前回「親の言葉が子供に届く対話の仕方①」の続きです。)

   あともうひとつ、大事なのは「共感」。親はとにかく、門前払いしちゃうことが多いけど、いろんな場面で、子どもに共感してあげることが、すごく大事。始めは)とにかく共感で、言いたいことは最後にする
   例えば、お兄ちゃんが弟をたたいちゃったとします。「どうしたの、お兄ちゃん?」って聞くと、「だって弟が、おれのおもちゃで遊んでたの!弟がとっちゃったんだもん!」とか言ったとする。そういうとき、大体の人は「あんた、お兄ちゃんでしょ。おもちゃとられたからって、たたくの?」等と言って、正論を押しつけることが多いですが、それじゃ絶対に子どもは納得しません。子どもだって、そんなことはとっくの昔にわかってる。頭では理解していても、気持ちが処理できないだけ
   その気持ちを処理してあげるのが「共感」なんです。「あ、そうだったの?おもちゃとられたんだ、いやだったね」と言ってあげる。そうすると子どもはうれしくなって、「いやだったよ!だってこの前も、こうでこうで……」とか言って、どんどんしゃべる。(しかし)たいていの親も、先生も、それがなかなかできません。(例えば)「あんた、人のことばっかり言って、なに?自分は悪くないと思ってるの?そういうところがダメ、まず『ごめんなさい』って言いなさい!」とか言っちゃう。でもモヤモヤしたまま「ごめんなさい」を言ったって、意味がないんですよね。それを全部、たっぷり共感して聞いてあげると、スッキリできるのです。
   そうなったとき、子どもは特定の精神状態に入るんです。「お母さんは、わかってくれた!おれがどんなにいやな気持ちだったか、お母さんはわかってくれた!」というふうに、相手への信頼感がぐーっと高まるのです。
   そこで初めて、「じゃ、お兄ちゃん、これからどうする?」とか言えば、もう素直になってるから、「じゃあ、おれはお兄ちゃんだからね、これからは、弟に先にやらしてあげちゃう!」なんて言えるんですよ。気持ちのわだかまりを処理してあげれば、良い部分が出るんです。正論の押し付けじゃ、絶対無理です。いろんな場面で、とにかく門前払いしないで、聞いてあげて

   中学生だって同じですよ。ある女の子が「ね、お母さん、部活やめたい」と言ってきた。親はやめさせたくなくて、「何言ってんの、今までがんばってきたじゃない。もうすぐ選手でしょ、もうちょっとがんばんなさいよ。お母さんも応援してるよ、ファーイト!」とか言っちゃうんだよね。そうすると子どもは、「だめだ、この人に言っても。わたしがいまどんなに苦しいか、ちっとも聞いてくれない」ってなっちゃう。親は、励ましているつもりだけど、共感がないところでそれを言われると、子どもはただ「お説教された」って思っちゃうのね。
(反対に)そこで「どうしたの?」って聞けば、「だってこうで、こうでこうで」って言い始める。「そうなんだ、そりゃ大変だね。あんたも苦しいね」って答えれば、子どもはうれしいから、どんどんしゃべる。全部ぶちまけるとすっきりして、「もうちょっと、やってみるよ」となる場合もあります(笑)。
   もちろん、そうならない場合もあるけれど、少なくとも理由がはっきりするんですよ。言っている本人も自分の気持ちを整理できるし、聞いている親のほうにも、情報がいっぱい入ります。「ああ、これは体力的に無理なんだな」とか、「これは友達ともめてるのかな」とか「先生とうまくいってないんだな」とか、「この子、ほかにやりたいことがあるんじゃないかな」とか。そうやっていっぱい情報が入れば、的確な判断がしやすくなる。それを、共感しないでいきなり励ましたりすると、そういう情報が何も入らない。だからとにかく、共感が最優先ですね。

(次回【感想】に続く)