(前回からの続きです)

【感想】
   まず、「合理的な工夫」については、「子供がその活動をやりやすくなるような工夫」という意味で、いわゆる「スモールステップ式」の指導(ある活動が出来ない時に、活動全体をいくつかの段階に分けて、それらの段階ごとに分けて指導する方法)の一つと考えられます。つまり、「自分から歯磨きをする」という活動は、「①自分から洗面所に行く」と「②自分で歯を磨く」という2つの段階に分けられます。記事の中の歯ブラシとコップを机の上に置いておくという支援の工夫は、「①」を省略し「②」だけを取り出して練習させていることになります。それができたら今度は歯ブラシとコップを洗面所に置いておき、①も含めた活動全体をさせているのです。ですから、例えば、「最初は、自分で洗面所に行き『ブクブクうがい』だけで良い」と助言するのは、逆に「②」を省略し「①」だけを練習させる工夫ということになります。この指導法は、まだ活動全体ができない時に各段階に分けて少しずつ練習させるもので、子供の実態に合わせた難度に調整できるメリットがあります。なお大切な事は、各段階の活動ができる毎にきちんと褒めてあげることです。そのことによって、「もっと頑張ってみよう」という次の段階の練習に対する子どもの意欲化につながるからです。
   また、「言葉の工夫」については、「いまのうちに準備しておけば、明日の朝余裕だよ」というような肯定的な言葉を瞬間的に考えるのは難しそうに思いますが、子供が今一番できていない行為に絞って投げかける言葉を事前に考えておけば十分可能だと思います。
   また、「とりあえずほめる」については、意義はその通りだと思います。小さいことでも褒めていると、子どもの意欲が増して、そのうちに全体までがんばろうとします。ただし、「とりあえず」という表現は、「ほめる」という支援の意義が軽くなってしまうニュアンスがあるので、「小さなことからどんどんほめる」という捉え方の方が良いような気がします。一方で、ほめたら、できる」ではなく「できたら、ほめる」という指摘は全く同感です。「活動全体ができた時までほめない」と考えているといつまでたってもほめる事はできません。子供の実態に合わせ活動全体をいくつかの段階に分けて、一つずつほめるから、だんだん他の段階もできるようになっていくのです。
   最後に、「共感」については、親と子の愛着(愛の絆)を保持する上でとても大切だと思います。子供が「親は自分の気持ちをわかってくれる」と思うか、「親にいくら言ってもわかってもらえないと思うか、この差が愛着を形成できるかできないかの分かれ目になります。世の中には親に相談することなく自らの命を断つ子どもがいますが、子どもからすると、「部活を止める」ことさえ「何バカなこと言ってるの!」と怒られるのであれば、「死にたい」なんてことを言ったら何と言われるだろう、と思ってしまうのではないでしょうか?つまり、愛着を形成できるかできないかは、子供の命が続くか続かないかにまで影響するとも考えられるのです。

   いずれにしても、子供の実態や気持ちを汲み取り、それらに応じた支援をしてあげることが大切だと思います。