【今回の記事】
認知症対応、病院でロボットなど活用の動き-顔認証システムで離院防止も

   記事によると、認知症の対応でロボットやICT(情報通信技術)を病院の内外で活用する動きが広がっているという。(中略)人型ロボット「Pepper(ペッパー)」や「PALRO(パルロ)」との会話などを通じて感情の変化を調べ、治療に効果的な利用法を探ることを明らかにした。(中略)認知症を治すのが目的ではなく、不眠や徘徊、暴力、介護への抵抗といった認知症に伴うトラブルを軽減し、自宅や施設での生活へ戻ってもらうことを目指すとのこと。

   以前、本ブログで次のような記事を投稿した。
魔法のような認知症治療法『ユマニチュード』
「ユマニチュード」とは「人として接する」という意味で、フランスから導入された、「まるで魔法のよう」と今注目されている認知症の治療法である。考案者のイブ・ジネストさんによれば、「ユマニチュードは人と人との“絆”をつくる技術」であるとされ、見る(患者の視界に入る)、②話す(優しく、ケアの実況をするように)、③触れる(優しく) ④立たせる、という4つの技法を用いながら、私はあなたの友人ですよ。仲間ですよ。」ということを患者に分かってもらうことを大切にしている治療法である。
   認知症患者の多くは暴言、暴力、医療拒否など、看護側からすると多くの問題行動をとることが多い。しかしそれは、看護側の人間が「この人は困った人だ」という思いを持っているために、無意識のうちに、患者に対する自身の表情が曇ることが多い。認知症患者はその表情の曇りを敏感にキャッチし、「この人は自分のことを尊重してくれていない」という認識を持つ。その認識が看護師に対する怒りを生み、先のような問題行動を起こすのである。
   さて、上記記事によれば、ロボットの活用は、不眠や徘徊、暴力、介護への抵抗といった認知症に伴うトラブルを軽減し、自宅や施設での生活へ戻ってもらうことを目指すとのこと、とされている。つまり、徘徊しようとする患者をロボットが見張っており、その後ロボットから人間に連絡が入るのか、またはロボット自身が患者の行動を制御するのか、そこまでは記事には書かれていないが、いずれにせよ、ロボットが認知症患者を監視するような状況が作られることが予想される。
   しかし、いずれにせよ、ロボットに見張られている認知症の患者は、どのような感覚を抱くであろうか。上記の「ユマニテュード」の「人として接する」「人と人との絆を作る」という精神に現れているように、認知症の患者は、自分を“人として尊重”して欲しいのである。もしも認知症の患者が、「看護師たちは、自分達では手に思えないから、自分たちの世話をロボットにさせている」と受け止めてしまったら、さらに反発を強めることになってしまうのではないか。
   認知症患者の徘徊や暴力という問題行動をロボットによって緩和しようとする考え方は、単なる対症療法にしか過ぎない。ややもすると、ロボットの力で認知症患者の問題行動を押さえ込むということにもなりかねない。
   大切な事は、家族や看護師と認知症患者との間に絆をつくることなのであって、ロボットと人との間には絆を作る事はできない。認知症の改善は人間の手によってでしかできないのである
 「人と認知症患者との間に絆ができる」とは、どういう姿なのかということを、ぜひ本ブログの「魔法のような認知症治療法『ユマニチュード』」の記事を開きYouTubeでご覧いただきたい(「ユマニチュード / 認知症ケア 優しさを伝える技術https://m.youtube.com/watch?v=C4j_BCKDzrQ