【今回の記事】
【記事の概要】
(桜美林大学教授で臨床発達心理士である山口創先生による指摘。)
◯女の子の13倍キレやすい男の子
文部科学省が行った平成26年度の調査では、小学生の暴力行為は、7年間で3倍に増えており、“暴力行為の低年齢化”が進んでいることが分かった。とくにキレやすい傾向があるのは男の子のようで、上記の調査でも、公立小学校で暴力行為をした男の子は、女の子の約13倍という結果に上った。
◯脳を発達させるNo.1「触覚(皮膚感覚)」
まだ視覚や聴覚が未発達な赤ちゃん時代にあって、受けた刺激が簡単な経路で直接脳に届く「触覚(皮膚感覚)」が最も早く発達する。
◯「幸せホルモン」を分泌させるスキンシップ
抱っこなどのスキンシップによって、「相手を思いやる」「優しい気持ちになる」などの働きを持つ、別名「幸せホルモン」とも呼ばれる「オキシトシンホルモン」が分泌される。このホルモンの働きがキレない子供を育てる。
◯「オキシトシンホルモン」の働きを鈍らせる男性特有の2つのホルモン
スキンシップによって「オキシトシンホルモン」が分泌される一方で、特に男の子に分泌される「男性ホルモン」と「バソプレシンホルモン(「攻撃ホルモン」)」がオキシトシンホルモンの働きを鈍らせてしまう。
◯オキシトシンの分泌量は、1才6カ月頃までに決まる
最近の研究では、オキシトシンの分泌量や感受性は、1才6カ月ごろまでに決まると言われている。追跡調査をしたところ、0才代にスキンシップをたくさんした子は、余りしなかった子に比べて、10才になったときには心が安定し、キレにくい子に育っている傾向があるという結果が出ている。
◯元々のオキシトシンホルモンを増やす
「男性ホルモン」と「バソプレシンホルモン」がオキシトシンホルモンの働きを抑制してしまうが、元々のオキシトシンホルモンの量を増やすことができれば、抑制された後に残っているオキシトシンホルモンの量は、オキシトシンホルモンの量を増やせない場合と比べて多くなる。そこで、オキシトシンの分泌量などが決まる1才6カ月ごろまでの男の子には特にスキンシップをたくさんしてあげてほしい。
◯「ちょい抱き」でオキシトシンは分泌される
抱っこして5分でオキシトシンは分泌されるので、家事の合間などに「ちょい抱き」すれば大丈夫。
◯年齢に応じたスキンシップの仕方を!
1才6カ月を過ぎたら効果がないというわけではない。大きくなってくると、抱っこやマッサージは難しくなるが、その代わりに、ひざに乗せる、手をつなぐ、頭をなでる、背中に手を当てる程度でも効果はある。
◯「抱きぐせ」を心配する必要は無し
「抱きぐせ」や「甘やかし」を心配することなく、たっぷり抱っこをしてあげることが大切。「男の子だから」と、つき離して育てるのはNGですね。
【感想】
さて、桜美林大学の山口氏は、記事中で「まだ視覚や聴覚が未発達な赤ちゃん時代にあって、受けた刺激が簡単な経路で直接脳に届く触覚(皮膚感覚)が最も早く発達する」と指摘している。これが、「『愛着(愛の絆)』を形成するうえでスキンシップが最も重要」と言われる所以であろう。
また、記事中の「最近の研究では、オキシトシンの分泌量や感受性は、1才6カ月ごろまでに決まると言われている」という山口氏の指摘は、精神科医の岡田氏が愛着形成の臨界期として指摘する「1歳半」と同一である。ちなみに、このオキシトシンホルモンは愛着(愛の絆)が形成されると分泌されるホルモンとされており、岡田氏は、1歳半までに形成された愛着は「第二の遺伝子」と言われ成長後の「安定型」の愛着パターン(子供期)や愛着スタイル(成人期)の形成に必要不可欠と指摘している。つまり、「キレない子供を育てる」ために1才6カ月ごろまでにスキンシップをたくさんするべきとする上記記事の山口氏の指摘は岡田氏の指摘を裏付けるものと言える。
更に、家事の合間などに出来るわずか5分の「ちょい抱き」でオキシトシンホルモンが分泌されるとのこと。働くお母さん方にとってこれは朗報である。
記事中にあるように、「『男の子だから』と、つき離して育てる」という考え方は世の中にまだ有りそうである。しかし、本来キレやすくなる特質を持った男の子だからこそ、乳幼児期の“たっぷり抱っこ”によるオキシトシンホルモンの分泌や愛着形成がより必要なのである。