前回から特集している「一般家庭でも子供が愛着障害に陥りやすい落とし穴」。今回は、「愛着を形成する時期における親の不在」についてです。
   親の仕事のために、日中に母と子が離れて暮らしていることが、それだけ母と子の交流の機会を少なくしていることは疑いのない事実ですし、親子が接触できる時間は朝と晩の短い時間に限られます。健全な愛着が形成されるためには、母と子の交流の“量”も重要な条件と考えられていますから、母親が働きに出ている家庭の子どもが経験する母親との交流は量的に足りているかどうかが問題となります。
   また、やはり乳児期のころから保育所など他者に預けられる場合、その状況に順応できず、母親との分離不安を引きずると、母親を過度に求める「抵抗・両価型(不安型)」の愛着パターンになりやすく、朝母親と別れる際に大泣きして抵抗するようになる場合もあります。逆に長時間預けられる状況に適応しすぎると、母親を求めない「回避型」の愛着パターンを示しやすいです。
   岡田氏は、子どもを保育所などに預け母親が子どものもとを離れることについて、次のような警鐘を鳴らしています。
「働くためにやむを得ず保育所を利用している人がいる一方、母親が家事や自分の時間を確保するために、必要以上に保育所を利用しているというケースもある。(中略)しかし、思春期になって問題が表面化し、後から取り戻そうとしても大変な困難を伴う幼いうちに手を抜かずに関わる努力をした方が、はるかに容易であることだけは知っておいてほしい。」(岡田2012
   とは言っても、現実問題として母親も働かなくては生活が成り立ちません。子どもとの交流の量が不足しているのであれば、質の高さで補うことが求められます。その為には、交流の中で子どもに何をしてやる事が大切なのか?それが重要となります。それを明確にしたものが「愛着7」による支援です。その中で最も有効な支援は「②スキンシップ」ですが、その時に母親がスマホの画面ばかりを見ていては質の高い支援にはなりません。「③子供を見て微笑む」も同時に行う必要があります。しかし、たとえ5分間でも毎日子供を見て微笑みながらの抱っこ」を行うことで質の高い養育を行うことができると考えます。
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   その一方で、専業主婦など親が十分な時間子どもの養育につける家庭の場合、一歳半ごろまでに母親との愛着、信頼感に基づく愛の絆を形成した場合でも、その後二、三歳ごろになり、いつまでも過保護に養育してしまうと、子どもは母親を自分の体の一部と勘違いをし、母親と離れることにいつまでも強い抵抗感を示す「母子密着」のような状態になることがあるので注意が必要です。