私は、34歳で父を亡くしました。


これまで父との関係が悪かったから、

父が生きているときは「絶対に結婚したくない」と思っていました。


しかし父が亡くなってからは、時の流れと共に父への葛藤やわだかまりも薄れていきました。


そうやって自分の内面と向き合っていたとき、ようやく結婚したいと思えたんです。だから母にその旨伝えてみました。


すると母は「結婚がすべてじゃないよ。結婚したって大変なことがたくさんあるし、相手によっては独身のままの方がいいこともあるから」と言いました。


そのときに私は思いました。

これは嘘=とびきりの愛なんだなと。


当時YOASOBIのアイドルという曲が流行っていて、

その歌詞の中に「そう嘘はとびきりの愛だ」と出てくるんです。


母の発言は、本音じゃない。

本当は、

できれば結婚してほしい。

叶うことなら、孫の顔も見たい。

でもそれは娘に押し付けることでもないし、

何よりプレッシャーに感じてほしくない。

自分が先に亡くなっても、その後も娘を守ってくれる夫はいてほしい。人並みの家庭を築いてほしい。

結婚後も大変なことはあるし、相手によっては結婚生活がハードモードになることもある。でも結婚という経験はしてみてほしい。親戚や知人から「〇〇ちゃんは結婚しないの?」と聞かれても、ずっとうまくかわしてきた。娘本人の気持ちを尊重したいから。


これが母の本音だろう。


だって、言葉は上澄みだから。

本音(=真意)は、底に沈殿してる。

だから私は、本音を抽出するために、上澄みをろ過し続ける。


上澄みばっかりすくっても、相手の真意は見えてこない。だって上澄みは、嘘という名のとびきりの愛だから。