【今回の記事】小池氏が怒りあらわに 記者質問に「それは失礼じゃないですか?」

【記事の概要】
   東京オリンピックのバレーボール会場の見直しで、候補に挙がった神奈川・横浜市が、その考え方を示した文書。文書の日付は、「平成28年11月25日」となっている。この日に、横浜から東京都に届けられたが、小池都知事は、(12月)2日の会見で「この文書は、きのう(1日)見ました」と発言した。さらに会見では「大きな黒い頭のネズミがいっぱいいる」との発言もあった。
   横浜市が11月25日、東京都などに提出していた競技団体の意向を重視するといった内容の文書。
小池氏が推す「横浜案」には逆風となる内容で、11月29日に行われた4者のトップ級会談の前に、小池氏が読んでいたのではとの臆測もあったが、2日午後の会見で小池知事は「私自身が、それを目にしたのは昨日の話でございます。この点については、私の方にちゃんと情報を上げるようにということを先ほど、局のほうに通達をした」と話した。都の担当者は「紙そのものは見せていなかった。伝え方が悪かったと感じている」とコメントしている
   定例会見の終盤、フラストレーションがたまっていたのか、こんな、ひと幕があった。
記者が「結局、有明で行うとなれば『大山鳴動すれどもネズミ一匹』といいますか...」と話すと、小池知事は「ちょっと、それは失礼じゃないですか?」と話した。
大山鳴動してネズミ一匹」、大騒ぎした割には結果が小さいという意味のことわざをぶつけられると、小池知事は、せきを切ったように話し始めた。
小池知事は「このままいきますと、豊洲ではないけど、どんどん(費用が)膨らんでいったと思う。誰が歯止めをかけるんでしょうか? IOCでしょうか? 組織委員会でしょうか? 結局は、都民の皆さんに負担がかかる。私であれ、誰であれ、都に責任があるものがやらなければならなかったのではないでしょうか。ですから、ネズミどころかですね、大きな黒い頭のネズミがいっぱいいるっていうことが、これでわかったじゃないですか。」等と話した。黒い頭のネズミと、人間に悪さをするネズミを引き合いに出し反論した、小池知事。静かな怒りが爆発した瞬間だった。
森会長は「東京都が見直し作業をし、そのことを提案してくれたことについては、トータルで400億円くらいの削減になっている。そういう意味では、わたしは知事にも敬意を表したい」と話した。

【感想】
   今回のテーマは「失礼」。今回私が感じた「失礼」は3つある。
   1つはもちろん、小池氏が感じた「失礼」である。小池氏は、森会長も評価している通り、トータルで400億円の削減を行なった(「2000億円以上」という説もある)。全都知事の舛添氏のように、都民の税金を無駄に使ってはいけないという思いから、あれこれ修正案を提出した。その根底にある「もったいない」という考え方はバッハ会長も太鼓判を押している。結果的には、400億円しか削減にならなかったかも知れないが、されど400億円である。この「結果」を生み出した小池氏の「経過(努力)」を私は大きく評価したい。大山鳴動してネズミ一匹(大騒ぎした割には結果が小さいという意味)」ということわざを都知事にぶつけた記者の発言は、「結果」だけを面白おかしく取り上げた、実に週刊誌的な発言である。如何に表現の自由があとうとも、「あなたはあれこれ大騒ぎをしたけれど、結局何もできなかったではないか」という相手の無力さを馬鹿にした意味の言葉を、都民が選んだ都知事に対して、定例会見という正式な場で言うことは、知事に対して余りにも「失礼」である。

   2つ目の「失礼」は、小池氏自身の中に感じた「失礼」である。如何に自分が都知事であろうとも、やはり定例会見という公的な場で、自分の部下(入札に関わった人間?)をつかまえて「ネズミ」呼ばわりは余りにも「失礼」である。小池氏に関しては、都知事選挙中から、鳥越氏に対して「病み上がり」と呼び、それを本人から問い詰められた時に「それが選挙というものです」と堂々と言い放っていた。それではトランプ氏と同じではないか。相手をなじること、バカにすること、当然のことながら、これも「失礼」である。

   3つ目の「失礼」も小池氏についてである。都の担当者は「紙そのものは見せていなかった。伝え方が悪かったと感じている」とコメントしているが、都庁では、紙媒体の文書に決裁印は押さないのだろうか?まあそんなことはあり得ないとして、では、急いで知事に知らせたかったために、用件だけを口頭で伝えたのだろうか?しかし、これだけ重要な文書の内容を、文書そのものも見せずに伝えるものだろうか?何れにしても、重要な内容だということを担当者が汲み取り急いだ結果だったのであろう。しかし、そうだとするならば、11月25日に来た文書を約1週間も経った12月1日に小池氏が見たという定例会見での発言は“嘘”である。私は、小池氏の政治手法についてどうこう言うつもりはない。ただ、定例会見という都民への説明責任を果たすべき場で、事実と異なる説明をしたということは、都民を裏切る行為であり、これも都民に対して「失礼」である。