつかの方法(「愛着7」)があります。そのことを忘れ、「ながら子育て」をしていると、子どもに視線を送ることができないために、子どもは親からの関心を受け止めることができず、将来、「回避型」の愛着スタイルになりやすいと考えます。
   更に、子どもにテレビを見させておいて親が別のことをしているような場合にも油断が生まれます。岡田氏は、このような場合、「応答性」が失われると指摘しています。つまり、親と子が直接触れ合う場面では、子どもの反応に応じて養育者の表情や対応が変化するため、愛着が育まれやすいのですが、一方的に映像が伝達されるテレビ画面では、子どもの反応とは無関係に画面の登場人物が行動するため、愛着が形成されにくいのです。
   脳の研究をしている北海道大学の澤口俊之先生や東北大学の川島隆太先生が口をそろえて警告するのは、「幼児期にテレビをベビーシッター代わりにすると、脳の前頭前野の発育に問題が起こる」ということです。子どもが画面を見ている時の脳を観察すると、前頭前野はほとんど働いていないそうです。ちなみに、前頭前野は「脳の司令塔」とも呼ばれ、「人の気持ちを推測する働き」「物を覚えるという気持ち」「物事に挑戦する気持ち」「やってはいけないことはしないという気持ち」「辛いことがあっても我慢する気持ち」「ひとつの物事に集中する気持ち」等、人間の成長に欠かせない気持をつかさどる重要な働きをします。しかも、長時間テレビを見続けると、バラバラと変わる画面に慣れてしまい集中力も落ちてしまうとのことです。澤口先生は、近年子どもに注意欠陥多動性障害(ADHD)が多く見られるのも、幼児期からの長時間のテレビ視聴に要因があるのではないかと指摘しています。これは、本来先天性であるはずのADHDですが、この障害は、後天的な養育環境によって症状がさらに悪化する側面が見られるという意味です。
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   また、子どもをテレビに預けっぱなしにしていると、何か赤ちゃんにトラブルあった時に誰も助けてあげる大人がいなくなってしまいます。すると、親の愛をあきらめる「回避型」の愛着不全になり、将来集団社会から回避する人間になってしまう危険性があります。乳児期は「親が子どもに合わせる」必要のある時期です。(次回に続く)