すぐに気持ちは落ち着いた。


泣いていたことを悟られないよう軽く化粧を直す。


ファンデーションが乗らない。
最近、肌の調子が悪い。
睡眠も取れてきているし、いつもと同じようにお手入れしているはずなのに肌は悪化の一途を辿っていた。



仕方なくリキッドファンデーションに切り替えて少量を目元に馴染ませると、急いで出口に向かった。



外に出ると披露宴で仲良くなった同じテーブルの人と友人達が待っていてくれた。



もう、しのー。
みんな行っちゃったよー。


残っていたメンバーにほっとした。


私は泣いていた事を悟られないように努めて明るく振る舞った。


もうちょっとだけ飲みたかったから、終電を待つ間、みんなで少し飲んだ。


初対面でこんなに仲良くなれるのは珍しい。


絶対このメンバーで飲み会しようと約束をしてそれぞれが家に帰っていった。



大切な友人の門出を一緒にお祝いすることができた。
それはとても幸せなことだったのに、私の心は未だ修司さんと別れた日のまま止まっている。





今日でまた一つしなきゃいけない事が終わってしまった。

夢中になれるもの、気を紛らわせる物を見つけなくちゃ。



修司さんの事を考えない位夢中になるもの…




帰りの電車の中。
イヤホンからは大好きなバンドの曲が流れていた。


今の自分とは似つかわしくないほど純粋な想いを歌った曲。



どうして婚姻制度は更新制じゃないんだろう。



更新時期が来ました。どうしますか?
このままパートナーと婚姻関係を続けますか?



そんな確認が有れば、お互い定期的に関係を見つめなおせるし、続けたくないのにお互いの同意がないからと諦めている人も辞めたいですと言い出す事が出来るのに。



5年解約10年解約なんて始めから期限を決めたりするのもありだと思うなぁ。



などと詮ない事を考えていた。


まずは旦那と向き合おう。
再構築するのか、当初の通り離婚したいのか。


落ち着いて考えてみよう。




誰にも邪魔されない1人の時間。


イヤホンをしていれば周りのざわつきも気にならない。


私は電車に揺られながら、自分の身の振り方を考えていた。