【今回の記事】

【記事の概要】
   平成27年11月、東京都江戸川区の自宅アパートに同区の高校3年、岩瀬加奈さん=当時(17)=を連れ込み、首を絞めて殺害し現金を奪ったなどとして、強盗殺人と強盗強姦未遂の罪に問われた無職、青木正裕被告(31)の裁判員裁判の初公判が16日、東京地裁で開かれた。同日午後には弁護側の被告人質問が行われ、青木被告は「連続殺人をして、死刑になろうと思っていた」などと述べた。
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   弁護側の被告人質問に対し、青木被告は「人生で友人は1人しかいなかった。彼はアニメやゲームに相当傾斜していたので気が合った」などと話した。また、中学生時代には同級生から無視される“いじめ”を受けたとした。両親が別居して母親と同居したが、母親からは愛されず高校卒業後に専門学校に入学後に独り暮らしを始めたという。
「バイトでは生活費などが足りず、消費者金融から100万円以上の借金があった。高血圧や、それによる心筋梗塞などの病気もあった。自暴自棄になり、自殺か連続殺人をして死刑になろうと考えた」と事件までの経緯を語った。

【感想】
連続殺人をして、死刑になろうと思っていた
初めから死ぬつもりで罪を犯した男性。何が彼をそんな思いに駆り立てたのか?その事が今回の投稿の最大の焦点である。

   友人は人生で1人しかいなかった。その友人もアニメやゲームに傾斜していた気の合う友人であり、その枠を超えた通常の人間関係を作ることは出来なかった。31歳にして無職だった事も、職場の人間関係に馴染めなかったためではないだろうか?
   また、若くして高血圧や、それによる心筋梗塞などの病気を持っていた。高校卒業後に専門学校に入学後に独り暮らしを始めた事が、食生活をはじめとした生活習慣の乱れをもたらしたのではないだろうか?

   これらの事態を招いた最大の要因は、この男性の養育への関心が薄かった母親の存在であると考えられる。
   高校卒業後に息子に独り暮らしをさせ、無収入だったにも関わらず生活の面倒を見なかった事はもちろんであるが、「母親からは愛されなかった」というこの男性は、おそらく乳幼児期にも母親から愛情を伴う養育を受けてこなかったのではないだろうか?つまり、この男性は乳幼児期における母親との間の愛着(愛の絆)の形成に失敗した可能性が高いと考えられる。
   人間社会の中で生きていく能力、それが俗にいう「社会性」であるが、愛着は、更にその中でも最も大切な「人間関係能力」を育む。この力がない子供は、他者との関係を上手く作れず、一生に渡って人間社会の中で苦労して生きていくことになる。正に、「人生で友人は1人しかいなかった」というこの男性の人生を物語っているかのようである。
   更に、彼の養育に対する関心が薄かった母親は、乳幼児期での養育でも余り我が子に手をかけなかったのではないだろうか。そのような養育を受けた子供は、成人後「回避型愛着スタイル」を持つ人間になりやすい。このタイプの人間は距離をおいた対人関係を好みマイペースなため、集団生活に馴染みにくい。そのため、この男性のように友人が極端に少なかったり職場に馴染めなかったりすることが多い。
   私たち人間にとって、「人間関係能力」は、就職し収入を得るうえで必要不可欠なものである。31歳にして無職だった男性が抱えた多額の借金が、彼を自暴自棄に追い込んだ大きな要因と言えるだろう。

   幼少期の母親の養育によって影響を受ける愛着が、このように1人の人間の一生を崩壊させてしまうことにもなるのである。