前回の続きです〜今回は「否定的、支配的な親への復讐」編です)
   しかし、その子どもが中学生くらいになり、体も大人とあまり変わらないくらいに成長すると、それまで「うるさい!」「はやくしなさい!」「何回同じことを言わせるの!」「もうあなたのことなんか知りません!」等と叱られ続けてきたことに対する怒りを今度は逆に親に向かってぶつけ攻撃するようになることもしばしばです。そうなると、もう親の手には負えなくなり、そのうちに親の言うことは聞かなくなります。
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   岡田氏は著書の中で、中学、高校と不登校になり、最後には金属バットで母親を殴り殺した若者の事例を挙げたうえで、次のように述べています。
「今世紀に入って若者たちによる親や教師、時には無関係な他人を傷つけ命を奪うという事件が相次いでいる。(中略)彼らに共通するのは、深い自己否定疎外感を抱え、自分を認めてくれなかった親に対する悲しみや怒り最後に復讐することで晴らそうとしたことである。(中略)(その事例の)母親はいつもそうだった。彼が何かしようとすると、あれこれ口を挟んでやめさせたり、別のことをさせようとしたりした。彼はいつも言われるとおりにしてきた。だが、その結果が今の自分ではないか。それなのに、今は何か言い返すと、母親はすぐにめそめそ泣きだす。そのことも、うっとうしかった。いつしか若者の中にやるせない絶望感と母親に対してずっとおさえてきた怒りがないまぜになって、計画的な殺意を形づくっていったのである。」(岡田2013
   警察庁の調べによると、今や殺人事件のうち五割以上肉親同士による殺人だそうです。家族は、この世の中で最も近くで生活するコミュニティーです。いつも近くにいるだけに、親が日常的に子どもに対して「否定的」「支配的」な言動をとり続けていると、それを受け続ける側はストレスを溜めやすいのです。
   たとえ、ここまでのケースに発展しなくても、中学生になった子どもが親の言うことを聞かなくなり、その結果学校に行きたくないという不満を親にぶつけ、親はどうすることもできなくなり、不登校引きこもりに陥ってしまうというケースは決して少なくないと思います。事実、2010年に内閣府が発表した全国実態調査の結果では、ひきこもりであったり、更にその予備軍であったりする成人の数はおよそ、二百二十万人以上いるとされているのです。