2017年の下半期も
 
気を紛らわしたいがために
 
とにかく
 
動き回ることは続いていて
 
でも
 
どんなに頻繁に動き回っても
 
気持ちが晴れることはひとつもなかった。
 
 
 
 
あの頃
 
陽だまり君と行動を共にしていても
 
私の頭の中の大半は王子が占領していた。
 
 
私は陽だまり君と
 
他愛もない会話をしながら行動を共にして
 
自分のメンタルが平常に戻ることを待っていた。
 
 
メンタルを鍛えて
 
平常心を保てるようになったら
 
王子に連絡を入れる。
 
 
 
王子とは別れ話もしていないし
 
さよならも言っていないのだから
 
私がひょいと連絡をすれば
 
交際が復活する確信めいたものがあった。
 
 
 
でも
 
メンタルをやられたままでは
 
また同じことが繰り返されるだけ。
 
 
 
私が王子に振り回されないように
 
メンタルを鍛えればいい。
 
 
 
 
王子は、メールを読まない電話には出ない。
 
そのことが、イコール、私に興味がないからではなく
 
アスペルガーとしての特性だと気づいたのだから
 
私は自分のメンタルさえ丈夫になれば
 
王子との連絡のとり辛さに、耐えていけるのではないか
 
と考えていたのだった。
 
 
 
 
陽だまり君と過ごしていたのは
 
私にとっては、単に「時間稼ぎ」に過ぎなかった。
 
 
 
陽だまり君を利用しているようで
 
心が痛まないでもなかったけれど
 
陽だまり君だって
 
風来坊な生活を改めるわけでもなく
 
遺産で暮らしている大酒飲みの男で
 
しかも自宅マンションはゴミ屋敷。
 
私は陽だまり君の部屋には一度も行ったことがないから
 
会うのはいつも外で
 
あるいは飲み屋でだったから
 
真剣な交際とは、程遠い位置にいた。
 
 
 
陽だまり君も
 
私に対して、責任を感じたり
 
真正面から向き合おうとは思ってはいなかったのだから
 
私たちは、同等で同列だったのだと思う。
 
 
 
楽しければいい
 
 
 
それだけの関係でいいと思っていたのは
 
陽だまり君も同じなはずだった。
 
 
 
 
 
 

 

 

 
パラオから帰り
 
夏になって
 
陽だまり君とは
 
縁結び神社に行ったり
 
私の田舎に行ったりしたから
 
(写真2枚目は宮城県のキツネ村ね)
 
 
何か勘違いをさせてしまったのか、とも思う。
 
 
 
私の故郷に行ったついでに
 
両親のお墓まいりに付き合わせてしまったものだから
 
大いに勘違いをさせてしまったか、とも思う。
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 
 
その後も
 
陽だまり君お得意の
 
青春18切符で一日中列車に乗っている旅や
 
(そういう男だったさ)
 
東京湾納涼船で呑んだくれたり
 
私にとっては
 
学生同士のような、疲れるだけのお出かけが続いて
 
たぶん私は
 
陽だまり君の幼さに疲れてしまったのだ、と思う。
 
 
 
 

 

 

 

 

 
8月になって
 
私はやっと一人で行動を始める。
 
 
 
郷里で開催された
 
アートフェスティバルを3日間掛けて歩き回った。
 
 
 
この3日間も私の頭の中は王子が占めていたけれど
 
目に見える風景には、色が戻っていた。
 
私はもう、一人でも大丈夫。
 
そう感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
故郷から帰ってすぐに
 
一人でオーストラリアへ旅した。
 
この旅の間も
 
私の頭の中は王子が占領していたけれど
 
何も悲しくはなかった。
 
 
 
旅の間に
 
若者たちとの出会いもあり
 
陽だまり君のことは
 
少しも思い出さなかった。
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
オーストラリアから帰ってから
 
陽だまり君とは
 
再び、東京湾納涼船に乗り踊り飲み
 
ボランティア仲間たちとも一緒に東北へ行き
 
川越の夜祭に行き
 
ひたち海浜公園にコキアを見に行った。
 
 
 
 
 
私たちは
 
先のことなど何もない
 
単なる友だちに過ぎなかったのに
 
この頃には陽だまり君は
 
私を彼女としてボランティア仲間に匂わせようとするようになった。
 
 
 
私には、これが重かった。
 
 
 
陽だまり君が差し出した手に縋ったのは私だったから
 
随分と私は身勝手だと思うでしょう。
 
 
 
 
けれど、弁解をすれば
 
何度も書いてしまうけれど
 
陽だまり君は
 
私の人生に何の責任も持つつもりはない男で
 
それは、陽だまり君自身が
 
いつも言葉にしたり態度だったりで分かっていた。
 
 
 
昼間から浴びるようにお酒を呑んで
 
まともに働いたことのない人間で
 
私がずっと王子のことを好きだと分かっていて
 
だから
 
遊び友だちのはずだったのに。
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 
 
コキアを一緒に見た数日後に
 
私は一人で、西武園遊園地のイルミネーションを見に行った。
 
 
 
県民の日の無料公開日で
 
行く直前まで
 
私は陽だまり君を誘おうかどうか迷っていた。
 
けれど
 
誘えなかった。
 
 
 
誘えばまたグダグダになってしまうだろうし
 
私はまだ王子が好きで
 
でも
 
王子に連絡を入れる元気はまだなかったけれど
 
陽だまり君と一緒に行動することが
 
私の新しいストレスになってしまったから
 
どうしても誘えなかった。
 
 
 
 
ヒトさんと別れたときの気持ちに戻って
 
私は一人で生きるべきだと思った。
 
「あなたは男の人が側にいなくちゃダメな人なんだと思う」
 
昔、友人に言われた言葉にも引っかかっていた。
 
 
 
 
そんなことはない。
 
私は一人でも生きられる。
 
もう、こんな言葉は二度と言わせたくないし聞きたくもない。
 
 
 
 
一人で歩いた遊園地は快適だった、はずだ。
 
 
 
 
 
なのに、
 
 
 
「いっそ、彼氏作れば」
 
 
 
陽だまり君や王子のことで
 
ぐだぐだ愚痴ばかりこぼす私に教室のお姉さまが放った言葉で
 
私はまたブレてしまう。
 
 
どう、ブレたのかは続く。
 
 
 
 
 
 
そうそう。
 
 
 
陽だまり君とは
 
秩父の夜祭はどうする?
 
と書かれたメールに、私が返事を出さなかったことでお終い。
 
 
 
 
それだけの関係だった。