基礎のないところにしっかりした家は建たない | 偕楽園血圧日記

基礎のないところにしっかりした家は建たない

 先月のことになるが、

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 <産業競争力会議>人工知能市場など30兆円に 20年目標

 政府は19日に開いた産業競争力会議で、「国内総生産(GDP)600兆円」の実現に向けた重点分野別の目標値を示した。今はほとんど存在しない人工知能(AI)やビッグデータなどの先端技術の市場の規模を、2020年に30兆円に育てることなどが柱。官民一体で重点分野に取り組むことで、経済成長のけん引役にしたい考えだ。数値目標は5月に策定する新しい成長戦略に盛り込む。
 政府は20年ごろまでに、名目GDPを14年度比2割増の600兆円に高める目標を掲げている。これまで規制改革や法人実効税率の引き下げに取り組んだ結果、民間投資を生む環境は整いつつあるとして、今後は成長市場の創出・拡大や人材育成強化に力を入れる。
 政府は既に、AIやビッグデータを使ってものづくりやサービスの生産性を高める「第4次産業革命」に注力する方針を掲げている。これに加えて、20年までに高速道路での自動運転▽3年以内に小型無人機(ドローン)を使った宅配サービス--をそれぞれ実現するための関連投資も増やす。中堅・中小企業による技術導入も支援し、20年に30兆円まで市場拡大を目指す。
(後略)
【秋本裕子】
 毎日新聞 4月19日(火)19時31分

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 政府の会議がこんなことをいっていた。

 いつも思うのだが、どうしてコンピュータの開発関係者には言葉のセンスというものがないのだろうか。「クッキー」しかり「開発コード『ロリポップ』」しかり。
 この「ビッグデータ」という単語も、ニュースでアナウンサーが嬉々として口にするたびその幼稚さに肩の力が抜ける。
 中学の時からきちんと統計学を勉強していれば、これはただ「単に統計データの『並べ替え』がやりやすくなったというだけの話」であることもわかり、焦点は「ビッグデータ」などというところにはないということも分かるはずなのに。

 もてはやされているAIというのも、今開発競争がされているものは、よくいわれる「人間に代わる知能が~」というようなものではなく、単なる「最適解の見つけ出し早さ競争」プログラムであるのだから、これは数学的には「ビッグデータ」の話と同じ分野のこと。それがわかった上で投資をしないと意味がない。

 麻生大臣が、

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 「マンガのおかげでロボットへの恐れない」麻生氏が持論

「ロボットが人間を使うという恐れは日本人にはない。これはマンガのおかげだ」
 麻生太郎財務相は3日、ロボットへの投資の促進によって人間の仕事がロボットに奪われることにつながるのではないかと問われて、こんな持論を展開した。
「アストロボーイ(鉄腕アトム)とかドラえもんは、人間が困った時に助けてくれる。そうしたフィロソフィー(哲学)が頭の中に入っているので、ロボットが我々の職場をとっていくという意識は、多くの日本人には極めて薄い」
 朝日新聞デジタル 5月4日(水)5時2分

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 こんなことをいっているが、「分別を持ち概念を理解するアトムやドラえもん」は、今のAI開発では出てこない。(もっとも、ドラえもんのAIはまだ不完全なのか「その場の最適解決」のための便利道具を出してしまい、「人間であるのび太」はその「最適解」を「論理の飛躍」で飛び越えてしまって失敗する。まこと藤子F氏の作品はSFである)
 まあ、日本人が「ロボット」に対して持っている感覚は、「ゴーレム恐怖症」のあるキリスト教圏の社会とはまるで違うものなので、それが有利になることは間違いはないのだが。


 で、こういう動きがあることと呼応して、

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 成長戦略、プログラミング必修化 小学校から思考力育成

 政府が19日公表した成長戦略の概要に盛り込まれたプログラミング教育の小中高校での必修化は、人工知能(AI)などの普及を視野に、ITを活用して課題を解決する力などを育むのが狙いだ。平成32年度以降実施される次期学習指導要領で義務付けるため、中央教育審議会で議論される。
 小学校では、理科の実験や音楽科の作曲など、各教科に取り入れて体験的に学習する。
 算数で文章題を解く際にプログラミングの思考法を組み合わせるなど、コンピューターを動かすための技術の習得にとどまらず、児童・生徒の論理的思考力や問題解決力を育むことを重視する。
 このため、文部科学省は同日、小学校におけるプログラミング教育の具体的な内容や育成すべき能力などを検討する有識者会議を設置することを決めた。
 中学では、現行の学習指導要領で技術・家庭科に「プログラムによる計測・制御」が導入されており、これを拡充する。また、高校でも次期学習指導要領で必修化される見通しの情報科の新科目に導入する考えだ。ただ、指導できる教員が少なく、文科省は講師派遣などについて民間との連携を検討する。
 産経新聞 4月20日(水)7時55分


 小中でプログラミング必修に…政府の新成長戦略

 政府が5月にまとめる新たな成長戦略の概要が分かった。
 日本社会のIT(情報技術)高度化を支える人材育成が柱で、次期学習指導要領が始まる2020年度からコンピューターのプログラミング教育を小中学校で必修にするほか、外国人の専門家が日本に永住しやすくする。日本が官民一体で取り組む10分野を具体的に掲げ、政府が目標とする20年頃の名目国内総生産(GDP)600兆円の実現を図る。
 新成長戦略は、19日に開く政府の産業競争力会議(議長・安倍首相)で公表する。少子化でも経済成長を続けるため、ビッグデータや人工知能(AI)などを駆使する人材を育てて、生産性を高めることを目指す。
 プログラミング教育としては、小学生には興味を持ってもらうための体験学習を、中学生にはホームページの作成などを想定している。産業界には、教材の開発や講師の派遣などで協力を求める考えだ。
 読売新聞 4月16日(土)9時11分

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 学校でこういうことをさせようと文科省の方も動いているというのだが……まったく。「英語コンプレックス」と「コンピュータコンプレックス」を持った人間は、なにかあると頭を出して小学校の基礎教育をいじくろうとするから厄介である。

 小学校の算数というのは、まだ「道具の種類とその扱い方」を覚えている段階なのだ。大工仕事でいえば金槌や鋸切りのことを知り、それをどう使うかを覚えているようなもの。その段階で家を建てさせるようなことをしても、資材の無駄しか出ない。
小学生には興味を持ってもらうための体験学習を、中学生にはホームページの作成などを想定」などというのでは単なる「作成ツールの使用」程度のものでしかなく、昔でいう「アセンブラを一から組む」ような話にはなっていないので、「数学的思考力の向上」の役にも立たない。

(2012/01/13の記事、♪もう~終わりだね 君が小さく見える) 以来何度か取り上げているように、「アメが同じ数だけ入った袋がいくつかあります。アメ全部の数は8×5で求められます~」という問題から正答を選ばせる小学生向けの課題で、「アメの袋が五個だってありじゃないか!」という大人が山ほど出、教師を馬鹿にして罵る言葉をネットに書き散らしている。
 その後も、(2014/06/10の記事、形だけいじってもダメ それが教育というものだ) で取り上げた「21÷7という問題に対し、何段の九九を使えば求まるか」で「7の段という答えだけ認めるのはおかしい。3×7だって21になるのだから3の段を使うでもいいはずだ」という文句をつける大人もいた。
「ツールの存在」と「それをどう事象の中で扱うか」をきちんと学んでいないと、こういう「なにが問われているのか」がわからない大人が量産されてしまうことにもなるのだ。

 まあ、考えようによっては、プログラムはその「なにを求めているか」をきちんと示しておかないと、今のコンピュータでは扱えない、止まってしまうから、上手く学習の中に利用すれば「ツールの事象適用の実践」というところでは役に立つこともあるのだろう。
 だが、それはやはり「やるべきこと」がわかった上でしか行えないわけで、小学生に「体験学習」を、中学生に「ホームページ制作(HTMLを並べるレベルの話だろう?)」をさせるというのでは、まったく「趣味」の域を出るものではない。
 そんなことをするならば、今、多くの高校でたなざらしになっているc系言語のプログラム授業を充実させたほうがよほど役に立つ。


 おまけ。

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 分散型エネルギー利用促進法案など国会に提出

 民進党は28日、地域エネルギー源を効果的・効率的に活用しエネルギーの地産地消・分散型エネルギー利用を推進することをめざす分散型エネルギー利用促進法案などエネルギー関連法案4法案を衆院に提出した。
 山尾志桜里政務調査会長は4法案提出の意義について「エネルギーの地産地消・自給自足の動きを加速し、2030年代原発稼働ゼロを目指すとともに、2030年に再生可能エネルギー30%以上、温室効果ガス1990年比30%以上の削減を実現させる」とした。
 分散型エネルギー利用促進法案は国が分散型エネルギー利用促進基本方針をつくり、地方自治体が基本方針に基づいた促進計画を策定する。国の交付金で自治体が主体的に分散型エネルギー利用を促進することができる。
 これにより地域の資源や人材を活用し、利益を地域に還元することで、雇用機会の創出・地域経済の活性化による自立的な地域社会の形成を目指す。
 このほかの3法案は(1)国や独立行政法人の建物に実施目標を定め、最も厳しい断熱基準を定め、省エネ機器を導入し、エネルギー使用の20%以上を再エネで賄うことを義務づける「公共施設省エネ・再エネ義務化法案」、(2)廃熱・再生可能熱の利用促進、廃熱をエネルギー源として法的に位置づけること、廃熱発生量の公表制度などを定める「熱エネルギー利用促進法案」、(3)エネルギーを作ることを主な目的とする協同組合の設立を可能にする「エネルギー協同組合法案」。(編集担当:森高龍二)
 エコノミックニュース 4月30日(土)8時42分

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 やれやれ。これだから「数学が嫌いだから文系」といっているような人間は(ため息)。

 政府にもこういう「自然エネルギーが」「分散型エネルギーが」という声があるが、エネルギー(電気)というのは、まとめて作って分けるほうが絶対的に効率がいいのだ。
 小さな発電所をいくつも造ったところで、それを送電する段階で結局合流させなくてはならず、そのときに周波数や電圧の統一を計るための施設が必要になるわけで。発電所の数が増えれば増えるほど変電設備の数も必要になり、ロスも増える。それが「安定した」火力発電ならば、当然二酸化炭素の排出も増える。
 マスコミがはやらせようと持ち上げている「用水路省電力発電」のようなものも、近くの小屋の常夜灯をつける専用にというのならば使えるだろうが、それが社会インフラの中のワンパーツとして機能すると思っているならば、大間違いである。
「地産池消」をいうのならば、一県に大きな「センター発電所」を造って、そこが作る電気ですべてまかなうような方式にしたほうが効率は上がるのだ。

 山尾氏にはとりあえず「キルヒホフ回路」の勉強をしてからこういう提言の説明役に出てくることをお勧めする。
 もっとも彼女には、その前に説明すべきことがあるわけだが。


 本日の犯罪。

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 深夜の高速道で走行中のバイクを「降りなしばくぞ」強奪して逃走

 大阪府八尾市美園町の近畿自動車道上り線で8日午前2時25分ごろ、乗用車が兵庫県姫路市の男性会社員(22)が運転するオートバイに幅寄せして停車させ、助手席の男が「降りなしばくぞ」と脅してバイクを奪い、車とともに逃走した。八尾署が強盗事件として調べている。
 同署によると、車はバイクの後ろから来て蛇行。左側から抜けようとしたバイクに幅寄せし、八尾料金所の約300メートル南方で停車させた。車の助手席から降りてきた男は身長175センチほどで、マスクを着用。男性会社員らを脅してバイクから下車させ、自身が運転して逃げたという。男性と、後部に乗っていた友人にけがはなかった。逃げた男と運転席にいた男はどちらも20代くらいだったという。
 同署によると、盗まれたバイクは時価約300万円相当のホンダ「CBX400F」。1980年代前半に生産は終了しているが、中古市場では現在も根強い人気を誇り、生産時の販売価格48万円から3~10倍の高値で取引されているという。全国で盗難が多発しているとされ、数年前には所有者が盗難保険への加入を拒否される事態も発生していた。
 スポーツ報知 5月9日(月)7時6分

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 CBX400Fって、そんなに人気があるのか?
 XJR400とかゼファーといった2008年の排ガス規制で消えていったパイクならばともかく、CBの400系ならば今でもブラッシュアップされたスーパーフォアが出ているというのに。
 人気車種ならば盗んだところで「ばらして売る」わけにも行かないし、そうなればエンジンやフレームのナンバーですぐ足がついてしまうのだがなぁ。犯人は塗り替えて自分で乗り回すつもりなのだろうか?

 が、そんな人間はライダーとして認めるわけにはいかない。
 お前はただのショッカーライダーだ!