<旧記事>「柔道一直線」と「巨人の星」

「柔道一直線」と「巨人の星」I 2007/ 4/21 21:58 [ No.2944 / 4109 ]
「柔道一直線」と「巨人の星」II 2007/ 4/21 22:27 [ No.2945 / 4109 ]

「柔道一直線」は「巨人の星」の柔道版という感じですが、むしろ梶原一騎は格闘技の物語が專門で、球技を描いても根底は格闘家同士の戦いや師弟の絆と同じ世界を描いていますから、むしろ「柔道一直線」こそ「巨人の星」の眞の姿と言えます。

星一徹と飛雄馬の親子関係が、そのまま車周作と一条直也の師弟関係になっています。
梶原漫画での師弟と言えば丹下段平と矢吹丈という例もあり、師匠が主人公の親代わりという感じです。

星飛雄馬が大LB3号で時代の寵児となっていたとき、某マスコミが「吉沢京子さんが星投手のファンなので対談を…」と持ちかけましたが、作品では実現していません。

飛雄馬に大LB3号のヒントを与えた「新宿の女番長・お京さん」の名「京子」もそこからでしょう。
「ド根性ガエル」の京子ちゃんもそこからでしょうか。

ちなみに大LB3号時代には「奇術師・引田天功による星飛雄馬へのインタビュー」も企画されましたが、話だけに終わった模様です。

「巨人の星」でも伴宙太は柔道から野球に轉向した選手ですし、星飛雄馬は大LB1号を開發するために拳闘や剣道を学び、銃撃を見学しています(どうして伴宙太から柔道を教わらなかったのか)。
「侍ジャイアンツ」(梶原一騎&井上コオ)でもアニメ版では番場蛮が分身魔球を会得するために空手の修行をしており、「空手バカ一代」の修行に似た世界です。



梶原一騎漫画分類(競技種目別)

◎野球;「巨人の星」、「侍ジャイアンツ」など
→「巨人の星」の続編は「新巨人の星」、「巨人のサムライ炎」。
→「巨人の星」から「侍G」に至る過渡期に「モーレツ!巨人」と「野獣の弟」あり。
→井上コオ作の「侍G」の続編「よみがえれ侍」があった。
◎蹴球;「赤き血のイレブン」
◎柔道;「柔道一直線」、「柔道讃歌」
◎普通のボクシング;「あしたのジョー」
◎キックボクシング;「キックの鬼」
◎空手;「空手バカ一代」
◎プロレス;「タイガーマスク」、「ジャイアント台風」
◎その他(スポーツ以外の喧嘩、戦いなど);「夕やけ番長」、「愛と誠」

川崎のぼるの作品では柔道少年漫画で「いなかっぺ大将」、レスリング漫画で「アニマル1」、球技関係で「フットボール鷹」があります。

ちなみに、野球の沢村栄治(澤村榮治)とキックボクシングの沢村忠は、両方とも「巨人の星」に名前と似顔絵が登場しています。

梶原一騎漫画分類(人間関係別)

梶原一騎原作の漫画では、主人公は大抵、片親がいないか、両親と分かれているかといった少し不憫な境遇が多いようです。それで師匠が親代わりとなる展開になります。

◎父親と息子;「巨人の星」(母親なし)
→ちなみに花形満も母を亡くしており、左門豊作は両親とも死亡。伴宙太の母親も出てきません。
◎母親と息子;「侍ジャイアンツ」、「柔道讃歌」
◎師匠と弟子;「柔道一直線」、「あしたのジョー」(師匠は親に近い)
◎孤児への支援、擬似家族;「タイガーマスク」
◎男女の愛;「愛と誠」
◎その他友情;「夕やけ番長」
◎実在する人物の傳記;「キックの鬼」(沢村忠)、「ジャイアント台風」(ジャイアント馬場)、「空手バカ一代」(大山倍達→アニメでは飛鳥拳という架空の主人公)
→梶原スポーツ漫画の場合、プロレス漫画なら馬場と猪木、野球漫画では川上と長嶋、王、金田、田淵、掛布、野村というように、実在の人物が重要な役割をになっています。
→梶原のライバルとも言える水島新司は阪神の江夏と田淵がお気に入りのようで、「野球狂の詩」では東京メッツの対戦相手は大抵、阪神でした。

「侍G」では番場蛮の母親が野球とは余り関係がなく、川上監督が一徹の役割も兼ねていました。
「柔道讃歌」では主人公の母親が「女三四郎」と呼ばれた柔道の名人。母親なので一徹と明子を兼ねたような役割。
「柔道一直線」は「巨人の星」の柔道版のような漫画で、師弟は星親子に近い。
「タイガーマスク」は親子でも師弟でもなく、大人たちが孤児を支える博愛主義の話で、伊達直人は「ちびっこハウス」の子供たちにひたすら支援を与え、自分への見返りなど望んでいません。一方、星一徹のように子供に試練を与え、勝ち残った者にチャンスを与えていたのは「虎の穴」の役割。

ちびっこハウスではカレーが「ごちそう」だったようで、左門兄妹姉妹の家ではハンバーグが「最高のごちそう」だったようです。

「侍ジャイアンツ」番場蛮はライバルの眉月とウルフをサメ(フカ)に喩え、大砲を鯨に喩えましたが、アニメで眉月は自らをシャチに喩えていました。シャチに喩える表現は「柔道讃歌」にも「母子シャチ」として出てきます。

川崎のぼるの作品では「てんとう虫の歌」が「巨人の星」の左門一家のような「親を失った兄弟姉妹」の団結を描いています。月美と火児は明子と飛雄馬のような姉弟です。

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