http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160716-16113610-webtoo-l02
(「部下の子育て支援へ「イクボス宣言」/青森県警」)

   育児休業をとる部下を組織として支援しようという青森県警のこの取り組み、大変素晴らしいことだと思います。
   前々回のブログで、政府が、女性の育児休業が最長で2年間取れるように動き出したことによって、「臨界期」と呼ばれる、愛着(親子の愛の絆)の形成にとってもっとも大切な期間である0歳から1歳半の間に、母親がいつも子供のそばにいることができると述べましたが、実はそれだけでは不十分なのです。母親だけが育児休業をとって休んでいても、ただでさえ「産後うつ」に陥ってしまう母親がいる中、炊事・洗濯・掃除等と乳児の世話とを両立することはとても難しいからです。例えば、母親が炊事から手が離せないときに乳児が泣き出すと、すぐには乳児のところに駆けつけることができないこともでてきます。実は、乳児が泣き出してから母親が駆けつけるまでの時間の長短によって、愛着の安定性に影響が出てくると言われます。その時間が長ければ長いほど乳児のストレスは大きくなり、母親への信頼感も薄れてしまうからです。つまり、愛着を形成するにはもう一人のパートナー、つまり父親の協力が不可避なのです。
   仮に父親が育児休業をとることができたとしましょう。しかしその時に、父親が、炊事・洗濯・掃除は苦手だからと、いつも通り母親がその仕事をして父親が乳児の世話をしていると、「愛着の選択性」が損なわれるのです。「愛着の選択性」とは、子供が親と愛着を形成する上では、“誰かたった一人の特別の相手”が必要だという考え方です。通常はその“特別の相手”は母親が務めることになります。つまり、愛着が形成される以前に、乳児の世話をする仕事が母親以外の人に時々代えられるという事は望ましくないのです。
   何故かと言うと、母親と父親は同一人物ではありませんから、乳児の反応に対するリアクションの仕方は当然同じものではありません。乳児の立場からすると、自分の起こした行動に対して返ってくるリアクションが人によって異なってしまうと、どちらのリアクションを信じていいのか不安になります。すると、「この人こそが自分の世話をしてくれる最も信頼できる人だ」という“特定”ができなくなるとともに、誰を愛着の対象者として信頼したらいいかが分からなくなるので、愛着(愛の絆)が形成されにくくなるのです。
   ですから、少なくとも「臨界期(0歳から1歳半)」の間は母親がいつも子供のそばにいる必要があります。ですから、父親には多少苦手であっても、母親が子供のそばにいることができるように、家事の一切をしてもらう必要があるのです。そうすることによって、「愛着の選択性」が守られ、子どもは確信を持って母親を愛着の対象者として特定し、安心することができるのです。
   この「臨界期」の手のかけ方で子どもの一生が決まるのです。詳しくは、本ブログの「人の一生を左右する乳幼児期の養育の大切さ」(http://s.ameblo.jp/stc408tokubetusien/entry-12166236151.html)をご参照ください。