私はしがない地方公務員です。
とある片田舎の、生まれ育った地で、試験を受けて職員になりました。
まあ前の仕事とかいくつか経験したあとでの、最後の就職のつもりです。
私としては、定年になるまで公務員という仕事をやっていこうかな、と考えています。
……今のところは。
さて、就職して数年めの、平成28年4月。
私は現在の部署に配属されました。
この部署は、国で行われる「統計調査」の実務を行う部署です。
端的に言うと、
1 調査員さんに調査を依頼して
2 調査票を調査対象者に配布してもらい
3 しかる後に調査票を回収してもらって
4 その調査票を点検
5 必要であれば調査対象者に電話連絡して不足部分を補完
6 その後整理して県に提出する
という仕事を行っています。
ところで、一年間に行われる調査数はその年によって違うのですが、平成31年度(5月から元号が変わりますが)は調査の当たり年といわれ、市区町村レベルで実務を行う調査は4つあります。
1 6月1日時点で毎年行われている調査である「工業統計調査」
2 5年に一度の調査だけど、今回からは6月から期日を決めず、およそ2ヶ月かけて、指定範囲をタブレット端末に登録しながら調査することになった「経済センサス-基礎調査」
3 今のところ9月~10月?と聞いている、家計簿を書いてもらう調査である「全国家計構造調査」
4 これも5年に一度の調査で、すごくすごーく大変だと聞いている2月1日時点での調査、「農林業センサス調査」
平成30年度の調査が
1 6月1日時点 工業統計調査
2 10月1日時点 住宅・土地統計調査
(今住んでいる家の大きさとか他に持ってる土地とか何年住んでるかとかの調査)
の二つだけだったことを考えると、もう考えるだけでうんざりするくらいの業務量です。
ちなみに平成29年度の調査は
1 6月1日時点 工業統計調査
2 10月1日時点 就業構造基本調査
(今までどんな仕事に就いてきたか等を聞く調査)
3 2月1日時点 住宅・土地統計調査 調査区設定
(平成30年住宅・土地統計調査の前準備調査)
平成28年度の調査は
1 6月1日時点 経済センサス-活動調査
のみでした。
(経済センサス-活動調査の年は工業統計はおやすみです)
大体統計調査というのは5年に一回の周期の物が多く、私も2020年に国勢調査を経験すれば、とりあえず市区町村レベルで関わることのある調査すべてに関わることになると想定できるでしょう。
どうやら国勢調査の前年の担当者は、よっぽどのことがない限り異動しないようですし、私が国勢調査までこの担当であることはほぼ確定です。
さあ、この大変な大変な調査が多い年になると解っている年度が始まる……前年度の1月。
全国のニュースで、ある問題が取り上げられました。
そうです。いわゆる「統計不正問題」。
「毎月勤労統計調査」という統計調査で、本来500人以上従業者が働いている事業所はすべて調査対象となるべきところ、抽出調査(3分の1)としてしまっていた、というあれです。
正直、「毎勤」と呼ばれるこの調査は、市区町村レベルでは実務に関わることのない調査で、あまりどういう内容なのか知らない、というのが実情です。
しかし、調査をする調査員を選定するのは市区町村ですし、全く関わっていないかというとそうでもありません。
また、ニュースでいわゆる失業手当の算出に使われていると知ったとき、「へえ~知らなかった! もっと調査がこういう風に使われるって広報すればいいのに!!」と思ったものです。
(調査対象者が「この調査がどのように使われるか知りたい」と聞いた場合の回答例として与えられるテキストが「○○白書の作成に使われます」みたいな「いやそーじゃないだろ」という回答ばかりだったのでびっくりしたのです)
なにより、「統計調査」のどれか一つにケチがつこうもんなら、すべての統計調査にケチが付くのです。調査対象者の不審を買えば、調査票の回収率低下にも繋がるし、調査員さんが不快な思いをする確率も上がります。
これは、調査対象者に密接に関わっている我々市区町村職員からすると、官僚の大いなる裏切りです。
なぜなら彼らは、調査員説明用の資料に必ず「あなたたちの態度が調査自体の精度に関わるので、不正を行わずしっかり調査に関わってくださいね」というようなことを書いてくるのですから。
この問題が出てきてから、調査の見直しが行われ、現在も調査中となっています。
そして、次々と統計調査に関するずさんな扱いが現れてきています。
この「統計不正」に関して、私は大いにがっかりしました。
今まで私たちが誠意を持って、なるべく精度を持った統計を行うため努力していたのはなんだったのだろう、という失望感です。
ただ、同時に、今こそ統計調査の構造的な欠陥を見直すチャンスである、とも思いました。
そういう点では、この問題が表出したとき、大きな大きな期待を抱いたものです。
きっと、統計担当職員なら誰もが抱いているであろう、あの問題この問題にも、国会は言及してくれるだろうと、そう思ったのです。
ところがどうでしょう。
蓋を開けてみると、なんだか統計そのものについての知識がない……いや、ないのはある程度仕方ないにしても、勉強すらろくにしないで政治問題にしてしまおうとするマスコミや国会議員……。
職員の不足、統計行政の構造の問題、もっと言うと「統計調査員のなり手不足」とか、「調査票の無駄や難解さ」なんかにも言及して欲しいのに、すべて、すべて時の政権の圧力がどうとか、偽装がどうとかの話に持って行ってしまう愚にも付かない議論。
そしてそれを押しやれない官僚やら政府の面々。
これじゃああの中身のない議論で一年まるっと無駄にしたモリカケと全く同じ構造になってしまう……。
(私はモリカケも議論する必要のない議論だったという立場です)
これは……これはもしかして、責める側も、もしかすると責められる側も、何が問題か解っていないのでは?
数字の読み方もろくに知らない、なんかグラフとか表があるだけで説得されちゃう、数字のマジックに惑わされちゃう類の「文系」を言い訳にする人たち。
この手の人たちは、私の周りにすごくたくさんいます(私も含めて)。
でも、まさか。いやいやそんな……ええ……
もしかして……この病理は地方ゆえの学力の問題かと思っていたけど、もしかしてもしかして、国レベルでもこうなのか!?
はあ……これじゃ統計行政の構造的改革なんで夢のまた夢だ。
どうしてこれが問題なのか、そもそもの論点から大いにずれてることを軌道修正できず、きっとモリカケの二の舞になる。
ということは、私がずっと抱えている統計業務の問題点なんか、誰も気にしてくれないから、なあなあになって結局ずっと同じ調査方法が続くのだろう……限界を迎えた調査方法を何とか延命させ続けている、この欠陥だらけの調査を。
構造的な改革をするなら今のタイミングしかないと思っていました。
政府統計に不審! と煽るマスコミを、上手い具合に誘導できたらきっと、イギリスとかの「国家統計局」みたいな、統一的な統計を行う機関ができたり、これまでの調査の棚卸しとか、調査の設計をし直したりとか、その手続きを経て「信頼できる政府統計」を再構築出来る!
そのタイミングは、もうここしかないと思っていたのです。
私は、統計調査は必要なものだと思っています。
学生時代は心理学を学んでいたこともあり、それなりに統計の手法などについて理解しているつもりですし、国の指針という意味では絶対に必要な部分だと理解しています。
だから、茶化して馬鹿にしてばかりの「統計標語」に関する騒動とかも、冷ややかな感情を抱かずにはいられません。
ただ、だからこそ統計調査そのものの精度としてはどうなんだろう、と、業務に関われば関わるほど感じるところが多いのも事実なのです。
末端だからこそ、そう感じる部分があります。
これらの問題を、病理を、末端である市区町村の職員達が自分たちで処理してしまい、声を上げてこなかったということ自体が、もしかしたら罪過であるのかもしれません。
そう思うからこそ、私は各調査終了後の意見具申の際、結構過激なことを書いたり言ったりしています。
でも、やっぱり黙殺される、と言う部分も大いにあるのでしょう。
そう言った無力感、絶望感が、私の中では処理しきれません。
統計に関わって、次年度で4年目です。
国勢調査に向けて増える業務量に反比例するかのように、私を手伝ってくれる戦力はどんどんもがれていきます。
こんなネットの片隅で、マイナーな統計担当職員の話なんか聞いてくれる人も居ないでしょうが、現在の統計調査業務の問題点だとか、私が考えていることを、もし誰かが読んでくれたらいいなと思い、ブログにしてみることにしました。
国勢調査に向けて、これを読んでくださる誰かが統計調査に当たったとき、ちょっと思い出したり、調査員さんにたいして優しくしてくれたりなんかしたらいいな、と思ったり。
そんな気持ちを込めて、いろいろ書いていきたいと思います。
私の職務に抵触しない程度に(笑)