最近のお気に入りのパン屋さんカフェから持ち帰った
 
パンが入った袋が見当たらなかった。
 
 
持ち帰ったのはハルオさんだったから
 
当然だけどハルオさんが
 
肩に掛けていたバッグの中や
 
念のためにダウンジャケットのポケットの中や
 
車の中を何度も何度も大捜索したけれど、とうとう見つからなかった。
 
 
 
中身は、昼食時に食べ余したパンである。
 
あんこ入り食パンのハーフサイズ200円を3枚に切ってもらい
 
2人して1枚づつ食べた残りの1枚であるから
 
67円程度のパンである。
 
なのにハルオさんってば、諦めようとしないというか
 
自分を許そうとしないんだな。
 
 
 
「どこ、やっちゃったんだろう?
 俺もとうとうボケたかな。
 あの時、食べてしまえばよかったなあ」
 
 
 
まったく、大したことではないのに
 
ぶつくさうるさいおじさまなのだ。
 
 
 
その日、パン屋さんから出た後に
 
私たちは近くのスーパーに寄って
 
ペットボトルの水を2ケース買った。
 
その際に、水の入った段ボール箱をカートに積むために
 
ハルオさんはショルダーバッグを、他の箱の上に置いた。
 
 
 
「あのとき、パンも置いちゃったんじゃないですか?」
 
 
「そうだったかなあ、全然覚えていないなあ。
 本当にとうとう俺はボケちゃったかなあ」
 
 
 
まったくなあ、なんでたった67円のパンがないことくらいで
 
そんなに落ち込まにゃあならんの。
 
 
 
「バッグを忘れないように、気を取られていたのかもしれないですね。
 そんなことは、誰にでもよくあることですよ」
 
 
「そうかなあ」
 
 
「そうですよ。それにたった67円じゃないですか
 そんなの惜しくもないし、気にするようなことでもないです」
 
 
 
それでも納得できないハルオさんに私は言った。
 
 
 
「昨日の事故のことでもそうですけれどね
 大したことじゃあないことを、責めても仕方ないでしょう?
 ツクネさんはいつも左側に寄り過ぎる、と責められた私と
 誰にでもよくある話です、と言ってもらえたあなたと
 どちらが気が楽になると思いますか?」
 
 
 
ハルオさんは、何も答えず黙ったままだったから
 
私は続けて言った。
 
 
 
「こういうのが寛大、というんですよ。
 寛容じゃあないですよ。寛大です。
 許す、ということです。
 寛大な心があれば、楽になれるんですよ
 分かりますか?」
 
 
 
 
ハルオさんは、言い返さなかったから
 
私の言葉の趣旨は理解したみたい。
 
 
 
 
理解さえしてくれれば
 
その後は、同じことを繰り返す人ではないから
 
まあね、育て甲斐のある人ではあるかもね。
 
 
 
 
 
注)事故のお話はこちら
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真は、私が最近頻繁に利用するパン屋さんカフェ。
 
ここのパン、とにかく美味しいの。
 
お値段はとてもお安くて、コーヒーを頼んでも
 
500円とちょっとで惣菜パンが2つも食べられて
 
ランチ代が大助かり。

 

 

 

この日はハルオさんも「食べてみたい」と言っていたから

 

どちらかと言うと、私の方がハルオさんのお付き合い。

 

 

 

 

私はチョココロネと鳥ツクネのフォカッチャを食べた。

 

(共食いか?)

 

 

 

 

 

 

 
 
ハルオさんは3つ。
 
クルミ入りパンとコロッケバーガーと
 
テリヤキチキンのフォカッチャ。
 
 
 
 
 
 

 

 
そして、上の写真は
 
パンを失くした日のランチ。
 
やはり、ハルオさんのリクエストで私がお付き合い。
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 
私が食べたのは、テリヤキチキンのフォカッチャと
 
クリームワッフルドーナツ。
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 
 
ハルオさんは、やっぱり3つ。
 
テリヤキチキンのフォカッチャとコロッケバーガーと
 
サンドイッチ。
 
 
 
なんとまあ、ハルオさんは
 
3つのパンのうち、2つが前回と同じパンだ。
 
 
たくさんの種類のパンがあるパン屋さんなので
 
私は来る度に違うパンを選ぶのだけれど
 
失敗が嫌いなハルオさんは
 
美味しいと思ったら、次も同じものを選ぶ。
 
 
それではレパートリーがまったく増えないではないか、と思うが
 
それは余計な心配らしい。
 
 
 
変な人、とは思うけれどね
 
たいていの人は、自分以外の人はみんな変な人だと
 
思っているからそんなものよ。
 
 
 
 
 
 
 
そして、余談ですが
 
お気付きの方もいらっしゃるでしょうけれど
 
私たちは敬語、とまでは行かないけれど
 
ですます調で会話をします。
 
常にそうなのですが、これって馴れ合いを防ぐのにはいいですよ。
 
距離感を保てるので、常に新鮮でいられる気がします。