先日、千穐楽を迎えた舞台『マーダーファクトリー』。
皆さん無事に千穐楽まで駆け抜けることができたようで。
キャストの皆さん、スタッフの皆さん、本当にお疲れさまでした。


前回のレポで自分的重要ポイントをまとめてみましたが。
今回はもう少しストーリーを追いながら補足しておきたいと思います。
けいちゃんファンとしては、前回はけいちゃん中心のレポになってしまっていましたが(笑)
他にもいい演技を観させてくれたキャストがたくさんいらっしゃいますので。
少しでもご紹介できたらと思います。





一幕。

舞台は現代の東京。自分の現在の境遇に不満を募らせている若者。勉強ができない。就職ができない。モテたことがない。イジメられる。満ち足りない彼らが集うネット上。
そんな彼らの前に現れた“皇帝様”。「2014年の首都直下大地震で東京は壊滅する。私を信じるものだけ救ってやろう」と。
そしてその予言通り、首都直下大地震により東京は壊滅。多数の犠牲者を出し、荒野と化す。
震災後、2年経っても復興する気配すらない東京。配給食で生き延びる人々。その配給食を奪うために平気で殺人を犯し、欲求を満たす為に女性を物色する犯罪集団“ラット”。彼らの正体は、“皇帝様”に心酔し、“皇帝様”のおかげで震災から免れたあの若者たち。



若者たちが、得体の知れない“皇帝様”にあっという間に心酔していくことに恐怖すら感じました。
生活に疲れ、社会に不満を持ち、暗い顔をしていた彼らが、目を輝かせて叫ぶ「皇帝様万歳」。
その必死な様子にはゾッとします。

“ラット”は殺人を楽しみ、なんの躊躇いもありません。
普通の、むしろ気弱だったハズの彼らが、簡単に殺人鬼に変わることが恐ろしいです。
自分の存在意義を見失っていた彼らが、水を得た魚のように生き生きしていて。
迫力のダンスが、その活力に満ちた感じを表していました。





そんな不安渦巻く東京で、震災によって家族や家を失い、仲間たちと肩を寄せ合い暮らす若者たち。まっすぐで芯の強いエリ(安倍麻美)と頼りになるリーダー的存在のエリの彼氏、タケ(載寧龍二)。密かにタケに思いを寄せるエリの友達コウ(三浦葵)。エリの弟サトル(川隅美慎)と、心臓病を患うサトルの彼女アリサ(仲川遥香)。エリの友達で、勝ち気でたくましいミク(弥香)と、気弱な彼氏のマサヤ(瀬戸祐介)。
そんな彼らの前に倒れ込んできた青年。“ラット”に襲われたらしい彼に、エリとサトルを見覚えがあった。幼少期を過ごした川越の幼なじみ、アキラ(加藤慶祐)。この再会が彼らの和を乱していく。



このあたりは、メンバーの人間関係の説明といった感じでした。
貧しいながらも明るく前向きに暮らす彼ら。
男勝りなミクと、ナヨナヨしたマサヤのやり取りが笑えました。
半ギレでセリフをたたみかける弥香さんは、小柄でカワイらしいのに力強く。
対する瀬戸くんのイジイジオドオドした演技も良かったですね。
イケメンなのに、情けないオーラを身体中から発していました(笑)




埼玉県川越警察署。のん気にトランプに興じる青木刑事(藏信貴)たち。そんな彼らを一喝する楠本刑事(保田圭)。楠本刑事をなだめ、話の矛先を変えたい青木刑事は、退職した先輩刑事に頼まれた解決済みの事件の資料集めを指示する。
浮気をしていた妻とその愛人を夫が殺害し、犯人は自害したという事件。アキラの父親が犯人として片づけられたこの事件は、真犯人がいるとその先輩刑事は確信していた。それが当時9歳のアキラ。まさかと思いつつ、彼らは動き出す。



楠本刑事の第一声は劇場中に響き渡りました。
いきなり存在感を示すことができたけいちゃんにニヤリ(笑)
詰め寄る楠本刑事を必死になだめる青木刑事。
対称的な刑事の2人。
2人のテンポのいいやり取りが楽しいです。
けいちゃんの怒りながら発する強い声と、藏さんの機嫌をとるような甘えた声。
この声色の対比がとても良かったです。




“ラット”が暴れる状況を一刻も早く打破したい政治家。彼らはある人物からの提案により秘密組織“マーダーファクトリー”を作ることを決める。それは“ラット”を抹殺する正義の組織。殺し屋の重森(進藤学)を館長に、“ラット”排除の為の組織が動き出す。重森と林田教官(高山都)が一般市民を拉致し、訓練させて殺人兵器に仕上げるというこの組織は、国民に一切知られてはいけない。彼らは“バスター”と呼ばれ、完成品に近づいていた。



進藤さんの渋い声は、殺し屋という役柄にピタッとはまります。
政治家に媚びず、堂々としている背筋の伸びた姿が、館長としての自信を感じさせました。
高山さんは、けいちゃんがブログに書いていたようにとてもカワイらしいアニメ声の持ち主です。
そんな彼女が殺人兵器を作る教官。
声を発した瞬間は驚きもありましたが、そのミスマッチな感じがだんだん面白く思えてきました。




配給を探しに行くことにしたアキラとミク。夕暮れ、“ラット”に襲われる2人。ミクに目を付けた彼らは、彼女を追い回す。それをぼーっと眺め、助けを求めて足に纏わりつくミクを蹴り飛ばすアキラ。ミクは呆然としたまま“ラット”に連れ去られる。アキラに歩み寄る“ラット”。彼らの崇拝する“皇帝様”こそアキラであった。



ここまでくると、“皇帝様”がアキラではないかとなんとなく想像していましたが。
ミクを蹴り飛ばした瞬間にはゾッとしました。
加藤くんの鬼の形相。
そして、ミクが連れ去られた後の高笑い。
彼の冷たい目は、背筋が寒くなります。
それと同時に、彼の座長としての貫禄も感じました。
初舞台とは思えぬほど、堂々としていました。