【今回の記事】
「ベビーカー自粛お願い」 看板設置に意外な理由

【記事の概要】
   初詣の参拝客が撮影した写真で、「ベビーカーご利用自粛のお願い」とあります。この写真をきっかけに再びインターネット上でベビーカー論争が沸き起こっているのですが、取材を進めると、看板の設置に意外な理由があることがわかりました。

2017年元日、正月だけで4万人が訪れる東京・板橋区の乗蓮寺で参拝客の男性が看板を撮影し、写真をツイッターに投稿しました。

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「差別になりますよね」
「なんだか悲しい国だなあ・・・」
「混雑してて赤ちゃんの身が危ないから言ってるだけだろ」(ツイッターより)
 写真は瞬く間に拡散し、論争が始まりました。
「文句言うなら行かなきゃいい」
「すぐに差別に結びつける短絡的思考」
論争は過熱し、一部は男性への誹謗中傷へと発展。
   こうしたことを受け、寺側からは次のような回答があったそうです。
以前はベビーカーを優先していたのですが、そのうちに、大きな子どもをベビーカーに乗せてくる人とか、一台のベビーカーに大人が何人も同行するケースとか、『ベビーカーで行けば優先的に入れるぞ』と考える方々が出てくるなどのマナー違反が相次いだ上、高齢の男性がベビーカーにつまずいてけがをしてしまうという事故が起きたことを受けて、当面の事故防止、トラブル回避のため、やむなく看板の設置に至りました
   事故防止の観点から、地元警察の指導などもあり、苦悩の末、看板を設置したという住職。看板の設置について、「差別的な意図は一切なく、看板の文言を含め、来場者には気持ちよく安全に参拝してもらえるよう努めたい」としています。

【感想】
   1人の男性のツイートに端を発した加熱した今回の論争。
   結論から言うと、今回の騒動の原因は、「なぜベビーカーの利用を断るのか」という“理由”が明確になっていなかったことではないかと思います。「ベビーカーご利用自粛」という表現だけが一人歩きをしたために、「松葉杖の人、足の悪い高齢者、車いすの人、視覚障害者もダメなのか」という様々な方向に問題が発展してしまいました。
   しかし、上の写真を見ると、「年末年始は境内混雑のため」という理由も掲示されていたようです。しかし、この表現ですと、「ベビーカーは混雑の元になって迷惑です」という意図に取られかねません。
   寺側の真の狙いは、「事故防止やマナー違反によるトラブル防止」でした。ですから、「境内混雑のため」という表現よりも、素直に「事故防止やマナー違反によるトラブル防止のため」という表現の方が誤解を生まなかったのではないかと思います。
   足の踏み場もないほど混雑した境内にベビーカーで入場されると何らかの接触事故が起きる事は予想されますし、何よりも、上記のような腹立たしいマナー違反があるようでは必要外の人間同士の揉め事が起きることも当然予想されます。結局は、マナーを守らない大人たちがいたために、自分で自分の首を絞める結果となってしまった面があるのです。

   このように、“理由”をはっきりと伝えるということは、いらぬ誤解や不信感を生まないために、とても大事なことです。子どもに対して言う時も、理由をはっきりと伝えることがとても大切です。例えば、「ここでエアガンをするのはやめなさい」と言うと、子ども達には「禁止された」という不満しか残りませんが、「ここでエアガンをすると、公園に来た他の人たちに当たってしまうかもしれないからやめなさい」と伝えると、子ども達も納得して行動できます。もしかしたら、これまで子どもが親御さんの言うことを聞かなかったとことがあったとすれば、その裏には、親御さんが“理由”をはっきりと伝えなかったということがあったのかもしれませんね。