お彼岸だから
 
ハルオさんの前妻のお墓参りに行って来た。
 
 
 
 
前妻の供養に関しては
 
ハルオさんはまったくなにもしない男で
 
命日なんぞも
 
まったく気づかないふりをして暮らしているから
 
私に遠慮はしなくていいから
 
ちゃんと供養をしてあげたら、って
 
常々、叱っているんだけれどね。
 
 
 
 
 
どーゆーつもりなんだか分からないけど
 
とにかく
 
お彼岸だってことも忘れていたハルオさんの
 
お尻を叩いて、お墓参りをして来たわ。
 
 
 
 
 
ハルオさんは前妻のお仏壇も
 
ハルオさんの家に置きっぱで
 
埃だらけにして手も合わせようとしないから
 
まったく何を考えているのか分からない。
 
 
 
私は死んでしまった人にまで嫉妬するような
 
了見の狭い女でないことは
 
ハルオさんが一番良く知っているはずだから
 
私に遠慮をしているのだ、とは考えにくいが
 
ひょっとして
 
私の見えないところでは、お仏壇に向かって
 
前妻に語りかけているかもしれなくて
 
それはそれでいじらしい、と思う。
 
 
けれどきっと
 
ハルオさんは
 
考えないようにして頭を切り替えて
 
私との日々を楽しんでいるんだろうなあ。
 
ハルオさんの性格なら絶対にそうだ。
 
 
そう思うと
 
亡くなっているのだけれど
 
前妻が少し、可哀想に思える。
 
 
 
年を取って
 
子育てが終わり
 
仕事も全盛期に比べれば緩やかになって
 
老後には少し早いが
 
いわゆる子育て終了後の暮らしを満喫している我が身であるから
 
その楽しみを味わうことなく死んでいった前妻のことを
 
気の毒に思う、とハルオさんに言ったら
 
 
「自分の好きなことをやっていた人だから」
 
 
と言葉が返って来た。
 
 
 
前妻さんは、どうやらとても社交的な性格で
 
友達が多くて
 
夜遊びなんかもけっこう派手にやっていたらしい。
 
私はまったく正反対で
 
昼間は徘徊するけれど、夜は出て歩かないし
 
ハルオさんとお付き合いを始めてからは
 
ハルオさんオンリーな暮らしだから
 
ハルオさんは私が可愛くて仕方がないのね。
 
 
うはは。
 
 
たぶん
 
ハルオさんが前妻の供養をまったくしないのは
 
ハルオさんが
 
前妻の看病をやるだけのことは全てやって
 
燃焼しつくしたこともあるのでしょうけれど
 
「自分の好きなことをやっていた人だから」
 
との言葉が一番の理由なのかな、とも思うわけです。
 
 
 
 
自分自身が友達をあまり求めず
 
つまり
 
一人が好きで
 
パートナーが友だちたくさんの社交家さんだと
 
これは
 
けっこう、辛いね。
 
 
私とハルオさんは
 
二人とも
 
一人が好きな人間だから、二人で仲良く遊べるの
 
そんな
 
重要な事実に気づいたわ。
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 
 
 
 
 
前妻のお墓に供える花は
 
華やかな色がいいかな、って。
 
 
でもね
 
ハルオさんったら
 
2束、買わないの。
 
1束だけしか買わない。
 
 
私がもう1束を買ってもよかったんだけれど
 
まあ
 
しゃしゃり出るのもね。
 
 
 
前妻のお墓には
 
ハルオさんの両親とお姉さんも入っているから
 
もうひとりのお姉さんが先にお参りに来ていたらしく
 
枯れかけた花が供えてあったから
 
枯れたのを抜いて一つにまとめて
 
右側に供えて
 
左側に新しい花を供えて来たわ。
 
 
 
バランス悪くて変なの。
 
 
 
ハルオさんってば
 
お墓の裏に回って
 
親父が死んでから何年だとか
 
お袋が死んでから何年だとか
 
そればっか言って
 
前妻のことは一切、言わないの。
 
 
それはそれで不自然なんだけれど
 
複雑なんだろうな。
 
 
 
私は、まあ
 
ほっとくしかないかあ、と思っている。