絶賛上演中の舞台『あまから』を観てきました。
けいちゃんにとって今年6作品目。
“女優保田圭”通算20作品目の舞台です。



自分より先に観劇された、ムーミンさんやゆたかさんに期待をどんどん高められ(笑)
随所で評価が高いことを知り。
けいちゃんはじめ、各出演者さんたちもブログで評判が良いと喜んでいたこの作品。

観劇前から楽しみで楽しみで。
ワクワクしながら行ってきました。


そして。
期待は裏切られることなく。
たくさん笑わせてもらって。
涙を堪えて目頭が熱くなり。
心もポカポカ。

観劇してから心穏やかというか。
自分の周りを、今までよりも優しい気持ちで見ているような気がします。



では、今回もいつもの駄文を書いておきたいと思います。
ストーリーは単純明快です。
それなのに薄っぺらでなく、どんどん作品の中に引き込まれます。

軽やかでいて心に届く本。
魅力的な役者。
難しいことを考えさせられたりすることもなく。
ただ楽しむ。

プロデューサーである大森さんの言う
「芝居は芸術ではなく、娯楽」
という言葉の通り。
現実を忘れて、ただただ楽しみました。


この先は、これから観劇される方、他人のレポに興味のない方にはお引き取り願います。
情報をまったく入れず、まっさらな状態で観てもすんなりストーリーに入れる作品です。







舞台は居酒屋“あまから”。
どこかにあるかもしれない。
いや、どこかにあってほしい。
そんなアットホームな居酒屋です。



居酒屋を切り盛りするのは男主人2人。
坂本あきらさん演じる、とぼけたおじさん恵造と。
山口良一さん演じる、ゲイの脩。
店は常連客で賑わっています。


そこに突然帰ってきた娘、優を演じるのがけいちゃん。
優は恵造の妹の子。
若くして亡くなった妹に代わり、姪である優を育ててきたのは恵造です。

父親代わりの恵造と。
母親代わりの脩。
これが優の家族。
優はどちらのことも「お父さん」と呼びます。


仕事で金沢に住む優の突然の帰省。
優は明るいのですが、相手に話をするスキを与えないくらいよくしゃべります。
まるで何か聞かれるのを拒むかのよう。
声も若干高め。
ムリに明るく振る舞っているようにも見えます。


なんでもない、いつもの私
を振る舞う優。
心に影がありながら、それを明るさで隠しています。
その演技に最初からぐいぐい引き込まれました。
たまにチラッと見せる陰のある表情がまたいいです。



お父さんたちが優に内緒でこっそり呼び寄せたのが、大森ヒロシさん演じる宏一。
優が兄のように慕い、「チイ兄ちゃん」と呼ぶ心許せる存在です。

チイ兄ちゃんがやって来た頃には、一人酔いつぶれていた優。
絡み酒です(笑)
酔った勢いで、
彼氏が自分に内緒でお見合いをしていた
とこぼします。


けいちゃん、酔っ払う役多いと思うのですが(苦笑)
どんどん板に付いてきたというか。
酔っぱらい役がうまくなっています。

本人は相当強いのでこんな風に酔っ払うことなんて無いのでしょうね。
むしろ、酒の席で周りの酔っぱらいをよく観察していたりするのかな?と思います。



翌朝、優を訪ねてきた彼氏、笠原浩夫さん演じる透。
老舗和菓子屋の跡取りである為、仕方なしの見合いであったこと。
元々断るつもりだったことを説明。
優の誤解を解き、丸くおさまるかのように見えた2人。


優の表情が一気に明るくなり、幸せそうですが。
透がお見合いを断る際、社長である母親に優の実家が人気の和菓子屋だと話したことが判明。
さらに、その母親が店を見にくることに。
居酒屋を和菓子屋に見せ掛ける芝居をうつことになります。



もうここからドタバタです。
お父さんたちとチイ兄ちゃん。
さらに、偽の和菓子屋のサクラとして、居酒屋の常連客たちを巻き込んだ大芝居。

常連客であり、優の幼なじみである双子を演じるのは三好絵梨香さんとなしお成さん。
見た目がまったく似てない2人が双子というだけで笑いがおきたり。
マナカナちゃんのようなセリフのシンクロが見事だったり。
2人とも愛らしいです。


坂本さんの、芝居だか天然だかわからないようなボケや。
山口さんや大森さんを中心とした掛け合いがテンポ良く。
かなり笑えます。


この場面までにも随所に笑いどころがあって。
セリフの掛け合いでたくさん笑えますが。

この、みんなで芝居をうつ場面はドタバタで笑いっぱなしです。
みんなが優の為にと頑張る、あたたかい場面でもあります。



透の母親であり、金沢の老舗和菓子屋の社長である礼子。
気品と威圧的ではない風格を出していて、すごく素敵な佇まいです。
可愛らしさも持っています。

演じる蜷川みほさんは雰囲気を持つ役者さんで。
けいちゃんには女優として目標にできる、また素晴らしい出会いがあったのだなぁと思いました。


羽柴真希さん演じる社長秘書、沢田に真相がバレそうになりながらも、一度目の偽和菓子屋はどうにか成功。
みんなの協力によって、優と透の結婚はうまく進みそうでしたが…。

沢田の入れ知恵によって、今度は優の父親が和菓子を作るところが見たいと言い出した社長。
偽和菓子屋、第二段の準備が始まります。



ここに、自分がすごく好きなシーンがあったりします。

二度目の偽和菓子屋をやる前夜。
脩お父さんとチイ兄ちゃんが、酒を呑んでいます。


ずっと疑問だった脩と恵造の関係について聞くチイ兄ちゃん。
脩の片思い、“片恋”と表現されていました。

恵造をサポートしながら店を切り盛りし、一緒に優を育てた脩。
「見返りを求めない愛」
だそうです。


これを聞いて、半年以上前のけいちゃんのブログを思い出したり。
たしか、
「見返りを求めず注ぎ続ける」
でしたでしょうか?
けいちゃんが愛について語ったのと同じですね。


脩の恵造に対する想いもそれで。

もちろん、2人のお父さんやチイ兄ちゃんが優に注ぐ愛も。
優の、お父さんたちに対する愛も。
「見返りを求めない愛」
です。


今回、けいちゃんはそういった部分で作品に共感しているのだろうなぁと思います。
結婚の為に、透の母親を騙すことにあまり気乗りしていなかったり。
たとえ家族の前でも、心配をかけたくないから弱さをみせなかったり。

そんな優に共感、同化しているのかな?と。
性格の面で考えると、今までで一番、けいちゃん本人に近い役なのかもしれません。



そして、チイ兄ちゃんの優に対する愛。
ここがかなり印象的でした。

脩との会話にボソッと、
「報われない」
というひとことがあります。
ここに引っ掛かかりまして。

チイ兄ちゃんが優を女性としてどう思っているのか。
そこははっきりとは語られないのですが。
もしかしたら、
“優の兄代わり”
という看板をどこかで外したかったんじゃないかと。

この「報われない」の言葉と、話している2人のなんとも言えない表情。
そこにキュンときます。


「可愛い妹の為に」
とサラッと言ってしまうチイ兄ちゃんがいいなぁ。
本当に素敵なお兄さんで。
ジーンとしました。
チイ兄ちゃんに感情移入しまくりです。



二度目の和菓子屋は、結局ボロが出てしまいます。

すべては自分が仕組んだことと、透を庇い社長に頭を下げる優。
また透も、自分が頼んだと正直に打ち明け頭を下げます。
この互いを庇い合う2人があったかい。


ここが居酒屋だということ。
実は社長は知っていました。
優との結婚も、それを知った上で了承していたと。

胸をなで下ろす優たちですが。
社長秘書、沢田は納得しません。

“あまから”は、恵造と脩がゲイバーで働いた金で建てたことを非難。
脩が本物のゲイであることも卑下。
優は老舗和菓子屋の嫁には相応しくないとまくし立てます。


優は頭を下げ、自分に対する沢田の非難は黙って聞いています。
ですが。
この父親に対する冒涜だけは許せなかった優。
沢田に向かっていきます。
そして平手打ち。


本当に叩いてしまうのですが、あんまりイイ音が出なかったのは残念。
ヘタに効果音を入れるよりは、現実感があっていいのかもとも思います。

悪者設定の沢田が、もっともっとイヤな奴に見えたらいいなぁ。
大森さんがブログで役者紹介をした時、羽柴さんが良くなれば全体が良くなると書いていたのをなるほどと思います。
沢田はかなり重要な役です。
自分としては、いつかけいちゃんにチャレンジしてもらいたいと思う役ですね。


沢田に向かっていった優のあの怒りに満ちた表情。
あれにはゾクッとしましたし。
自分のせいでお父さんが傷つけられてしまったという、悔しさや悲しさを滲ませた目に。
胸が締め付けられました。



恵造お父さんが娘の為に頭を下げたり。
脩お父さんが娘の為に家を出ていこうとしたり。
それをいやいやと子供のように、泣きながら止める優が居たり。

みんな自分より相手が大事で。
守りたいのです。



今回もけいちゃんの声の変化にはやられました。
声の使い方、またうまくなっています。


冒頭のムリに明るく振る舞う高めの声。
酔っ払って絡むドスの効いた声。
透を怒る時の冷静を装う低い声。
沢田に言い返した時の響く怒声。
そして、お父さんたちやチイ兄ちゃんに対する甘えた声。
声色の変化が絶妙です。


特に、泣きながら子供に返ったように「お父さん」と呼ぶ声。
あれにはこちらも泣きそうで。
泣きの表情もいいのですが、あの声で切なさが増しました。



柔らかい物腰の社長でしたが。
沢田が優の家族を冒涜する心無い言葉に激怒。

脩は思い出せずにいましたが、社長は脩の元恋人(でもプラトニックな関係)でした。
父親に強引に引き離された恋。

自分の時のような悲しい思いを息子にはさせたくない。
老舗和菓子屋の看板は、ゲイの娘が嫁にきたくらいでは揺るがない。


社長は、強い信念を持った人。
優に対しても、色眼鏡無く、まっすぐ彼女を見ています。
ひとりの女性として気に入ってくれていて。
ちゃんと優の家族も認めてくれていました。



すべてまるくおさまり、居酒屋は大宴会。
なしおさんとみーよの双子が歌って。
優がハッピーサマーウエディングを歌い踊ります。

これは得した気分(笑)
ラストは泣いて歌えなくなる優にまたもやもらい泣きです。


そして。
山口さん、坂本さん、大森さん中心に全員がゾッコンラブ?を踊ります。
これは単純に楽しく。
そのまま終了です。





この作品、みんなが自分以外の誰かのことを想っています。


優と透が互いに想い合っているのはもちろん。

お父さんたちの優に対する愛。
優のお父さんたちに対する愛。

透も母親のことを想い。
社長である母親も、ひとりの母として透を想っている。

チイ兄ちゃんの優に尽くす愛も。
優の為を想って協力してくれた常連客も。


そして。
優たち家族には敵に見える沢田も。
社長や会社、そこを支える従業員のことを想っているのは確かです。


自分の為に
ではなく、
誰かの為に

その気持ちが当たり前のようにみんなの心にあります。


古いのかもしれない。
でも、これを古いとか理想論だとか言ってしまうのは寂しいなぁ。

想いの強さや深さはにはそれぞれ違いがあるけれど。
自分の家族や周りの人には幸せでいてもらいたい。
きっとみんなそう思ってるのではないでしょうか。
その気持ちをストレートに表現している作品だと思います。



客席で身構えることなく、ラクな気持ちで観られました。
笑えて泣けて癒やされる。
本当にあたたかい作品です。