髪は目に見えるのに見えないところから
 生えてくる

 毛包とか皮脂腺とかイラストで解説が
 されていても実際の動きは目に見えず
 アプローチ方法を長いあいだ模索した

 見えない=存在しないわけではなく
 細胞のかすかな振動を頼るしかなかった

 さまざまな触れ方をしていくなかで
 手指の使い方ひとつで振動の仕方が
 変わることを知った

 そんななか指そのものを使うアプローチから
 指と指の間を使うアプローチに変わった

 薄毛やハゲの部分は目には見えなくても
 小さな極細の毛は生えている
 
 指と指のあいだは何もないように見える
 けれど指の細胞の粒子がわずかに
 飛び回っている
 
 両者には何か引き合うものがあると感じた

 あるけどない
 ないけどある

 両者を同期すると微かな振動を感じた

 個々の細胞にもう動いて大丈夫と伝えるかの
 ような振動

 "ない"領域には"ない"次元からのアプローチ
 が響くのだと感じた

 薄毛の悩みをだれかに相談するなら
 それとは無縁のひとにはしようとは
 思わない
 そのつらさを経験したひとにしか
 心の奥から響かない