前回、乳児が泣いても世話をしない親に養育された子どもは「回避型」の愛着スタイルを持つ大人になるとお話ししました。
   実は、精神科医の岡田氏によると、愛着(親子の愛の絆)が形成されない、いわゆる「愛着不全」(「不安定型」愛着スタイル)には、「回避型」を含めて、全部で三つのパターンがあります。それは、
① 人との交流を避けるタイプ(回避型)
② 人に対する不安が強く、人の顔色を気にするタイプ(不安型)
③ ①と②が入り混じった一貫性のない行動を見せるタイプ(混乱型)

   次にそれらの原因ですが、主に、
①は親があまり構ってやらないとき、
②は親が気分次第で構ったり構わなかったりしたときや、親による支配(この子は〇〇のように育てなければだめ)が強すぎるとき、
③は親の虐待にあったとき、
にそれぞれのタイプになりがちです。

   ①では、育児放棄はもちろんですが、生まれてすぐ母親以外の大人が入れ替わり面倒を見ている場合や、子供にビデオ等を見せておいて親が別の事をしている事が多い場合、授乳している時でもスマホ等を操作して子供を見ない事が多い場合等も回避型になる危険があります。つまり、親の関心がしっかりと子供に向いていることが大切です。だから目と目を合わせることや微笑み等が大切なのです。また、やむを得ず0歳の時から保育所に預けるご家庭があるようですが、子供と一緒の時間を大切にして一生懸命養育に当たり「質」を高めましょう。
   次に②の不安型(人との交流を過剰に求めるタイプ)です。最も陥りやすいケースは、大人による支配です。子供の自立を願うあまり「何やってるの!」「ちゃんとしなさい!」などの刺激的、否定的な言葉を子供に浴びせる場合。また、親がイメージしている通りだと誉めるが、そうでない時には叱るというパターンです。子供は常に親の顔色を伺いながら、何とか好かれようとするので、いつの間にか人の顔色を伺うようになり、他者の言いなりになりやすく、いじめの対象になる場合があります。
   ③の混乱型では、子供にとって予測不可能なタイミングで暴力に襲われるので子供は文字通り“混乱”するのです。そういう意味では、②の親の気分次第での養育も、暴力を振るわずともやはり予測不可能なタイミングで叱責の言葉が飛ぶので子供が親の顔色を伺うようになるのです。
   
   総じて私はこう解釈しています。
①は母親という安全基地を持たない状態、②は安全基地が現れたり消えたりする状態、③は安全基地が危険基地になっている状態。②では、安全基地がまたいつ消えるのだろうという不安に駆られるために親の顔色を伺うようになるのです。