http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140416/plc14041603340007-n1.htm


温暖化対策 今は原発を動かすときだ
2014.4.16 03:34 [主張]
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会が、温室効果ガスの排出削減に関する新たな報告書を公表した。

 産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑え、気候の激変を避ける「2度目標」を達成するには、2050年の温室効果ガス排出量を10年比で4~7割削減し、今世紀末にはゼロまたはマイナスにする必要があるとしている。

 そのためには、今世紀半ばまでに再生可能エネルギーや原子力などの供給を3~4倍にしなければならないという。

 今回の報告書では、原子力を「成熟した低炭素エネルギー」と明確に位置づけた。

 日本政府は、原発のリスクとメリットを冷静に評価し、国際社会と地球環境を視野に入れて利用を考えるべきである。

 日本は現時点で全ての原発が停止し、火力発電による二酸化炭素の排出増が続いている。

 温暖化は、熱波や干魃(かんばつ)、強大な台風などの極端な気象現象をもたらし、人命を脅かす。農作物へも悪影響を与え、食糧不足は国際紛争の火種にもなりかねない。

 報告書は原子力について「各種の障壁やリスクが存在する」とも指摘した。しかし、国内の原発リスクを回避することだけを優先し、地球規模の温暖化対策に背を向けるような姿勢では、国際社会の理解は得られない。

 バイオマスなどの再生可能エネルギーや、二酸化炭素を地中に埋めるCCS(炭素回収・貯留)の飛躍的な普及、拡大には時間がかかる。現時点で、低炭素化への貢献が計算できる「成熟した技術」は原子力だけだ。

 今回の報告書は、今秋公表される第5次統合報告書に盛り込まれ、2020年からの温暖化対策の次期国際枠組みを決めるための土台になる。米中露や多くの新興国は、原発を重要なエネルギーと位置づけ、温室効果ガス削減対策にも織り込むだろう。

 日本政府が昨年示した排出削減目標は、国際社会から「後ろ向き」と批判された。

 将来的に「原発にも化石燃料にも依存しない社会」を目指すとしても、今は原発の安全性を高めて動かすべきだ。脱原発に縛られると国際社会から孤立し、日本が貢献してきた省エネ技術も正当に評価されなくなる恐れがある。