今回は、発達障害の一つである「自閉症スペクトラム(ASD)」の「スペクトラム」という性質についてお話ししたいと思います。

   下記のグラフは、男子と女子合わせて22529人の児童(自閉症スペクトラム=ASDの障害者を含む)についてASD傾向の強さを調査した結果を表したグラフです。

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縦軸は「出現比率」、横軸は「SRS score」を表しています。「SRS(対人応答性尺度)score」とは、子供の自閉傾向についてその保護者に回答してもらった調査の得点であり、得点が高い程子供の自閉症スペクトラム(ASD)傾向が強いことを表しています。但し、いつも紹介している千葉大学の若林氏の調査「『自閉症スペクトラム指数』日本語版について」)とは別物であるため、点数は50点満点ではありません。また黒色の棒は男子を白色は女子を表しています。一般にASDの傾向は男性の方が強いとされているため、SRS得点が小さい(ASD傾向が弱い)うちは女子の方が多く、得点が高くなる程男子の方が多くなっています。

   このASD傾向の強さの移り変わりの様子を見ると、傾向小側から傾向大側に至るまで見事な曲線を描きながら“なだらか”に変化しています。この変化の様子を見る限り、一体どこまでが健常域で、どこからが障害域なのか分かりません。「どこまでが◯色でどこからが◇色かという境目が分からない」という虹の色のように、健常児から障害児まで連続的に変化している様を「スペクトラム(連続性)」と言います。
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「スペクトラム」とは辞書には「分光する様」とありますが、分光することによって区切りが分からなく連続的な変化を見せるというところから「スペクトラム」=「連続性」という意味で捉えるようになったのだと思います。

   ただ、教育現場の都合上、特別な支援が必要な児童を定義しなければならないので、偉い学者様が便宜上境目を作っているのです。因みに先述の若林氏の「自閉症スペクトラム指数」では、50点満点中33点からが障害領域と定義されていますが、傾向の強さは32点の人とほとんど同じですよね。