現代人の祖先ホモサピエンス・イダルトゥ(ヘルト人)から、約80万年前にホモサピエンス・ネアンデルタールレンシス(ネアンデルタール人)が分岐、35~64万年前にネアンデルタール人からホモサピエンス・アルタイ(デニソワ人)が分岐、27~28万年前にイダルトゥからホモサピエンス・サピエンス(Y染色体アダムA00プロトクロマニョン人)が分岐しました。
アフリカに住むY染色体A系統(カポイドA1b)、B系統(ネグリロA1b2a)はサピエンス・サピエンス純血種ですが、Bと共通の祖先BT(A1b2)から分かれ世界に広まったCT(ユーラシアンアダムA1b2b)の子孫の核DNAには、ネアンデルタール人、デニソワ人の遺伝子が数%混入していると報告されています。
9万年前の中期旧石器時代にヨーロッパ、西アジアでムスティエ文化が起こりました。
この文化の担い手はネアンデルタール人と考えられています。
ムスティエ文化はアルタイ、エニセイ川中流のシベリア、中国北部まで広がっていったようです。
同じ頃、アジア北方にはデニソワ人、南方にはアウストラロデニソワ人がいたと考えられていますが、中国南部にムスティエ文化の影響は見られず、東南アジアの旧石器文化の始まりは3万年前頃とされます。
一方、オーストラリア(旧サフル大陸)ではアボリジニ(サピエンス・サピエンス)が到達した5~6万年前に旧石器時代の遺跡が見られるようになります。
日本列島では12万年前の砂原遺跡、8~9万年前の金取遺跡があり、デニソワ人が日本にいた可能性も充分考えられるでしょう。
イスラエルでは、6万年のケバラ洞窟遺跡からネアンデルタール人の化石が出ていますが、92000年前のカフゼー洞窟のムスティエ文化層からはサピエンス・サピエンス(プロトクロマニョン人)の人骨が見つかっています。
アルタイ洞窟からは、デニソワ人の父とネアンデルタール人の母から生まれた9万年前の少女の化石が発見されました。
同じ洞窟からは4万年前のデニソワ人の遺骨も発見されています。
ムスティエ文化が始まった9万年前頃から少なくとも4万年前頃まで、ホモサピエンスの3亜種の居住地は重なりあっていたようです。
古くに分かれたサピエンスの種族が、再び融合することで、人類の文化は発展していったのかもしれません。
一方、アフリカに残ったサピエンス・サピエンス純血種の文化は比較的原始的な形態に留まりました…
シベリアでは、ムスティエ文化からシームレスで後期旧石器文化へと繋がっていった様子も見られ、サピエンス・サピエンスがネアンデルタール人やデニソワ人を駆逐していったと考えるよりも、徐々に融合していったと考えた方が自然ではないでしょうか?
現時点では、多くの現代日本人の祖先にネアンデルタール人、デニソワ人がいると考えられています。
また、ムスティエ文化と日本の中期旧石器遺跡を結んでいくと、(ヨーロッパ~)中東~アルタイ~バイカル湖~樺太~日本列島という高緯度の内陸ルートが浮かび上がってきます。
出アフリカを出たサピエンス・サピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人と交流しながら、このルートで中東から日本列島へ速やかに分布を広げていったと考えられるのです。
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