【今回の記事】
暴れる成人、テレビに映って喜ぶ 伊集院光「風物詩的報道、よくない」

【記事の概要】
   2017年の成人式も、テレビのワイドショーなどで「荒れた」部分がクローズアップされた毎年のように荒れるのは、テレビの取り上げ方にあるのではと、ネット上などでは、疑問や批判が相次いでいる。
   つくば市の成人式では、報道によると、新成人の会社員の男(19)がステージに駆け上がろうとして公務執行妨害の現行犯で逮捕され、式典が一時、中断される騒ぎになった。女性を含めた数人のグループで来ていたとみられている。
   一緒に来ていた女性は、民放キー局のワイドショーに取り上げられたと喜び、その映像が「1月9日ってYouTubeで検索すると出てくるよ!」と仲間たちに呼びかけていた。つくば市では、会場のイスを投げつけようとした新成人もおり、女性は、「ニュースになってるじゃん」「うけるよね(笑)」などと書き込んでいた。
   毎年のように繰り返される成人式での大騒ぎについて、タレントの伊集院光さん(49)は、自身のラジオ番組の中で、「新成人が事件や事故を起こしたら、刑事罰に問われ名前も出ると各自治体が告知すべきだ」と持論を述べた。これに対し、同番組の出演者から「逆に名前が出ることで喜ぶと指摘があったが、伊集院さんは、「それは、報道側が許されている雰囲気の報道をするから」「風物詩的な匂いをさせるからであって、これはとてもよくない」と説明した。そして、伊集院さんは、大事になれば犯罪であり、前科が付くことをきちんと報道しないといけないと述べた。

【感想】
   つくば市の成人式で、ステージに駆け上がろうとして公務執行妨害の現行犯で逮捕された新成人の会社員の男(19)と一緒に来ていた女性が、民放キー局のワイドショーに取り上げられたと喜び、ニュースになってるじゃん」「うけるよね(笑)」などとSNSに書き込んでいました。

   これは、ある行動心理学の考え方ですが、人は、ある行動を取った後に、①自分にとって都合のいい状況になった時には、またその行動を行おうとします。逆に、②自分にとって都合の悪い状況になった時には、次にはその行動を行おうとしません
   このつくば市の事例の場合は、上記の「①」に当たり、問題行動を起こすグループの若者たちが、ニュースに報道されて注目を集めることを自分たちにとって都合の良い状況と誤った認識をしているために、問題行動を助長する結果になっているのです。さらに、毎年のメディアの報道で、「成人式で問題行動を起こすとニュースに取り上げられる」ということが慣例化されると、それを見ている20歳前の若者たちも、「俺たちも問題を起こして世間から注目を浴びよう」と、これも誤った認識をしていることが考えられます。これが伊集院氏の指摘する「風物詩的な取り扱い」の危険性です。

   では、どのようにすれば若者による問題行動を減らすことができるのでしょうか。
   先の行動心理学の考えで「消去」という方法があります。「消去」と言うのは言葉を変えて言えば「知らんぷりする」とか「黙る」という意味です。子どもの「ふざけ」等の問題行動に対して、周囲の人間がいちいち「やめて!」等と騒ぐと、ますます注目して欲しくなって、更に問題行動をエスカレートさせることがよくあります(普段から周りの人に目をかけてもらっていないことの反動です)。これを防ぐための方法が「消去」です。詳しくは以下の記事で紹介してありますので、下記ののURLタップにてご参照ください。
子どもをあまり叱る必要がなくなる魔法 その4

つまり、問題行動を起こす若者を毎年メディアが大々的に取り上げられて注目を浴びることが、彼らにとっての“都合の良いこと”になってしまっているので、彼らの行動に対して“メディアの報道”という都合の良い結果を与えずに、「知らんぷりする」「黙る」、つまり「メディアが報道しない」ということが問題行動を予防するための1つの手立てとして考えられるのです。これは先の行動心理の「②」に当たるものです。彼らにしてみれば、注目されないことは「つまらない」ことであり、すなわち“都合の悪い状況”になるのです。

   また、伊集院氏は「新成人が事件や事故を起こしたら、刑事罰に問われ名前も出ると各自治体が告知すべきだ」「大事になれば犯罪であり、前科が付くことをきちんと報道しないといけない」と指摘しています。この事はさっきの行動心理学の考え方に関わってくるのですが、自分がとった行動の後に自分にとってどんな都合の悪い状況(「刑事罰に問われ名前も出ることになる」「大事になれば犯罪であり、前科が付くことになる」)になるかということを前もって知らせておくことは、その行動を未然に防ぐことにつながります。未熟な若者たちには、行動の結果を予想する「危険予測能力」がまだ十分備わっていないのです。

   長くなってしまいました。申し訳ありませんでした。