外国人技能実習生制度とは 概略 簡単に きっかけ 考えたい | 日本社会の闇と希望に心を傾ける

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問題意識の積み重ねがふとした瞬間に自分の人生を変えるのだと思います。
見なかったふりをして逃げることもあるでしょう。
けれど、一度知った、考えたという瞬間があることが何より大切だと私は思います。

「外国人技能実習生制度」を皆さんはご存知でしょうか。

これは途上国の人たちに日本で研修をしながら、日本の技術を取得してもらって、

本国に戻って活躍してもらうことを目的としてできた制度です。

しかしこれは表面上できれいごとを謳っているだけで、

実際には中小零細企業のための安い労働力として外国人を働かせています。

「日本人がやりたがらない仕事を外国人にやらせればいい。

日本語が話せないから権利を訴えてくることもないだろうし、

違約金や保証金制度などと呼ばれるものの実施によって、

技能実習の途中で本国に帰ることもできないのだから。」

などが実情です。


最低賃金以下で、しかも劣悪な生活状況で働かされている外国人。

これは派遣労働者の雇用問題が深刻に取り上げられる中で、

そのもっとひどい版ということができます。

少子高齢化で労働力が確実に減少する日本において、

外国人労働者の必要性の有無に関する議論がされていますが、

その前にこの制度について考えるべきでしょう。

アベノミクスで「グローバル化、外へ開いた国、日本」をアピールしながら、

裏にはひどい現実があるのです。

この問題はさまざまな日本社会の問題の縮図だと思います。

下請け企業の悲惨な経営状況、過疎化の進行による地方での労働力不足など。

 

さて抽象的に述べてしまいましたが、

具体的にはどのような制度なのでしょうか。

制度の特徴、キーワードを簡単に箇条書きで挙げてみます。

●3年間。

●送り出す側(中国が最も多いので、ここでは中国とする)側と受け入れる側(日本)の政府が関わって行っている。

●日本に来る前に名前だけの技術学校というものに通わなければならない。

その費用が何十万もする。
(実際には技能を身につけられるようなカリキュラムもなく、名目上にすぎない)

●3年間は帰らないという約束をして日本にやってくる。

違反したら違約金を支払わなければならない。

実際に中国の裁判所でそれが命じられたケースがある。

●労働基準法違反も甚だしい劣悪な賃金と生活状況

●日本人がやりたがらない工場などでの単純作業をやらせる。

 技能を教えようという気は全くない。

●劣悪な労働環境に耐えられず、自殺をしたり、精神病、脳に異常をきたす人も多々。

 

この制度を利用して日本にやってくる外国人は、

農村部出身で教育水準も低い中で育った若い人たちで、

権利を主張できるということも教えられずにいることも多く、

耐えることが一番だと技術学校で思想教育のように教え込まれています。

そして日本に希望を持っています。

故郷の両親に仕送りもできると思っています。

だから高額な費用を借金してやってくるのです。(保証金、技術学校への費用など)

誰が得をしているのでしょうか?
誰が行っているのでしょうか?
この制度の背景にある日本社会の考え方は何なのでしょうか?
(単一国家民族主義、日本の戸籍・国籍制度の特殊性などと繋がっていると考えます。
そこはまた随時書いていけたらと思っています。)

 

本当に概略だけを説明してみました。

わかりづらいところも多々あると思います。

制度自体が複雑なので、

もっと詳しくしりたい方はたくさん本が出ているので読むことをお勧めします。

私が読んだ本の中で、とても心にどすんとくる文章があったので、

少し引用しようと思います。

”そのころ(かつて戦前・戦後外国人に行ったこと)は抵抗すれば殴り殺されたり、
監獄に入れられたりした。が、いまはむき出しの暴力による恐怖ではなく、
国家機関を使った「強制送還」である。日本に出稼ぎに来てお金を稼いで帰られれば、
まだ安心というものだが、もしも途中で強制送還されれば、
支度金や渡航費などの膨大な借金を返すことができず、生活は破たんする。
だからこそ非人道的な仕打ちがあっても耐えている。
2006年8月、千葉県木更津市の養豚場で、26歳の中国人が、
彼を養豚場の「研修」で送り込んだ受け入れ団体の職員を刺殺した。
彼の基本給は6万5千円、残業代は一時間450円、どんなに働いても月10万にならなかった。
ほかの職場へうちしてくれ、と強く訴えていたので強制退去させられうようとした。
故郷に残してきた莫大な借金返済の不安に駆られ、錯乱しての犯行だった。”
(『いま、逆攻のとき』より引用)
 

また、この本には次のようなことも書かれています。

”深夜に及ぶ残業でくたくたになりながらも、自分が今、
縫製部分のはみだした糸を切っているXLの巨大なジーパンをいったいどんなひとが穿くのだろうか、
などと少女らしい空想にふけっているのだ” 
(戦前・戦後にかけての日本人の工場労働者の女性や、
その時代にアメリカで働いていた中国人や日本人を描いた映画の描写)

この『いま、逆攻のとき』という本には、
外国人技能実習生が最下層、その次が派遣労働者、その次が請負(有期工)で働く人たちというような、
日本社会の底辺を支える労働に注目し、総合的に語られています。
そして日本社会の闇や、傾向も書かれており、
タイトルに技能実習生という文字が含まれていないことからも、
この外国人技能実習生という問題がそれ単独ではなく、
日本社会の現在というものから切り離せない問題であることがわかります。
政権の話なども載っていて、比較的読みやすい本だと思います。
そしてこの問題だけではなく、様々な面からの連帯の必要性や、
時事的なニュースにも触れており、オススメです。
年越派遣村を行った方の対談などもあり、
短い本ですが、いろんな要素の詰まった良くできた本です。



私が読んでわかりやすかったものは随時追加していけたらと思っています。

 

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